323列車 走った後
「ふぅ・・・。走ったなぁ・・・。」
高槻はそう言って荷物をベッドの上に置いた。
「って、なんで僕らの部屋にお邪魔して、荷物を置いてるのさ。高槻の部屋は隣だろ。」
今治がそう言った。
「まぁ、いいじゃん。レンタカーで400キロ近く走り回るなんて、走ろうと思わない限り出来るもんじゃないぜ。」
あれ、前に走行距離は213キロだと言っていたが・・・。まぁ、それはあれだ。一人が運転した距離だ。実際の走行距離は385キロである。かなり遅いがここで捕捉しよう。
「まぁ、俺もあんなに走り回ったのは久しぶりさ。カメラ片手に列車を撮影してた時も結構走ってたと思ったけど、考えてみれば、走ってる時よりも列車を待ってる時間の方が長いからなぁ・・・。」
笑いながら言った。
「僕はそもそも免許を持ってないしね。僕の仕事にいらないと言えばいらないけど、取ろうと思っても定時に終るわけじゃないから、そうそう自動車学校なんていけないしね。」
百済が言う。
「そう言えば、百済は免許持ってなかったな。」
「ところで、永島。どうだ。200キロ走った感想は。」
面白そうな顔をして高槻は聞く。
「別に。ただ、「北海道の道って走りやすいなぁ」って思ったぐらいだよ。」
今のところ正直な感想である。萌が尾張先輩から聞いた話によれば、本州のドライバーは北海道の道で結構飛ばすらしい。そして、北海道の人たちもまた道の解放感からか飛ばすのである。北海道の人は数分感覚のところでも、本州の間隔ではかなり距離があるらしいからなぁ・・・。
「普段、自動車を運転してる人間にしてはかなりさっぱりした感想だな・・・。」
「普段運転してるって言っても異質すぎるよ。沿線は20キロぐらい、沿線から離れて道を走っても出して60キロ。今回一時的にでもそれプラス50キロは出したんだよ。それに、普段走ってる道なんて離合するところを考えなきゃ走れないような狭い農道とか裏道なんだから。全然違うよ。」
「まっ、そんなところを走ってればそう言う感想になるかもね。」
そう言うと部屋の中に笑い声が響いた。
「あれ、萌ちゃんはまだ来ないの。」
百済が言った。
「ああ、萌ならちょっとシャワー浴びてから来るって。外は強烈に寒いし、体が冷えたんじゃない。」
「ほう。」
高槻の目がキラッとした気がした。
「ってことは今萌ちゃんの部屋に押し掛けるとタオル1枚だったりして。」
「おいおい。ナガシィ君の前でそれ言うか。」
今治が制止しようとしたが、高槻はそんなことお構いなしのように続ける。
「えっ、だって男の性でしょ。女の子の裸ってロマン以外の何物でもないじゃん。それに、エロくないって主張したところで受け入れられないぜ。男は全員エロいんだからさ。」
「・・・。」
「まぁ、見てもいいけど、どうなるかは知らないよ。」
僕はそう言った。
「知らないっていうのは、漫画みたいに恥ずかしくなるとバカ力を発揮するとか。」
今治が言う。
「いや、そんな漫画みたいなことじゃなくて後で何されるか分かんないから。」
萌がやるであろうことが頭の中に浮かんだ。
「ああ。萌ちゃんナガシィ君をくすぐること好きだもんなぁ・・・。」
「そうだよ。なんか見たらそれ相応のくすぐり攻撃が飛んできそうで・・・。僕はくすぐったいのは嫌だから、何か見ちゃいけないような気がするんだよねぇ・・・。」
そんなことを今治と話していると高槻の大きなため息が聞こえた。
「ええ。好きな子の裸見てそのあとに体密着で制裁だろ。羨ましいなぁ・・・。」
ピキ・・・。
「Mじゃないんだよ。」
「何時も何時も萌ちゃんと一緒なんだからさ。萌ちゃんが後ろから抱きついてきたりとかしたら、背中におっぱいが当たって気持ちいんだろ。」
「あわよくば、裸も見放題だからなぁ・・・。」
百済が天井を見ながら言った。
「いや、裸もそうだけど、ブラやパンツだって見れるんだぜ。」
「言っとくけど、萌の下着姿は見たことないよ。」
「じゃ、裸は見たことあるってことか。普通逆だろ。何下着飛び越えて裸見てるんだよ。」
「あるけど、かなり昔の話だし。もう10年ぐらい前の話だよ。」
「・・・ホントにうらやましい奴だなぁ・・・。」
「高槻は彼女いるんじゃなかったのかよ。」
確かいたよなぁ。服部さんだったっけ。
「優奈の事か。いくらいるって言ってもなぁ、会うたんびに見せてくれるわけでもやらせてくれるわけでも、しゃぶってくれるわけでもないんだよ。」
北海道に来てまで言うことはこれかい・・・。
「それ彼女が聞いたらぶっ飛ばされるぞ。」
「そうだな・・・。さすがにもう自重するわ。でも、優奈のと萌ちゃんのは別だぜ。」
「・・・。」
やっぱり男が集まるとこういう話になるというのは鉄板なのだろうか・・・。そうなんだろう。
「話し脱線したな。戻そうか。」
「でも、高槻。萌ちゃんってあんまり見ためないよねぇ。」
百済が言う。本当に百済ってこういうキャラだったかなぁ・・・。
「そうだよなぁ。専門いたころさぁ他に静岡組にさくらちゃんと榛名ちゃんがいたじゃん。その二人の方がまだ大きかったよなぁ。同じ部活だったんだろ。なんかに乗じて全員ではめちゃ・・・。」
「いや、それ以上はもういっちゃダメだろ。」
今治が横から口をはさむ。
「やってないから。」
「でも、同じ部活だったんなら、なんかの拍子にパイタッチとかできるじゃん。」
それは出来たかもしれないけどねぇ・・・。何せ鉄研部はそんなのが集まるようなところではない。言ってしまえば異性になんてまるで興味の無い人の巣窟・・・とこれは言いすぎか・・・。だが、それに近いことには変わりないかな。
「それが出来たら、留萌さんと木ノ本さんのおっぱいの感触も聞けたんだろうな・・・。」
百済、危険です。
「聞けたら、萌ちゃんとどっちが感触いいかも聞けるのになぁ・・・。」
その時、僕の後ろから手が回ってきた。
「また。ホントに男子が集まったらこういう話にしかならないのね。」
萌が呆れたような口調で言った。
しかし、さっき高槻が言った状況に今僕はなっている。僕の背中と萌の胸が密着しているのである。っとそれはどうでもいい。
「って、何時の間に。」
「榛名ちゃんとさくらちゃんの方が大きいって所から筒抜けですよ。久しぶりに名前聞いたし、二人に報告しちゃおうかなぁ・・・。高槻君と百済君が大きいし、触りたかったって言ってたって。あっ、それとも高槻君は優奈ちゃんの方がいいかなぁ。」
「ごめん、それだけはやめて。」
「百済君は・・・。」
「いいよ。言っちゃっても、怒られるのは分かってるし。」
「・・・。それにしても、私ってそんなにないかなぁ・・・。確かに大きくはないけどちゃんとあるのよ・・・。それに、胸だけで女の子を判断するな。」
「・・・。」
まぁ、その通りである。
「邪魔しちゃ悪いし、部屋戻るか。」
そういい高槻と百済は立ちあがって荷物を置いたまま部屋を出て行った。それを見届けたあと3人で顔を見合わせてから、
「あっ、俺もいちゃ悪いかな。」
「あのねぇ今治君、別にここにいて気まずくなるようなことはしないって。」
「そうそう。」
(よくあんな話を聞いた後で動じないなぁ・・・。)
いつまでも萌が僕の後ろにいるわけにもいかないな。僕は萌から少し離れベッドの上に足を伸ばした。萌はというと色違いのスマホを取り出して、文字を打ちはじめた。
「LINE。」
今治のスマホがそう言った。
「こんな時間に何だ。」
今治はそう言いながらスマホを手に取った。
「榛名、さくら。高槻が触りたかったって言ってたぞ。」
返信はそのすぐ後にやってきた。
「マジで。高槻に触られるのはヤダなw。」
専門学校でのLINEグループでそう言ったのである。
(高槻ご愁傷様・・・。)
このあと高槻の公開処刑が執行されるのは言うまでもない。
あっ、言っとくけどナガシィならこういうのはしないからね。エヘッ。
結局、こういう話になるんだ・・・。




