表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MAIN TRAFFIC3  作者: 浜北の「ひかり」
Office Episode
9/69

301列車 JR Patrol

「うーん・・・。この時間に堺筋に乗るのも初めてだよね・・・。」

そんなことを言いながら、上新庄に来るであろう天下茶屋行きの電車を待った。反対側の河原町方面行きが本来のる電車であるが、今回はそれに乗ることは無い。何故なら、今回用があるのは仕事場ではなく支社であるからだ。

 先輩の話によれば、新入社員は入社数か月経った後に支社に呼ばれ、仕事がどういう環境であるかどうかなどを聞く機会があるという。満足度調査みたいなものである。

「なんでも包み隠さず話せばいいし。とは言われているものの、聞くのは支社の上の人々であるため、なかなかそう言うわけにもいかないだろう。やはり匙加減というものは必要になるであろう。

「何も○勤の後に呼び出さなくても・・・。」

萌はそんなことを言いながら欠伸をした。

「眠そうだねぇ・・・。」

「他人事みたいに言ってるけどさぁ、私は昨日○勤務だったんだよ。」

少しすねた顔でそう言った。○勤務とは日綜警で言う24時間勤務のことである。なぜこう呼ばれているのかというと「丸一日勤務」ということからきているらしい。このほかシフト表での24時間勤務の記号が「白抜きの〇」であらわされるからという意味で諸説あるらしいが、どちらであるかは不明である。まぁ、恐らく後者の方であろう。他、日勤を「白」、夜勤を「黒」と呼んでいる。これは日勤が「△」、夜勤が「▲」であらわされることに由来する模様だ。

「お疲れ・・・。」

「やっぱり他人事としか思ってないじゃん。」

「だってねぇ・・・。」

此処は他人事にならざるを得ないのだ。夜勤の後の眠気っていうのは体験した人でないと分からない。

 もちろん休憩時間と仮眠時間はあるが、仮眠をした後がしんどくなるのである。さらに、そのあとに3時間ぐらいは立つ必要があるため、疲労はかなり蓄積されるのだ。

「本当なら、このまま部屋に帰りたいんですけど。」

萌が愚痴った。

「ナガシィなんか待たないで、部屋に帰ってそのままゆっくり眠りたいの。分かる。」

「分からない。」

「・・・ナガシィって元気だもんねぇ・・・。丸の後は起きてるんだっけ。」

「うん、まぁ。」

「よく起きてられるわねぇ・・・。私眠くて眠くて仕方がないから、すぐ寝ちゃうんだ・・・まぁ、昼ぐらいに目が覚めるけどね・・・。だから、電車乗り過しそうになったら起してよ。」

「・・・。」

萌はそう言ったけど、そんなことは無いとすぐに思った。萌が降りる駅を乗り過ごすなんて聞いたことがない。むしろ、こっちがあるくらいだ。

「そう言えば、沙留は。来るの。」

「えっ、ああ、沙留君。サルちゃんは来るみたいだよ。」

「ふぅん、来るんだ。サルちゃん。」

「うん、来るの。サルちゃん。」

何時そんな渾名を付けたのだろうか。ただ単に沙留っていうのが面倒になっただけであろう。

「ああ、後高槻君と今治君も来るみたいだよ。」

萌はそう付け加えた。今治と高槻に会うのも久しぶりである。まぁ、まず会うことがないのだ。仕事場が違うということもあるし、合うような用事もないためである。だが、今治とは時々LINEでやり取りしている。

 一つ確かなのはどちらもやめていないということである。

 その時アナウンスがなって相川からやって来る列車のヘッドライトが見えた。河原町方面にある相川は上新庄のホームから見ることが出来る。そのため、どっちの方向に列車が着たらすぐに分かるのだ。それが相川に止まる普通となると「速くこないものかなぁ・・・。」と思ってしまう。

「8301か・・・。」

車番を見ながら、その列車が入ってくる。GTO素子の音を引きながら、ホームに入る。停車の直前になるとホームの人がドアの両隣に集まる。ドアが開き、降車される客がおりきってから乗るのが暗黙のルールのようになっているが、其れを守らずわれ先に乗り込んでいく人もいる。

「1300じゃないか・・・。」

そんなことをぼやきながら、列車に乗り込んだ。

 天下茶屋行きのこの列車は隣の淡路駅から阪急千里線に入る。淡路の複雑なポイントをまたぎ、左に向かって行く線路に入っていく。これを右方面に進入すると梅田に向かって行くこととなるのだ。

 その淡路から柴島方面にはいれば、淡路駅近辺の高架化事業の為に建設されている高架橋の橋脚を見ることが出来る。まだまだ完成とはいかないが、そのうちこの平面交差も解消し、阪急京都線のボトルネックも少なからず自由がきくようになるのであろう。

 柴島に停車してから、淀川を渡り、しばらく走ってトンネル区間へと入る。トンネル区間に入ってすぐに止まるのが天神橋筋六丁目、通称天六だ。天神橋筋六丁目の先にも線路は続いているし、車止めのようなものはないため、終着駅のようには見えないが、此処が阪急千里線の終着駅であり起点となる。此処から先に延びている線路は阪急京都線、千里線が相互乗り入れを行っている大阪市交通局の堺筋線となる。

 堺筋線はこの先堺筋を南下していく。京都方面から大阪にやってくる人たちを梅田を介さずに中心部に送り込むための路線であるから天六をはじめとするすべての停車駅で御堂筋、谷町、中央線、JR、南海電鉄、京阪電鉄と接続している。

 支社の最寄り駅となる南森町は地下鉄谷町線とJRの地下鉄東西線と乗り換えができる。

 南森町で下車してから、死者へと向かう。支社の入る円筒状のビルが見えてきたら、其れの22階まで登るのだ。

「お疲れさん。」

いつも集まる会議室に入ると今治が居た。

「久しぶり。」

「疲れたよ。」

僕と萌はそう言った。

「二人とも勤務の帰り。」

「ううん。ナガシィは朝から出てきただけ。私は〇入った後。」

「○入った後。」

今治はそう言って驚いた。まぁ、そうだろうなぁ・・・。24時間勤務が終わった後に来ているわけだから、今日の実働を8時間と仮定すれば、36時間続勤していることになるからなぁ・・・。

「そりゃキツイわ。」

「うん、だから、寝てたら起こしてね。」

「起こさなくていいから。」

僕ガス風ずそう言うと、萌は僕の脇腹を突いてきた。

「起こしてね。」

「う・・・うん。分かった。」

「おはようございます。」

その声で沙留が入ってきた。

「おはよう。」

「おはよう、永島、坂口さん。それと久しぶり今治。」

「あれ、サルちゃんって先に詰所から出てったよねぇ。」

萌はそう疑問を呈した。

「ああ。ちょっと高槻で降りて家に帰ってたから。それにそのあとC電に乗ってきたからね。」

と言った。沙留の住んでいる尞は高槻にある。新快速でここまで速く来てもよかったのかもしれないが、用意かなんかの為に途中の高槻で降りたようだ。そして、そのあとにC電に乗ってきたと言っている。C電は快速でも新快速でも止まらない小さい駅にも止まってくる緩行線を走る普通列車だ。もちろんその分時間がかかり、新快速、快速ならば1本後で来る列車と同じぐらいの時間に大阪に到着する。

「そうなんだ。」

「そう、だから早く出たけど坂口さんより遅い。」

「なるほどねぇ・・・。」

「それよりも永島、坂口さん。他のJRが来るって聞いてる。」

「聞いてないけど。」

「そうか・・・。じゃあ、僕たちだけかぁ・・・。」

一つ捕捉であるが、新入社員の中でJRに配属されたものは3人いる。

 しばらく時間がたつと人が集まり始める。此れも仕事の内である。遅刻することは無いだろう。だが、まだ高槻が来ない。専門学校の時に高槻は遅刻することは無かった。常習的に遅刻をする人ではなかったが・・・。

「ヤバい、ヤバい。」

と思っているとそんなことを言いながら、高槻が入ってきた。

「お疲れ。セーフだね。」

「危なかった・・・。」

「危なかったって何があったのさ。」

そう聞いてみると高槻は息を切らしながら、

「いや、何にもないから危なかった。」

「どういう意味か分かんないよ。」

「あっ、寝過ごし。」

萌が思いついたように言ってみると、

「その通り。目覚まし掛けてなかった。」

と送れそうになった理由を説明した。何もないっていうのは目覚ましがないっていうことか。それでもよくそんな時間まで寝ていられますねということに感心をしながら、席に着いた。

 席についてしばらくすると今回懇談会を担当する人が入ってきて、一旦会社の外に出る。ああ、言っておくがビルの外ではない。エレベーターで下に降りて、一見の中華屋さんに入っていく。そこの奥には予約席のプレートがあり、その前にはお弁当が並んでいる。それを食べながら、上の人たちと少し話また会社に戻る。会社に戻ってからは懇談に入り、先輩から聞いていたことを根掘り葉掘り聞かれるだけであったのだが・・・。

「永島君って春風隊長から異動の話聞いてるかなぁ。」

そう言われた。

「いえ、聞いていません。」

何のことなのかさっぱりわからない。春風隊長も異動の話はしていないし・・・。ていうよりも異動されるようなことをしたっけ・・・。

「君たちは採用の段階からJR Patrolに回ってもらうつもりだったし、その話は春風隊長の方にはしているから、伝わっていると思ったんだけど。してなかったか・・・。」

「あの何か。」

「ああ、いや、伝わってないからなんか問題っていうわけでもないんだ。ただ、もうすぐ異動になるってこと。」

「そのJR Patrolって何をするところなんですか。」

そのあとの一言に一瞬戸惑った。

「車の沿線巡回なんだ。」

(くっ・・・車・・・。)

まさか。その気持ちがこみ上げた。


通算300話超えましたが、まだまだ行きますよ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ