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MAIN TRAFFIC3  作者: 浜北の「ひかり」
Office Episode
8/69

300列車 確認

「なかなか来ないねぇ・・・。」

ナガシィはそう言いながら携帯をズボンのポッケにしまう。

「・・・そうだねぇ・・・。車庫とかに入ってるのかなぁ・・・。」

そういうふうに返す。

「車庫かもしれないね・・・。」

GTO素子のVVVF音と共にホームを離れていくのは堺筋線方面行きの普通天下茶屋行き。66系で運転されるこの列車は阪急9300系に準じた設計にはなっていない。66系前期車の部類ではあるが、車番は6。更新車とはひとつ違いである。

「残念だねぇ・・・。」

「そうだねぇ・・・。」

ひとつ違いの時の絶望感っていうのは何とも言えない感情になる。

 それにしても、最近は大阪界隈の車両の更新工事が加速しているように思える。それはほとんどの車両に老朽化が目立つ時期に来ているためだ。JR西日本では221系の前者が更新工事を受けることが確定しているし、其の更新車は既に営業運転を開始している。笹子専門学校があった場所に乗り入れる大阪市交通局の御堂筋線、またその地域の運行をしている北大阪急行でも、更新車が出てきている。大阪市交通局は21系。今のところ確認しているのは7Fだけであるが、そのうち多くの車両が更新工事を受けることだろう。一方の北大阪級航は8000系の3Fが電動機も変える更新工事を受けている。ヘッドライドだけの更新を行ったのは4Fと6Fで、この2本もそのうち電動機を変えると思われる。

 今いる淡路駅を持っている阪急では少し前から7300系の更新工事が始まっている。これの更新工事は1000系、1300系が出て来るまで最新鋭車だった9000系、9300系に準じた改造を行うものだ。ヘッドライドなどの更新がなされており、更新工事の終了した7300系は営業運転に入っている。

 だが、私たち二人にはそう言う流れが有るということは十分理解している。更新車が多くなった時にでも来ればいいのだが、なぜかその時は消える方に興味を持つっていうわけのわからないことが起こるのだ。

「此れ本当に車庫に入ってるだけかもしれないね・・・。」

だんだんと私の中でもそう思えてくる。

「帰る。」

「ってなると来るんだよなぁ・・・。」

確かに・・・。

 もうあきらめかけたときに目的のものがやって来るってよくあることだと思う。そして、粘るとこない・・・。

「もう、どっちにするのよ・・・。」

「・・・。」

入り組んだレールを叩いて、淡路に入線する列車は阪急3300系。堺筋線方面から入ってくる車両はこの先高槻市に向かって行く。その列車が止まり、ドアを開ければ、梅田からやってくる京都線の普通が入ってくる。その車両は5300系で、北千里に向かって行く。

「帰ろうか・・・。また次にくればいいし。それに出退勤の時に乗れるとも限らないし。」

「そうする。」

「うん、そうする。」

 そう言うとさっさとナガシィはホームの端から歩き出す。梅田方面行きのホームにいる以上、反対側の北千里・河原町方面行きのホームに行くほかない。

 でも、

「次準急来るまで上新庄止まるやつこないよ。」

「分かってるって。」

そう言いながら、ナガシィは歩いていく。

 その後ろ姿を見ながら、考え事をする。何時どうやって切り出せばいいっていうのさ。そのタイミングさえ分かんない。

(でも、ちゃんと言いたいことは言わなきゃ。)

心に言い聞かせて、その後ろ姿を追った。

 階段を伝い、ホームの下に降りる。改札口が違う場所にある淡路はホーム下の通路を通じて改札口に行くしかない。ホーム下に降りて、ほんの少しだけあるけば、ほとんどの駅は改札口が見えてくるものだが、淡路は通路の端まで歩かないと改札口は見えてこない。さらに、そこからちょっと歩くのだ。でも、その前に。

「ナガシィ。」

「ほい。」

「どこ行くのさ。」

河原町行きのホームに上がれる階段通り過ぎてるし。

「えっ。お昼食べないの。」

「えっ・・・。あっ、そんな時間。」

「何とボケてるの・・・。さすがにお昼食べようよ。持たないよ。」

「・・・。」

何か馬鹿にされてる。ナガシィに馬鹿にされるのは何か違う気がするのは気のせいだろうか。

「分かったよ。で、何食べに行くの。」

「うーん、外出てから決めるってことで。」

(計画性は無し・・・。)

「はいはい。」

そう言ってから、ナガシィについていった。通路が突き当たるまで歩いていき、ちょっとある階段を登れば、改札口が見えてくる。千里線と京都線が入り乱れ、昼でもひっきりなしに来る駅の改札口とは思えないほど改札機の数が少ない。朝になったらこの改札はどうなるのだろうか。それともホーム上の乗り換えが大多数で乗る人はそんなでもないのだろうか。まぁ、これで足りなかったら改札機の数を多くしたりっていう救済はするか。

 改札口の外に出るとその先にはアーケードが延びている。この中にはなんかしらのお店がありそうだ。

 後ろではモーターが動いて淡路を出発していく列車の音が響いている。

「とりあえず行ってみようか。」

そう言いながら、すたすたと中に入っていく。

 それを追いながら、ナガシィが決めたお店の中に入る。

(チャンス。)

向かいに座ってそう思う。注文は済ませたことだし、料理が届くまでの短い間だけでも・・・。

「ねぇ、ナガシィ。」

「んっ・・・。」

「あっ・・・あのさぁ・・・。やっぱり今の仕事って・・・。」

ちょっとなに言葉に詰まってるのよ。

「今仕事の話はやめない。」

「あっ・・・。」

結局のところ言いだせてないじゃん。でも、ナガシィの気持ちは分からないわけではない。休みの日まで仕事の話をされるほど憂鬱なものは無いだろう。そう考えるとこういう時に言いだすのは不味かっただろうか。でも、他にどういう時に言えというのだろう。ナガシィはスイッチがはっきりしている。仕事は勤務が終わった瞬間に勤務のスイッチを切るのだ。そして、仕事のスイッチが入るのは帽子をかぶった時と決まっている。まぁ、今の駅でいる場合は改札の中に入るために必要な許可証を貰った時とは言っていた。その時になら多少仕事の話をしてもいいだろう。しかし、そんな話をして、時間を取らせるべきではない。

 もちろん、出勤の時でも仕事のスイッチは入っていない。ナガシィはそんな時間にスイッチ入れない。ましてや休みの日に仕事のことをまともに考えるなど、ほかのどんな大人でもやってないことだろう。

「・・・。」

「んっ・・・。何か言いたいことでもあるの。」

「えっ・・・。」

「そんな顔してるからさ。」

「あっ・・・。」

やっぱり何か今日は私のペースじゃない。どう思われてるんだろう。

「あっ、あのね。」

「失礼いたします。」

そうこうしているうちに注文した料理が届いてしまう。

「食べた後にしよっか。」

(やっぱりそうなるか・・・。)

まぁ、予想できたことである。

 お昼を食べ終わってからまたしばらく淡路駅にはいたものの、やはり目的のものは来ず。今日はそのまま帰ることにした。上新庄の改札口を通り抜け、駅ビルの外に出る。スクランブル交差点を通り過ぎ、店がかなり立ち並んでいる一方通行の道尾を歩いていくと、上新庄の下に通じる大通りに出る。

(・・・あの後結局何も言いだせてないじゃん・・・。どうしよう・・・。)

「あっ・・・。」

ナガシィはそう言ったのだが、私には聞こえていない。ぼーっとしたまま歩いていた。すると突然ナガシィの足が見えて、顔を上げると目と鼻の先にナガシィの顔がある。

「そう言えば、何か言いたかったんだよね。」

「あっ・・・。」

(それ今言う・・・。)

でもいいや、ちゃんということは言わないと。また甘いよねって言われるし、いつまでも甘いままじゃだけだ。

「あのさ。今の仕事ナガシィはどう思ってるのかなぁって・・・。」

「えっ・・・。」

「本当は嫌なんじゃないの。私はそう言うこと知りたい。どう思ってるのかって。私になら何でも話してもいいんだよ。ナガシィの全部受け止めたいから。」

「ああ・・・。」

ナガシィはちょっとだけ視線を逸らした。まともに聞く気があるのかないのか・・・。でも、しばらく考えていた。考え終ったのか、此方にまた視線を向ける。

「そう考えるのはやめた。」

「えっ・・・。」

その答えに呆気にとられた。

「なんかいい仕事してるんだなぁって思えるようになったから。帰ろう。もう部屋すぐそこだし。」

「・・・。」

(おいおい、私の葛藤は何だったのよ・・・。でも、まぁいいか。仕事が嫌いなんじゃないって分かったんならそれで・・・。って結局私は甘々か・・・。)

 円筒状の高層ビルになっている。この建物。22階には日綜警の支社が入っている。

「新人のJR要員を全員ですか。」

「ええ。もともと採用はそれで取っていたわけですし。」

「まぁ、いずれそうなりますな。」

そう言う話がある一角で行われていた。

 その机の上にある書類には「JR Patrol隊異動関連書」とある。


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