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MAIN TRAFFIC3  作者: 浜北の「ひかり」
Office Episode
2/69

294列車 関わり

 東京の研修は始まったばかりだ。僕たちは制服を貰い、確かに日綜警の一員になったのである。左胸に社章が入り、右腕に太い糸を絡ませたモールっていうのをつけ、その先端に笛、腰にベルトを通し、遠目で見たらいかにも警察官って感じだ。それが、何人もそろっている。前から見たら、これはどう映るのだろうか・・・。

「今日から大変だと思いますが、皆さんよろしくお願いします。それでは解散。」

研修担当の人はそう言った。それを聞いてから号令がかかり、全員が立ち上がる。その動きには何一つ無駄なものがない。

「ありがとうございました。」

そういって、今日の研修は終了となる。僕は身の回りのものを片付けて、自分が止まる部屋に行く準備をした。女子は荷物を別の部屋に置いているようなので、(もえ)とは実質ここから別行動ということになる。

「さて、行きますか・・・。」

そういってから、自分の制服バッグを持ち上げた。この中に今着ているものが入っていたのである。今この中には自分が来ていたスーツが入っている・・・。

 部屋に向かう途中リネン類を貰い、自分の部屋に向かった。ドアを開けてみたが、まだ鍵がかかっててあかない。まぁ、鍵は僕以外の人が持ってくるから無理もないのか・・・。まぁ、そこはどうでもいい。

「えーっと317、317。」

そういいながら一人近づいてきた。317というのは部屋の号室に間違いはない。僕も泊まる部屋は317号室。ということは同じ部屋の人間かぁ。

「ねぇ、君。ひょっとして同じ部屋。」

話しかけてきたかぁ・・・。まぁ、向こうから話しかけてきたんだから答えない理由はないかぁ・・・。

「そうだけど。」

とだけ答えた。

「あっ。そうなんだ。俺、山城(やましろ)幸仁(こうじ)っていうんだ。一週間よろしく。」

「そう。よろしく。」

そういえば、名前も言わなかったかぁ・・・。いや、会社が作った名簿みたいなので名前は分かる。別にこちらから言うことでもない。いずれわかることか。

 だんだんとこちらに制服を着た一団が集まり始めた。他の一団も到着し始めたのだろう。そう思っていると隣の部屋が空いて、中に4人入っていった。ここら辺の部屋は4人相部屋らしい。どういう部屋なのかは知らないが、恐らく2段ベッドがあるだけで他には何の設備もないだろう・・・。いや、エアコンぐらいはあるか・・・。ちょっと怪しい・・・。そうこう考えていると自分の泊まるところも開いた。

(うわっ。何これ・・・。)

心の中で部屋の中を見て思った。思っていたものをイメージが違う。2段ベッドかと思ったベッドはただのベッド。エアコンなんて設備は無いようだし、ずっごく殺風景だ。そして、狭い。さすが都会に建っている建物である。

「なんかイメージと違う。」

そういう声が出た。

 自分と同じ相部屋になるであろう人はちゃっちゃと奥のほうへ入っていった。窓のある方だ。窓から見えるのは中庭のようだ。特に何かあるわけではなさそうだが。まぁいい。一週間もここにいるならいずれ見る。今見るものじゃない。

「さて、俺ここにしよう。」

そういって山城(やましろ)が左奥にあるベッドの近くに荷物を置いた。そして、もう一人が右奥のベッドに荷物を置く。

「どこにしようか。」

後ろにいるもう一人に聞いた。

「まぁ、もう二つしかないけど・・・。」

そういって答えながら、右手前のベッドの近くに荷物を置いた。となれば、残ったのは左手前だけである。まぁ、ここは寝れればいいっていう感じなんだから、別にどうってことはないか。それにしても、ここまで何もないっていうのも意外だ。本があってここは正解だっただろう。

 全員荷物を置いて一息つく。

「あっ。これからよろしくね。」

山城(やましろ)がそう言ってから、二人がそれに答える。僕は済んでいるからどうでもいいだろう。

「そう言えば、さっき名前聞かなかったけど、なんていうの。」

永島(ながしま)。」

僕はそれだけ答えた。初対面の人に自分の何から何まで答える気にはならないし、そもそも信用はできない。いつ自分の都合だけになるかわからないから・・・。

「君たちはなんていうの。」

「僕、僕は新垣(にいがき)飛龍(ひりゅう)。」

右奥に行った人が答えた。苗字は入ってこなかったけど、飛龍(ひりゅう)は入って来た。いや、何かと同じになってる。

「俺は伊勢島(いせじま)志登(しと)。一週間よろしく。」

伊勢かぁ・・・。いや、だから、別のものが混じってるって。そう言えば、僕が呼んでいる小説の中で「伊勢」が撃沈されてたっけ。艦橋に直撃弾くらって。そういえば、「伊勢」が撃沈されたのと同じ戦いで「山城(やましろ)」も沈んでいる。確か、水雷艇の魚雷を受けて沈んだんだっけ・・・。小説の中でも「山城(やましろ)」は不遇な気がするなぁ・・・。ついでに言えば、大艦巨砲主義の小説の中に航空母艦である「飛龍(ひりゅう)」はそもそも出てこなかった。まぁ、その代りっていう感じで「赤城」、「加賀」は出るのだけど・・・。

 って、別なのが混じってる。ていうか、こいつらにとってそれはどうでもいい話だ。それに、理解できないだろう。今ブラウザゲームでそういう「艦隊ゲーム」が流行っているけど、どこまでその人たちは認知しているのだろうか・・・。それもどうでもいい話か・・・。

「さっきも言ったけど、永島(ながしま)ねっ。よろしくお願いしますね。」

右胸に着けている名札を見せながら新垣(にいがき)伊勢島(いせじま)に言った。

「そうそう。みんなどこの支社に配属されるの。」

山城(やましろ)が話題を切り替えた。

「大阪だけど。」

僕はそう答えた。それに続いて、伊勢島(いせじま)が「大阪」と言い新垣(にいがき)が「大阪支社」と言った。用はここにいる4人は大阪支社配属ということか・・・。この部屋以外の人も当然大阪支社に行くんだろう。まぁ、それは当然かぁ・・・。早期就業と合わせて300人くらいいると聞いた。考えてみれば、ここだけっていうのは比率がおかしすぎるかぁ・・・。それに、高槻(たかつき)今治(いまばり)は早期就業のことを聞く限り、大阪支社みたいだ。

「あっ。そうなんだ。全員同じ支社配属かぁ。じゃあ、また会うこともあるかもしれないんだね。」

「・・・。」

まぁ、そうなんだろうなぁ・・・。

 一方、(もえ)はというと今の僕の部屋と同じような状況になっていた。4人での相部屋だし、特に変わったところはないみたいだ。

「へぇ、静岡かぁ・・・。っていっても静岡って広いよねぇ。新幹線乗ってても静岡越えるのに時間かかるんだもん。」

「まぁ、そうだね。静岡って横に広いからまぁ、仕方ないんだけどねぇ・・・。」

「静岡からなんで静岡の配属じゃないの。おかしいんじゃない。」

「ああ。大阪の専門学校通ってたから多分それでじゃないかなぁ・・・。静岡からきて大阪の学校行って、同じように大阪支社配属になった人いるし。」

「それって、先輩で日綜警入った人。」

「ううん。ここにいるよ。同期だし。」

「・・・かぁ、そんな小説みたいな偶然っていうのが世の中現実にあるんだなぁ・・・。」

一人はそう言った。

 でも、今心配なのはそういうことじゃない。ナガシィは自分から人に話しかけるっていうことはまずしない。相手がコンタクトを取ってきたら、話すっていう感じだからなぁ・・・。だから、誰もコンタクトしなかったら話さないのだけど。大丈夫だろうか・・・。まぁ、ナガシィってかなり都合のいいスイッチを持っているから、大丈夫だとは思うが・・・。日綜系に就職が決まって以来鉄道に興味無い人と話す時の話題が小説かゲームか軍艦の話になったが、それを今自分の部屋でもしているのだろうか・・・。というか溶け込めているだろうか・・・。母性本能がそういう考えを巡らせる。

「なんか考えてるのか。」

「へっ。」

そう言われた。分かるものなのだろうか。突然のことで、声が出なかった。

「分かっちゃうよ。今なにか別のことでも考えてたでしょ。男のことか。」

そこまで言われるとなぁ・・・。言うことでもないような気がしたけど、ここまで突っ込まれると言わざるを得ない状況になってしまう。

「まぁ、そうだけどさぁ。」

「はぁ、いいなぁ。彼氏がいるっていうのは。私、就職決まる前に彼氏と別れたしなぁ・・・。まぁ、遠距離になるってこととお互いにさめてたってこともあるけどねぇ・・・。で、何を考えてたんだよ。彼氏と会えなくて寂しいってことか。」

「そういうのじゃないって。ただ心配なんだよ。あんまり人と話したがらない人だからさぁ・・・。人が話しかけてくるのを待ってるって感じだし。」

「心配って・・・。別にここにいるわけじゃないでしょ。そんな心配することもないって。」

うん、確かにここにいなかったらそこまで気が回らなくても当然なんだろうけど、現に本人はここにいる。

「まぁ、本人がいなければね。」

「えっ・・・。」

一瞬部屋の中の空気が変わった。

「えっ。まさかここにいる。」

「ウソ・・・。」

それまで話に入ってこなかった人まで話に入って来るし・・・。

「えっ。彼氏だよなぁ。ここにいるの。その彼氏。」

「いるよ。」

「それこそ小説か・・・。私ここにいないって思ってたわ。」

驚くのも無理はないのか・・・。まぁ、そこは何でもいい。この話が始まったためか、そのあとは女子トークになっていった。しまいには「したことある」とかの話になり・・・。まぁ、それは無いんですけどね・・・。

 23時消灯となり、部屋の電気が落とされ、眠りについた。中にはLINEをやり、見せかけの沈黙を保っている人もいた。

 翌日目が覚めたのは4時01分だった。

(まだこの時間かぁ・・・。)

この時間に起きたことを半分悔やんだ。だが、この時間からまた寝たら、変な時間に起きそうだから、このまま起きていよう。そして、そのまま暇をしているのであれば、どうせ眠ってしまう。こういう時のための小説だ。

 カバンの中から小説を取り出し、続きを読み始めた。そうたいした時間稼ぎにはならないだろう。

 この中で言えば、もう「山城(やましろ)」も「伊勢」もいないことになっている。ついでに言えば、これまでの戦いで「土佐」、「長門」、「霧島」が喪失している。そして、今呼んだ中で「赤城」が右舷に被雷5の被害を受けて、修復不可能で捨てられることが決まった。その戦いの帰路に「駿河」が喪失かぁ・・・。

「敗北が色濃くなってきたねぇ・・・。」

そうつぶやいた。

 考えてみれば、自分の中の敗北感はまだ拭えていない。自分が思っているようにならなかった・・・。まぁ、これはそれを忘れるためのものか・・・。そう思っていたら、読み終えた。


登場人物

山城(やましろ)幸仁(こうじ) 誕生日 1995年11月3日 血液型 B型 身長 186cm

新垣(にいがき)飛龍(ひりゅう) 誕生日 1995年6月5日 血液型 A型 身長 169cm

伊勢島(いせじま)志登(しと) 誕生日 1993年10月23日 血液型 B型 身長 176cm


名前の由来は言うまでもないでしょう。

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