ひとりきりのホームでの事件
そうだあの瞬間だった。
ICをタッチして改札を通った。
あの出来事は人格交代したばかりでぼーっとしていた僕の目を覚ませるには十分な出来事だった。改札を通ってホームへの階段を登り、線路が見下ろせる場所まできた瞬間電車の到着を知らせるベルが鳴り始めた。その時僕は異常な光景を目にした。線路の上に女子高校生が倒れているのだ。それも僕と同じ大宮東高校の制服を身にまとっている。ホームには僕と彼女以外誰もいない
この女の人は誰だろうという考えが浮かぶ前に足が先に動き出した。カバンを投げ捨て電車が見えているホームに降りた。
その女子高校生の元に駆け寄る
「大丈夫ですか!?」
しかし返事はない。どうやら気絶しているようだ。
もう目の前まで電車は来ている。
とっさに逆の線路に移そうと思いついた。
急いで抱き起こし引きずるようにして逆の線路へと移動する。
なんとか間一髪で助けることができた。しかしホッと出来るのもつかの間ですぐにこっちのホームにも電車の到着のアナウンスが流れた。
そうだ僕が乗る予定の電車だ
「嘘だろ!」
と叫び必死に頭を回す。
すると頭の中で何かが弾けた。
自分でも何をしているのかわからないほどのスピードで彼女を抱き抱え助走出来るだけの幅を取る。そうだ電車に向かって助走してホームにジャンプするのだ。電車とは逆側に走るという方法もあったが、十分なほどの距離が確保できない。ならば電車の方向に走るしかない。つまりチャンスは一度。失敗は電車にひかれること。つまり死を意味する。しかし何も考えていなかった。まさしく無と言っていいのかもしれない。そして電車に向かって走る。
これまで走ったことのないくらいのスピードだ。足場が悪いのになぜここまでのスピードが出るのだろう。電車のギリギリまで助走しスピードをつける。
いまだ!
僕は空中へと舞った。