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MAIN TRAFFIC3  作者: 浜北の「ひかり」
Office Episode
4/69

296列車 何かな・・・

 休みを1日はさんでから僕たちは2日支社に呼ばれた。そう入っても関西支社に配属になった内、JR警備に回される7人だけだ。JRが行っていることとかそういうことを学ぶために来ている。それぞれ配属は○○駅が2人、〇〇駅が3人、○○所が2人の計7人という区分けだ。ここでは契約先がどんなところかっていうことを教育された。まぁ、ほとんどの人間が知りえないことを知ることができるのである。と言っても、調べれば大概わかる内容ではあるが・・・。

「うーん・・・。」

そう言いながら、貰った紙を見ている人がいる。彼とは東京の研修であっている。そこからの知り合いだ。しかし、研修で泊まった部屋は同じではなかった。名前は大迫好鷹っていう。

「やっぱり、よくわかんねぇ・・・。」

大迫はそう言った。

「何か、分かんないことでもあった。」

「いや、俺今まで新幹線とか使ったことがないからなぁ・・・。そもそも新幹線がどこどう走ってるのかっていうことも分かんないし、何が一番早いっていうことも分かんないからなぁ・・・。」

そういう人もいるのか・・・。今まで知っている人との付き合いの方が多かった僕からしてみれば、新幹線がどこをどう走っているかわかんないっていうのはちょっと驚きだった。それに「ひかり」の名前も知らないとは・・・。出身は沖縄の与那国と聞いた。確かに、沖縄じゃあそれとは無縁かぁ・・・。

「まぁ、僕たちが絡む新幹線だけは覚えとこ。」

「そうなるよなぁ・・・。永島はこれ分かるの。」

「んっ。まぁ、大体ね。ていうか、好きだし、分からないことは無いけどね。」

「やっぱ、興味あると無いじゃあ違うかぁ・・・。」

そう呟いていた。確かに、興味ある無いじゃ違うだろうなぁ・・・。でも、東北新幹線みたいに「つばさ」や「こまち」がどこかにそれて行くなんて言うこともないから、そこまで複雑とはいかないだろう。そこだけは鉄道に興味がない人でも安心できることかもしれない。だけど、僕の場合はどこの新幹線になってもあんまり困ることは無いかぁ・・・。そう考えると同時に別のことも考えた。僕は確かに、この会社で行きたいなぁって思っているところに来ることができた。これが静岡だったらどうなっていたのだろうとも思う。こういうところに来れたという保障はない。だったら、ここに来れたのは間違っていなかったことにはなるが・・・。でも、やっぱり認めたくないところはあるかぁ・・・。

「でも、気は楽じゃないの。」

萌がそう口をはさんだ。

「別に分かんないことを応えろって、強要されてるわけじゃないしさ。分かんないことは分かんないってはっきり言っちゃえばいいんだし。」

「まぁ、そうだけど・・・。」

大迫はそれにそう答える。萌がこういうのは僕たちが警備員だからだ。警備員が駅で警備をする以上乗客からいろんなことを聞かれるのは必至だ。それが切符のことであったり、設備のことであったり、文句であったりするかは別として、営業をすることになるのだ。しかし、僕たちは警備員である以上営業してはならないことになっている。前に言っていることと矛盾しているがそうなっているのだ。だが、ここで言う営業は「切符のこと」に限る。それはもし僕たちが「この切符で改札通れる」という質問に「通れる」と答えて、と「通れなかった場合」と想定してのことだ。これで客からクレームを貰うことになる。こんな小さいことで怒る客も中にはいるっていうことだ。そして、これが暴行っていう最悪の事態にならないようにするためでもある。警備員は何度も言っているとおり、警察官と間違われるケースが多い。つまり、駅にいれば駅員と間違われるということだ。乗客は聞く対象が駅員だろうが警備員だろうが関係なし。迷惑ではあるが、こちらを駅員と思って疑わない人のほうが多い。そして、そう思った乗客が駅員(警備員)に聞いてみて「通れるって言ったのに通れなかったどういうこと」と駅員(本当の駅員)に言ったら・・・後はお察しください。これが警備員の営業と駅員の営業の違いになるのだ。これは施設になっても同じである。僕たちは設備があるっていうことを伝えるだけである。ほかの観光案内でもその場所は案内せず、交通機関の場所を案内するだけにとどめる。だから、僕たちがする営業は「そっちにいったら○○がある」っていうだけ。それ以上のことはしないっていうのがお約束だ。

 ていうか、こういう話を聞いていると「そもそも営業の概念がない」警備員に聞いてくるなっていう話である。しかし、客からしてみればそんなことは「どうでもいい」っていうふうになり、「駅にいる人=駅員」っていう成立すらしない方程式が頭の中で構築されるのだ。制服すら駅員と似ても似つかないのに、よくそんな式を立てるものである。まっ。人っていうのはご都合主義だから仕方のないことなのだろうか・・・。

「・・・。」

僕は萌の言うことを聞き流した。

 本当だったらそういうことだって答えたいのだ。それなのに、僕はそれに答えちゃいけない・・・。JRの主任である太刀風主任も言っていたが「知っているから答えたい」のだ。でも、それを答えてしまったら図に乗った乗客がまた同じことをして、答えられなかったらクレームになる。図に乗ったらどんな人間でもダメになるってことか・・・。

(チッ・・・。)

響かない舌打ちをした。

 それらと今までにどういう失敗があったかということを教育されてから、僕たちはそれぞれ配属される場所に向かった。一番近い駅の近くに車を止めてから、僕、沙留、萌はJRに乗り、配属される駅まで向かった。

「えーっと。ここが○○駅の仮眠所ね。永島君と沙留君はこっち。坂口さんはそっちのドアから入ってね。あっ、間違っても女性の仮眠所に入るっていうことは無くしてよ。」

「入りませんよ。」

すかさずそれで返した。ていうか、入る若しくは入った人いるのか。

 テンキーのついたドアを解錠して中にはいる。

「失礼します。お疲れ様です。」

「お疲れ様です。」

僕と沙留はそう言いながら、仮眠女の中に入った。僕の最初の感想は床が汚いっていうことと狭いっていうことである。2段のベッドが6つ置かれている。ここまでベッドが置いてあればそれは狭くなるか・・・。もっと別な感想は持てなかった。

 中には3人ぐらいいた。全員お疲れ様ですと言って僕たちを・・・いや、太刀風主任を迎えた。

「おっ。期待の新人ですね。」

そう言いながら太刀風主任に話しかける人がいる。

「沙留君と永島君って言ったね。○○駅警備隊にようこそ、隊長の春風です。」

肌が焼けていかにも体育会系っていう人だが、どことなく隊長っていう感じがしないのは気のせいだろうか・・・。この人が春風隊長ということだ。

「春風隊長、比叡隊長今休憩かなぁ。」

太刀風主任はそう隊長に聞く。

「今は立警の時間じゃないからこっちにいると思いますけど。」

「ありがとう。それと二人のロッカーどうするかなぁ。」

「ああ。ロッカーならそこに空いてるのと奥の空いているのを使えばいいじゃないですか。」

「うん、じゃあ二人に鍵渡しといてくれるかなぁ。」

「はい、了解。」

春風隊長がそういうとピ、ピっていう電子音がした。その音が終わったと思うとドアが開いて、女性が入ってくる。

「太刀風主任お疲れ様です。」

入って来るなりそう言った。

「比叡副長、お疲れ様です。」

眼鏡をかけ、いかにも文化系っていう人が比叡副隊長という人らしい。でもやっぱり、副隊長っていうような感じがしないのは僕だけだろうか・・・。

「ところで峯風隊長、あっちのロッカーのつっかえ棒ひとつ足らないんでここから一つ貰って行っていいですか。」

話題が変わりすぎているような。

「何正社員に使わせるところのつっかえ棒が足らないわけ。」

「えっ。足りないことは無いでしょう。」

そんな会話を聞いているとなぜが昔の鉄研部の時のように聞こえてならない。善知鳥先輩たちもこんな感じだったよなぁ・・・。特にサヤ先輩との間がこんな感じだったっけ・・・。

「あのっ。副長。これですか。」

そう言ってまた別の女性隊員が仮眠室に入ってくる。

「あっ。そうだ、これこれ。お騒がせしました。失礼します。」

やっぱり善知鳥先輩を見ているようにしか見えない・・・。

「・・・。」

比叡副長が去ってからしばらくの沈黙がある。なんか久しぶりの空気を持ち込まれたというか、何というかと言った感じである。

「まぁ、平常運転ですねぇ。副長は・・・。」

「副長らしくていいじゃないですか。さて、ロッカーは永島君が手前で、沙留君が奥でいいかな。」

そこからそういう話になるんですね。

「太刀風主任。今日はここに制服置いてって終了ですか。」

「うん。本来6時になったら終了する予定だしね。」

「じゃ、制服置いたら、すぐに家に帰って寝るといいよ。明日から永島君は勤務だし早いからね。」

「・・・。」

まぁ、仕事をするんだからそうなるよなぁ・・・。

 制服をロッカーの中に詰めて、僕たちはここまで担いできたバックを片手に仮眠所を後にした。仕事になったら朝は5時ぐらいに家を出ないと間に合わないことになる。まぁ、それは何でもいいかぁ・・・。そして、本当に始まったのかぁ・・・。


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