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MAIN TRAFFIC3  作者: 浜北の「ひかり」
Office Episode
16/69

308列車 朝早く

 7月の中旬。いつもなら6時近くに来る上新庄の駅であるが、今日はそういうわけにはいかないのだ。滋賀の真ん中にある仕事場に行くためには阪急電鉄の始発かその1本後の河原町方面行きに乗らない限り、仕方がないのである。

 時間は5時30分ぐらいだ。

「あっ。」

ふと顔を上げるとスーツに身を包んだ萌が走ってくる。上新庄の駅ビルの中はまだ静寂に包まれている。やっている店は当然のことながら24時間営業の者しかない。

「はぁ、間に合った・・・。」

息を切らしながら、萌はそう言った。

「萌が寝坊するって珍しいね。」

「・・・うっ・・・。目覚ましちゃんとかけたんだけどなぁ・・・。なんか自分で切ってたみたい。朝携帯電話見てびっくりした・・・。」

「汝だったのさ。5時10分。そこから何もせずに出てきたから、眠いよ・・・。」

「はは、そうなんだ。」

「もう、他人事だと思って。」

そう言いながら、あんまり他人事でも無いんだよなぁと思った。いくら5時30ぐらいに目が自然に覚める僕でも今回のことはさすがに心配している。家に帰ったら遅くて23時ぐらい。そこから再び4時に目を覚まし5時30分になるくらいには上新庄駅にすでにいなければならないとなるとね。まぁ、そう思いながらも始まっちゃえば何とかなるかっていうところはある。

「まぁ、行こうか。」

「うん。」

僕たちは改札機にICOCAを当てて、河原町方面行きのホームに上った。こんな時間に乗る客はまばらだ。だが、梅田方面行きの列車を待っている客のほうが河原町方面行きよりも多い。それはそれで当然のことだろう。

「間もなく京都・河原町行き方面行きの列車が参ります。」

そのアナウンスが流れた。梅田方からカーブを曲がって阪急マルーン1色に塗装された電車が入線する。よく京都本線で特急として運用される阪急9300系だ。行先表示などはフルカラーLEDで示され、ヘッドライトも電球っぽい白ではなくHIDランプの目に刺さるような白だ。VVVFインバーター制御のこの車両は減速時にモーターから出る独特の音を発しながら、停車した。ドアはチャイムの音と共に開く。

「此れでどこまで行くの。高槻市、大山崎。」

萌がそう聞いた。

「高槻市まで。高槻市から高槻駅まで10分ぐらい歩いて、6時13分発の快足に乗って行けばいいよ。そうすれば詰所には7時10分ぐらいにはつくよ。」

「ふぅん。そっか。通勤快速で山崎止まらないんだ。」

萌は他人事みたいな返事をしてからそう言った。

 JR京都線に「通勤快速」という種別は存在しない。あるのは「新快速」か「快速」のどちらかである。新快速はJR京都線内京都、高槻、新大阪、大阪にしか止まらないが、快速は高槻までの各駅と茨木、新大阪、大阪に停車する。尚、快速の朝方には京都~高槻間を快速運転する快速が存在する。その快速は長岡京にだけ止まり、昼型の快速が止まる駅を通過する。そして、この時間に京都・米原方面に向かって走る快速は全て長岡京にしか停車しない快速だ。阪急とJRの乗換駅としては大山崎から山崎が最も近いのであるが、乗り換える相手がいない以上そちらで乗り換えるわけにはいかない。

 ドアチャイムとともにドアが閉まる。しまって、車掌が運転士に発車合図を送れば、9300系はブレーキを解除にホームから滑り出していく。

 上新庄から高槻市までの道中は20分ほどだ。ホームに降り立ったら、いつもなら出ていく列車を見送るぐらいのことはするが、今回はそういうわけにはいかない。発射したことをその音で確認しながら、僕たちは階段を降り、改札へと急ぐ。JRがある報に通じる道路へ出て、アーケードのある道を抜けて、高槻駅のほうに歩く。

「この時間から歩くと暑いね。」

「早く。」

「ちょっと、ナガシィあるくの早くない。」

「えっ、そう・・・。」

 そんな話をしながらも高槻駅に着くのは6時5分を少し過ぎたぐらいだ。高槻駅で乗るお客の数もまだまだそれほど多くない。この時間から通勤するという人の数はまだたかが知れている。

 電光表示を確認すれば6時13分発の京都・米原方面行きの快速の表示が出ている。

 改札を通り抜けて、京都方面行きのホームに降り立つ。

 高槻のホームは狭い。此れもあってか通勤ラッシュになった時の高槻のホームは混雑に拍車がかかっている。JR西日本はこれを救済するために新快速専用のホームを建設し、今使われているホームは内側の線路を走る緩行線や快速の為に割き、新快速を新設されるホームに停車させ、混雑の緩和を図ることを決めている。もうすでに建設が進められている。

「ナガシィ。来るやつって8両・・・。」

萌が突然そう言った。

「えっ。」

そう声を上げ、思わず電光表示を見る。6時13分を発車時刻の隣には足元のどこに扉が来るかと言う表示が出ている。△の1から8になっている。確かに電光表示を見る通り8両だ。

(おいおい、今日平日だぞ・・・。京都からダダ込じゃん・・・。)

「無いよねぇ・・・。平日なのに・・・。」

「うーん、まぁないけどさぁ・・・。」

そうは言っても8両でやってくるのは変えようがない。平日だけあって大阪方面行きの列車を12両とかにしているため、大阪から離れていく列車は別に車両が少なくてもいいと言うことだろう。確かに大阪方面行きと大阪から離れていく列車に乗る乗客の流れは明らかに大阪方面行きのほうが多いからなぁ・・・。仕方のないことと言えば仕方がないのか・・・。

「ところで、サルちゃんの姿見ないね。」

「うん・・・。もう先に行ったのかなぁ・・・。」

「えー、別に一人で先に行かなくてもよくない。」

「まぁ、この時間になったら混むなぁって思って先に行ったのかもしれないし。」

「美萌ちゃんに頼んでこらしめといてもらおうかなぁ・・・。」

「・・・。」

 6時10分ごろに快速列車が入線する。来た快速は223系2000番台だ。まぁ、大所帯だから1000番台や225系が来る方が珍しいだろう。客はそんなに入れ替わらずに8両の快速の中に詰め込まれていく。

 全員詰め込み終わったら、快速はそそくさと高槻を後にする。

 高槻を発車するとぐいぐいとスピードを上げていく。新快速で130キロで飛ばしていくだけあって、快速の走りもそれを垣間見るものである。

 島本に向かって行くカーブに差し掛かると阪急や新幹線の線路が見えてくる。阪急にはちょうどその区間を走っているものが見られないが、新幹線は東京方面に向かって走っていく新幹線が見える。走り去っていく車両はN700系であることが分かる。奇数号車に時折大きなロゴマークがあることが見えたことから、増備され続けている東海道新幹線の最新車両N700系1000番台通称エヌナナエーであることが分かった。

 カーブを曲がり、しばらく走ると島本を通過する。島本を通過してサン○リーの工場がある山崎のカーブを曲がって、山崎のホームを通過する。そのすぐ後に阪急京都本線の頭上を通り過ぎ、阪急京都線はJR線の左側にやってくる。JRが右にそれて阪急線と離れ、数分経たないうちにこの快速の停車駅長岡京に滑り込む。長岡京で客扱いののちすぐに発車。ぐいぐいスピードを上げて、向日町の車両基地の隣を通り過ぎ、向日町、桂川を通過する。右からは新幹線の線路が見えてくる。だが、通る新幹線はない。

 時間通りに京都に入線。京都で利用客が入れ替わり、客扱いが終了すれば、快速はこの先全ての駅に停車しながら、走っていく。山科、大津で若干降車客が目立ったが、そう多くはない。その先膳所、石山、瀬田、南草津と客を呑み込み、草津で排出する。

 目的地である栗東の到着は6時56分。7時4分前の到着だった。

 このあと仕事になるのであるが、何をしているのか分かったのは新幹線の沿線を走り鍵を引っ張るという春風隊長の言っていた通りのことだけだった。それ以外のことは全く分からない。そして、仕事が終わって帰ると23時少し前だ。

(これがしばらく続くのか・・・。)


こんな生活で仕事を覚えろというほうが無謀ではないだろうか。

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