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MAIN TRAFFIC3  作者: 浜北の「ひかり」
Office Episode
7/69

299列車 行ってみよう

 今日は久しぶりに二人の休みがあった。少しばかり、ナガシィを外に駆り出してみようと思う。ナガシィはここ最近休日になればパソコンを開いて小説を書いているというのが常になっている。そんなに熱中できるものなのだろうか。まぁ、いいや。

「ねぇ、ちょっとぐらいいいでしょ。」

そう言いながら、ナガシィの身体をなぞってみた。

「ヒャッ。分かった、分かったから。」

「もしかして、今取込中だった。」

「・・・ちょっとね・・・。」

「今になって中二病みたいなの量産してどうすんのさ。」

そう言ってみた。でも、ナガシィはそんなことどうでもいいようだ。それか中二病のことだと分かっていても止められなくなったのだろう。そう言うところがかわいいというかな・・・。

「いいじゃない。そこまで黒歴史とは思ってないし・・・。」

「黒歴史ねぇ・・・。」

そういうふうに言ってやった。そう言ったらどういう反応をするだろうか。今になって戦艦に張るっていうのもどうかと思うけど・・・。

 ただ、ナガシィが鉄道以外に嵌ったのはあくまで現実逃避の為である。なかなか受け入れられないのが現状なのだろう。だから、まだこういうことに走っている。だが、二ノ橋の言うとおりいつかは受け入れないといけない時がやってくる。それが遅いか速いかの違いだ。それに私は自分自身すっごく馬鹿だったということに気付いている。ナガシィを気付かせるのは出来うる限り早い方がいいし、遅くする理由がない。

「そんなことより行こうよ。」

「ヒャッい・・・。ちょっっとやめ・・・。」

 そのあとは早いものである。さっさと出る準備をした。

 外に出てみると春の太陽が空に照っている。

 住む場所が会社の寮に変わってからというもの近くの桜の木はもう見ない。代わりに見るのは時折植わっている街路樹と、町という風景だけである。此処から一番近い最寄である阪急上新庄駅は歩いて10分ほどの距離。駅の距離だけは前に住んでいた緑地公園の時からちょっとだけ長くなっただけだ。

 チラッと後ろを歩いてくるナガシィを見てみる。普段であれば、自分の前か横を歩くのに・・・。

「何さ。」

そんなことを言った。

「ううん。なんでもない。」

「ところで、どこか行く予定でもあるの。」

ナガシィはそう聞いてきた。

「特に何も考えてないなぁ。ナガシィ、新しい阪急でも撮り行かない。」

そう提案してみた。

「ああ、プリウス・・・。」

ナガシィの中ではすでにそう言うあだ名がついているらしい。

 プリウスは阪急が新たに製造した阪急1000系のことだ。共立ちが載った時にとても静かだった故に、「あの新型はプリウスだ」って言っていたのがあれをプリウスだということの表れだ。

「プリウス以外は何か予定でもあるの。」

「特にないかなぁ・・・。」

そう言ってみた。

 ちょっとした予測をしてみる。ナガシィだったらあれも外さないと思うのだ。あれというのは堺筋線を走る66系。しかし、ただの66系であれば、何も反応を示さない。もちろん、自分の中で考えている66系は普通の66系ではない。

 66系の中では御堂筋線の21系7Fや谷町線の22系3Fなどの更新改造車が1本だけ走っている。其の66系5Fに当たるかどうかは分からないけど、其れが走っているかもしれないと言う可能性に賭けてみるのはいいと思う。それに66系の更新車は通勤に阪急を使うようになってから2本がすでに改造済みであることを掴んでいる。

「じゃあ、後は66の更新だけだね。」

(ビンゴ・・・。)

「分かった。」

そう言うと上新庄に歩みを進めた。

 上新庄駅について後どうするかは個人の判断。まぁ、ナガシィのことだから電車に乗ってどこかの駅で待つっていう方法で撮影をするだろう。そのために自分のポケットの中にはイコカをしのばせている。最近のICカード乗車券の使用範囲が拡大されたために、阪急でもJR西日本のイコカが使えるようになったのだ。

「萌、早く。」

いつの間にか自分の前でナガシィは待っている。

「はいはい。」

そう言いながら、改札を通った。ピピっていう電子音がして、改札を閉めている扉が開く。

「もう、券売機依る必要ないんだからさ・・・。入場券で入るんじゃないの。」

ナガシィは創意ってムスッとした。

「ちょっとは笑いなさいって。可愛くない。」

そう言ってちょっとだけつついてやろうとも思ったけど、つつくのはやめた。さすがにこういう場所でナガシィをつつくとねぇ・・・。

「で、どっち行こうって考えてるの。」

私はすぐに話題を変えた。

「ああ。やっぱり淡路かなぁ・・・。あすこなら千里線もやって来るし、一番遭遇率高いでしょ。」

そう言ってナガシィは右にある階段を見た。左にある階段は京都・河原町方面に行く普通と準急が止まる。一方の右側は大阪・梅田行きの列車が止まるのだ。ナガシィの言う淡路駅は大阪・梅田方面。上新庄の一つとなりである。

 そして、淡路駅は阪急京都線と阪急千里線が平面交差している駅である。そのため、阪急京都線内では終端になる阪急梅田と並び多くの列車がやってくる駅なのだ。昼のダイヤですら通勤時間を思わせるほどの列車がやってくる。さらに、この駅にはラッシュ時に走る通勤特急以外すべての列車が停車する。つまり、ラッシュ以外の時には淡路駅を通過する列車は無いのだ。そのためにナガシィは淡路駅に行くと言ったのだろう。

「じゃあ、早いところ行こうか。」

そう言ってホームに上った。

 ホームに上ってみると既に梅田行きの列車の表示があった。

「準急がすぐにくるみたいね。」

「それがプリウスである可能性・・・。」

そんなことを言っていたけど、そう簡単にはいかないか・・・。来たのは3300系。阪急の中でも古い車両に入る。それを物語るように顔面には小さい窓が3つ並び、天井には大きなひし形パンタグラフが据えられている。最近の列車によくあるバンパーさえないうえに、モーターの音もいかにも古そうだ。それに、この車両には外から見るだけでも改造の後を見ることが出来る。梅田方の車両から3両目と4両目になる車両には小さな窓が一つだけ付き、そのあとに他のところについている大きさの窓がついている車両がある。窓の大きさからして、もともと運転台のあった車両であることが分かった。

 これをネットの間では「魔改造」の痕だとでもいうんだろう。

「萌も結構わかるようになったね・・・。」

「えっ・・・。」

「だって、今「魔改造」って・・・。」

えっ、心の中のつもりが声に出しちゃってた。

「いや・・・。」

反論しようかと思ったけどすぐにやめた。だった自分がほかの女子よりオタクなのは周知の事実ではないか。否定したところで何になるのだろう。むしろ、否定すると綾あたりが「えっ、オタクじゃないの」とか言ってきそうだ。

 ドアが開くとそれに乗り込んだ。中には結構な乗客が乗っている。これから梅田に行くという人たちだろう。流石は大都市の一私鉄である。

 隣の淡路では結構客の流れができる。千里線への乗り換えが発生するためだ。千里線は天神橋筋六丁目、通称天六から淡路を通り、北に向かって千里ニュータウンの方面へ向かって走る。終点は北千里だ。それに堺筋線との相互乗り入れも行っている。でも、相互乗り入れなら私達の乗ってきた京都線でも行っているのに、なぜ乗り換えが発生するのかというと千里線に入る北千里行きと京都線に入る高槻市行きは交互に運転されているためだ。早く堺筋線方面などに行きたいとなった場合は乗り換えをせざるを得ない。だが、例え乗り換えが発生しても乗客は同じホームでの乗り換えが可能であるため、手間はかからない。ほんのちょっとだけ立つ必要が出るだけだ。まぁ、其れで座れなかったらどうにもならないが・・・。

「うーん。やっぱりそううまくは行かないか・・・。」

そう言いながら、ナガシィは前にいる66系のことを言った。

 更新車は御堂筋線、谷町線のものと同様車端部に号車番号が表示されているうえにラインの塗装はグラデーションのかかったものに変更されている。これにはその表示すらない。

 先に動いたのは京都線系統の3300系の方だ。準急はそそくさと発車し、梅田へと歩みを進めていく。

 時刻表を見る限り66系の方はもうちょっと止まっているようだ。

「ああ。絶対ないわ・・・。17Fだもん。」

ナガシィはそう呟いている。17Fっていうのは66000の下一ケタの数字のことを言ったのだ。あの数字は1番から通し番号で存在し、66系の13編成辺りで前期車と後期車に分かれる。今のところ更新工事がなされたのは前期車。後期車は更新工事すら受けていない。

「あんまり運がないねぇ・・・。」

「そもそも、今日動いてるの。」

「今そこ言う・・・。」

結局、そのあと目的の1000系も66系の更新車も来ることは無かった。

 だが、しばらくするとそれ以外のことも頭をよぎり始めた。これでは何時もの通りで終わってしまうと・・・。


先週の投稿し忘れた分。

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