358列車 瓜二つ
次の休みの日、僕は萌に呼ばれた。と言っても萌の住んでる部屋に行くだけの話。休みが重なるとほぼ何時もしていることをしただけである。
「わざわざ呼ばなくてもいいんじゃないの。」
「いつも呼ばないと来ないじゃん。今日は鳥峨家君の妻の紹介よ。」
「ああ、前に言ってた黒崎っていう人の事。」
「そうそう。前にも言ったけど悪い人じゃないから。」
「・・・。」
別に萌の友達なら悪い人はいないでしょ。と思いつつ、萌の後ろについて歩く。
部屋に入ると萌は「ちょっと待ってて」と言って、一旦部屋から出て、その黒崎っていう人を連れてきた。
「紹介するね。この子がよく言うナガシィよ。」
萌はそう言った。
「初めまして。永島智暉です。」
「はっ、始めまして。黒さ・・・じゃない鳥峨家梓です。」
「まだ、鳥峨家って慣れてないの。」
「そう簡単になれないわよ。っていうか、何この人。瓜二つなんですけど。」
「そうでしょ。ビックリした。」
「そりゃするよ。いくら世界には同じ顔の人が3人いるって言っても、日本で、しかもほぼ隣に住んでる人が旦那と同じ顔だなんて思わないよ。」
「あっ、大希君の事旦那って言った。」
「だっ、旦那じゃないってば。」
結婚しているのに旦那でないって否定される鳥峨家って・・・。
「そんなこと言っちゃっていいの、梓。後で怒られても知らないよ。」
「あっ・・・。違う。旦那だけど・・・。ああ、つい安希に冷やかされた感覚で言っちゃった・・・。」
「こういう人よ。」
「待ってこれだけじゃ何も伝わらないから。」
最低限の紹介だけになっちゃってるねぇ・・・。
「この人が萌の言ってた絵の上手い人なんだよねぇ。」
「そうよ。」
「あっ、萌ちゃんからそう言うことは聞いてるんだ。じゃあ、今日はお互い顔を覚えるためにあっただけって感じなのかな。」
「そう言うことになるんじゃない。」
「梓、ちゃんとナガシィに顔見せないとダメだよ。ナガシィただでさえ人の顔と名前覚えるの苦手なんだからね。」
うん、確かに。萌はそういう所よく分かってるけど、人妻の顔をじっくり見るのもいかがなものか。
「いや、でも、萌ちゃんの彼氏にじっくり見られるのは・・・。」
「大希君に見つめられてる感じて恥ずかしい。」
あっ、そっちね。
「・・・まぁ、そうね。」
確かに、鳥峨家君の顔って僕とよく似てるんだよなぁ・・・。
「初対面でこういうこと聞くのは悪いとは思うんだけど、旦那ってあなたの親戚の中にいたりするんですか。親戚っていうより兄弟と同じくらい顔つき似てるんだけど。」
「僕は兄弟いないし、僕の親戚の中に鳥峨家っていう人はいないけど。」
「そ・・・そうですよね。ごめんなさい。」
「別に謝らなくてもいいよ。」
「・・・はい。」
・・・何を話していいのかわからない。
「梓ちゃん、ちなみにナガシィってあの江急の前の社長さんの息子だったりするのよ。」
「はっ。」
そんなに驚くことなのかなぁ。僕はそう言いたい。
設定変更
黒崎梓→鳥峨家梓
大希と梓、新婚旅行はまだしていなかったりする。




