355列車 黒崎
「LINE。」
ピンク色のスマホが突然そう言った。着信音っていうのは何時も突然鳴るものだから、びくっとする。
「だーれかなぁ。」
鍵を左から右へスライドさせて、画面のロックをとくと珍しい名前が出てきた。「黒崎梓」。
「あれ、珍しい。」
思わず口から出た。
「久しぶり。」
そんな一言からLINEは始まっていた。
「久しぶりだねぇ、どうしたの。」
問いかけるように動くニ○センのスタンプも一緒に送ってみる。
以下文章のスラッシュは改行位置。
「萌ちゃんっていま滋賀県住んでるんだっけ?/年賀状の住所そうなってたけど。」
別に隠すようなことでもない。黒崎というより梓ちゃんは高校の時に一緒だった人。大阪に来てからというもの全くあっていないが、こういうやり取りはしている。
「そうだけど。それが?」
「ちょっとそっちに行くことになりそうだから/萌ちゃんをちょっと頼ろうかなぁと。」
「ああ、何そんなこと/別に頼ってもいいけど、離れてたら、つてにはなりそうもないね/てか、こっちに来る理由は何?」
「まぁ、そうだけどねぇ・・・。」
一緒にちょっと焦ったようなスタンプも送られてきた。続けて、
「仕事の兼ね合いよ。」
と送られてきた。
「近かったら頼ってよ/私は守山駅か栗東駅なら歩いてもいける距離だし/草津とかにもすっと行けるから。」
こちらはそれに続け、
「桶」
と送る。
「おお、頼りにしてるわ。」
「こっちには何時ぐらいに来る予定なのよ?」
「3月の終りぐらいかなぁ/詳しい日程決まったら連絡するね。」
「High High。待ってるよ。」
「そっちに行ってちょっと経ったら落ち着くと思うし、そうなったら遊ぼうよ/カラオケとか行って二人でハメはずそう!!」
スタンプで「いいね」を送信。
「萌ちゃんの彼氏も誘っていいよ。」
「はいッ!?」
とは言ったが続けざまに、
「じゃあ、梓は旦那を連れてきなさいよ。」
「だっ、旦那って!?」
「そんなの梓だったら聞かなくても分かってるでしょ。」
怪しい顔つきのスタンプを送信と。
「怪しむな、恥ずかしい。」
「そう送ってる時点で怪しさ満点だって。」
「まっ、その話はまた今度にしよ。とりあえず、まずはいくってことだけ伝えたからね。」
そう言ってスマホの電源ボタンを押した。低電力消費モードに切り替わったのだ。
「旦那かぁ・・・。」
顔を赤らめてそう呟いた。チラッと左手薬指にはまっている指輪を見た。
(まだ慣れないなぁ・・・。)
久しぶりに登場黒崎梓。




