.356列車 他愛無い話
「ふぅん。高校の時の友達がこっちに来るってねぇ・・・。」
萌の話に僕はそう答えた。
「ちゃんと聞いてよ。」
そう言って、僕の事をつついた。
「ヒャッ、くすぐったい。」
「だから、ちゃんと聞いて。」
「聞いてるよ。よかったね。」
「他人事のようにしか聞こえないんですけど・・・。」
「・・・。でも、よかったじゃない。また会えるんだからさぁ。僕たちはもうこっちに住んじゃってるんだし、もう会うことも少ないと思うよ。いくら高校生の時の友達でもだよ。」
「そうだけどさぁ。」
「まっ、僕は岸川の人じゃないから別に関係ないけどね。」
「・・・。」
スマホを取り出して、開いてみる。萌の話が始まる前のネットニュース画面が出てきた。
「産○ニュースでも見てるの。」
「まぁね。」
「よく見るねぇ・・・。」
「萌、こういうのは見とかないとダメなんだと思うんだよ、いろいろとね。それに、今はネットを見れば、大概の情報が入って来るしね。お金払って新聞買う必要ないからね。誤報を謝罪しても、いまだに縋ってるような新聞社や放送法に抵触するんじゃないかっていう外部からの指摘にはだんまりを決め込むのに政治家がルールを言っただけで叩くようなジャーナリストの言うことを信じちゃ身を滅ぼすしね。」
「・・・。」
後ろで言っていることは特に記憶に新しいのではないだろうか。まぁ、この事に関しては個人個人の見方に任せるほかない。
「ナガシィ。」
萌は僕のスマホに手をかけた。ゆっくりとスマホを机の上におかせる。
「ナガシィ、梓ちゃんのこと毛嫌いしないでよ。」
と聞いてきた。
「何でよ、まず会ってないと思うし、毛嫌いする必要がないじゃん。」
「よかった。」
「で、その梓って人どんな人なの。」
「えっ。」
萌は僕の問いにちょっと考えてからこう答えた。
「超恥ずかしがり屋のストーカー少女だよ。」
「プッ、それ駄目な奴じゃん。」
「冗談、冗談。でも、恥ずかしがり屋なのは本当だよ。旦那認定されてる男の子がいるのに、いまだに結婚したとかは聞かないからね。まぁ、ストーカーとか言ったけど、頭いいし道を踏み外すような人じゃないから安心していいよ。」
「へぇ。」
「絵がうまくて、その子の好きな人の似顔絵が結構たくさん描いてある黒歴史そのもののノートもたくさん持ってたね。」
気持ちが複雑になる。
「アハハ・・・。萌、それ僕に話しちゃってもいいの。なんかすごくその人にとって悪いことを聞いたような気がするんだけど。」
萌はハッとした。
「あっ、ナガシィ。今の聞かなかったことにしといて。」
「やっぱり。秘密にしといて欲しい事じゃないの。」
「エヘヘ。でも、人の事だから笑い話にしちゃうというか。」
「一度その人に締め上げてもらったら。」
「えっ、何で。ていうかナガシィ酷い。」
時間はゆっくりとすぎていく。
萌ちゃんはあとで梓ちゃんに締め上げられること確定です。




