表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
MAIN TRAFFIC3  作者: 浜北の「ひかり」
Office Episode
19/69

311列車 器

 長良隊長は車を動かし、点検個所に近い位置に止まっては僕とともに車から離れ、点検していく。ただ、点検個所が車から少々離れている位置も珍しくない。その場合はそこまで歩いて、点検する。

 その時にも上では新幹線が轟音と共に走り去っていく。ここら辺は線形がいいので東海道新幹線は270km/hで走っていく。

 車が入る通る道路というのは農道が多い。そのため車1台が通れる幅しかない道をひたすら走っていく。そのため時速は20kmから30km。たまに普通の道に出るが、タコグラフと言う瞬間速度を印字する機会を搭載していることもあり、スピードは法定速度。というよりも車の流れを乱さない程度の速度しか出さない。

 さて、ふつうの道に出て、すぐにまた農道に入る。最初の交差点に来て右に曲がろうとウィンカーを出し、ハンドルを切る。

「あっ・・・。」

長良隊長はそう声を上げて、レンジをバックに入れた。

「農家の人がいたら、別に見に行く必要はないから。一日1回以上通れば問題ないところだってあるしな。」

と言った。

 そうなのか。今はそう思っておくことにしよう。

 車は曲がる前の道に戻った。そして、今度はDにギアを入れ、走り出す。

「農家の人は正直JRに良い感情は持ってないからね。わざわざこっちからトラブルの渦中に飛び込むこともないし、最初に言われたと思うけど、仕事なんでとか言って危ない橋を渡る必要もないしな。」

「はい。」

でも、何故農家の人たちはJRに良い感情を持っていないのだろうか。まぁ、その答えは簡単だろう。「反感」である。

 新幹線は国家プロジェクトということでかなり強引に推し進められた部分がある。それこそ新幹線の走っているところである。

 新幹線は今殆ど市街地の間をすり抜けて走って行っているが、開業した当初はあんな市街地ではなかったのだ。周りは家などほとんどない殺風景なところを走って行ったのだ。今そのような光景を見るとなれば、東北新幹線沿線がいい例だろう。あのように周りは農地ばかりのところを走って行ったのだ。

 ということは新幹線が走るところも元々は農地だったと考えるのが自然だろう。

 そして、そこの農地を持っていた人たちは国によって強制的に退去させられたのだ。

 その後新幹線の建設が始まり、今度はその音。そして、開業すると今度は走行音に悩まされることになる。気にしたくもない音が向こうから飛び込んでくるのだ。

 また、何よりも新幹線は年間で何十億・何兆という収益を上げている。東海道となれば、それこそ収益性が高い。比べて農業は今収益性が高いとは言えない。自分たちは苦労して少ない収益を得ているにもかかわらず、新幹線は走るだけで高い収益を確保し続けている。この差は何だろうか。

 このような思考になればそりゃあ反感を買っても仕方がないだろう。

「でも、捕まったら捕まったでその人の言い分は聞いてやらないとダメだしな。怒ってる人とかは大体何か言いたいことを言いきれば落ち着くから。ただ、そこで反論すると火に油を注ぐから注意しな。」

「はい。」

(人ってわからんなぁ・・・おい。)

 それがもった率直な感想である。

 12時が回っても休憩はない。駅にいたときもそうであるが、休憩がまちまちなのはこういう仕事上仕方のないことなのである。

「○○駅にいたときは詰所から10分前に出なきゃいけないってなかったか。」

そう聞いてきた。

「はい、なってました。」

「休憩1時間と入ってるけど、そういうのがあるから実質1時間じゃないしなぁ・・・。」

もともと○○駅にいたから長良隊長とは○○駅警備隊あるあるを話せるのである。

「そうでしたね。」

「それになぁ、終列車が近づいて来るとほぼ必ずと言っていいほど「切符失くしたんですけど」っていう人が湧いてくるんだよなぁ・・・。もうちょっとで休憩なのにいい加減にしろよって思えてくる。」

確かに・・・。切符がないならないで普通にお金を払う人ならいいのだけど、世の中素直にお金を払う人間が何処までいるのだろうか。乗客からしてみればすでに乗車区間の代金を払っているのである。だが、JRからしてみれば、切符を失くした以上乗車区間を提示し且つそこにお金の取引があったかどうかを証明できないため、もう一度払ってくださいとなる。ここで駅員と乗客が揉めるのである。

 客の言い分は「すでに金払ってるのに、どうしてまた払わなきゃならんのだ。」

 JRは「金払ってるかどうかわからんから、今ここで証明の代わりに払ってください。」

 主張が真っ向から対立するからだ。

 まぁ、これにはJRの方に分がある。証拠を提示できない以上、改札を通すわけにはいかないからね。それも分からずに駅員殴って人生棒に振る方が馬鹿である。

「それで、何も言わずに払えばいいけど。まぁ、そんな人ばっかじゃないわ。」

確かに。そんな人ばっかじゃない。

「新幹線って東京から大阪だったらいくらぐらいだ。」

「1万3千円ぐらいですね。」

「だろ。それ切符失くしたらもう一度1万3千ちょっと出すんだぜ。誰も出したくないわな。」

そうですねぇ。出来れば1回だけにしたいですねぇ。

 まぁ、これは変な人の話ではない。誰も1万円越えの出費を2回もしたい物好きはいやしないだろうからね。それも1回目はちゃんと代金を払っている。それにもかかわらず2回目を請求されるのだ。誰が払うかという思考は別に分からなくはない。

 ただ、時に変な人がいるのである。

 それは人の集まる駅も同じであるが、こっちも同じらしい。

「農家じゃなくても変なこと言うやつはいる。こっちは普通に休憩してても、「サボってるだろ」っていちゃもん付けてくる人はいるからな。」

「いるんですか。そんな人。」

「いるんだよ。それが。」

長良隊長は思い出したくないものを思い出したような顔をした。

「その人の主張は「休憩は12時から1時の間だ」なんだよ。そんで、それを世間一般全部そうだと思ってるんだよ。」

こんなバカな思考する人いるのかよ。

「信じられないって思うだろ。俺も聞いた時信じられんって思ったからな。」

と言ってから、

「確かに、ふつうの会社とかだったら12時から13時の間が休憩だろうな。でも、俺たちは12時から13時の間に必ず休憩取れるかって言ったらそうじゃないだろ。どこを警備に行くかでも、日ごとによっても休憩時間は違うことがあるじゃん。ただ、そういう文句言ってくる人は自分の考えとか思ってることでしか主張しないから、余計たちが悪いんだよ。」

確かに、自己の勝手な思い込みで話をされるのはたまったもんじゃない。話を聞かされる方も嫌になる。だが、人に嫌なことをしたい質の悪い人間はこれだけじゃないらしい。

 他にも、嫌な連中というのはいるらしい。

 この車を走らせる目的は警備であるから、ふつうの車のように新幹線の隣の40km道路を40kmで巡航するわけじゃない。当然、邪魔になるのである。

 そして、邪魔だからという理由で「JRの車が遅い」という文句をお客様センターに入れる人までいるのである。

 おいおいおいおい。他にもゆっくり走ってる車はいくらでもあるだろ。なんでJRの車限定なんだよ。JR以外にも遅い車はあるだろ。そっちには文句を言わずにJRにだけ文句を言うのか。

 まぁ、その理由の蓋を開けてみようか。「あんたの車が遅いせいで予定に間に合わなかったじゃないか。」。だったら、遅い車が走ってるところを抜け道で使うなよ。どこどう考えても、近道をした自分に責任がありますが、そんなことはそっちのけで文句たらたら。恥ずかしいとは思わないのかな。

 まだまだ。こっちは遅く走ることが確定しているので、後から猛然と追いかけてくる車がいないようにすべての車が言ってから交差点を曲がるのが常套である。さて、今左右のどちらかから車がやってきていて、こっちの警備車両が交差点でその車を待っているとしよう。待つとゆっくり来て、曲がるといきなりスピードを上げるのである。やっていることが幼稚すぎて話にならない。とても大人の対応とは思えません。それとも大人じゃないのかな。運転しているのは子供なのかな。

 まだあるのかい。「あんたらが急に出てきたから危ないじゃんか。」と言われる時に限って、相手がちゃんと左右を確認していないとか。左右を確認すれば防ぐことが容易にできることであるにもかかわらず、自分が左右を確認しなかったことは棚に上げて、此方の批判だけに徹する。批判ばっかりしていると嫌われますよ。

 さて、こういうことをいう人は大体こっちの事情を知っている人です。そして、他の車には文句を言わないくせに、JR関係の車にだけこう言ってくるのです。此れもJRへの妬みです。

 それは簡単、JRに不況なんて先ず関係ないからです。他の企業は不況に苦しんでいるのに、JRは乗る人さえいれば勝手に収入が入るのです。多分、こういう人たちにはJRの一人勝ちが嫌なのでしょうね。

「クレームとか聞いてると、人の器の大きさっていうものが垣間見れるのは面白いんだけどなぁ・・・。」

「言われる方は・・・ねぇ。」


こんな大人にはなりたくないシリーズですかね。少なくともこれを読んでいる人は妬みだけで文句を言うような器の小さい人にはなってほしくないと願っています。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ