~華のありがたみ~
呼び出した理由。
え?目の前にいる超絶イケメンがハーデス?
嫁バカでちょっと変態入ってるコイツが、あのギリシャ神話とかゲームで有名なハーデス?
イメージ違くね?
「うむ。ほうけている顔も可愛いらしいな!」
「そうでございますね。」
「我の嫁はいつでもどんな時でも愛らしいがな!!」
「さようでございますね。」
黙れ外野。
あれ?ハーデスって嫁さんいたっけ?
ゼウスのちょっと怖い物騒な嫁さんのヘラしか知らねーんだけど。
人違いじゃね?
あ。ハーデス違いとか!
「いえ、姫様。冥府の王、ハーデス様はお一人ですよ。」
その心読むヤツ辞めてくれない?
「はっ。失礼致しました。」
読んでんじゃねぇか。
「んで?コイツって本当にあのハーデスなわけ?」
「えぇ。勿論でございます。ただ、人間共が我らが主にそう会えるものではございません故、想像した物語を作っていても不思議ではありません。」
あー。なるほど。冥府の王だしな。死ななきゃ会えないもんな。
俺、ギリシャ神話って詳しくないんだよな。
知ってて、ゼウス、ハーデス、ポセイドン、ヘラ、アテナ、アフロディーテくらいか?
ヘラクレスとかはハーフなんだっけ?
知ってるって言っても名前と属性しか知らないしな。
ゼウスが女好きって事くらいしか知らん。
ふむ…ハーデスねぇ…。
確かに、黒髪ロン毛。女共が羨ましいがりそうなほどのキューティクル。
しかもサラサラ。
顔はさっきから言ってるが超絶イケメン。
チャラい感じじゃなくてクール系だな。
地下に籠ってるせいか、透き通るような色白とは、こういうのを言うんだろう。
病的な青白さはない。
んで、闇色って感じの瞳に切れ長の目。
身長も高いのに、ヒョロイ感じはまったくしない。
骨格もガッシリしてるし、鍛えてる感じしたしな。
威風堂々。威厳も備えて威圧感バッチリ。
うん。確かにハーデスって言われても納得出来る…かも?
今はデレデレしてて残念なイケメンになってるけど、
ヘタレ感がないって、むしろすげえな。
………イケメンなんて嫌いだ…。
俺に分けろ!!
「つかさ、俺が嫁さんって人違いじゃね?」
「何を言うか。自分の妻を間違える馬鹿がどこにいる。」
そりゃそーだ。
でもなぁ…
「やっぱ、人違いだって。俺、アンタの事知らねーし。
だから今すぐ俺を元の身体と場所に返せ。」
「記憶が安定していないと言っているだろう。」
「人を記憶喪失みたいに言うな。ちゃんと物心付いてからの記憶はある程度ある。」
「その記憶は人間として生まれた時からの記憶だろう。
我が言ってるのは女神としての記憶だ。大方、アイツが封印しているんだろう。」
は?今、女神って言ったか?
あー。ハーデスって神様なんだっけ。なら嫁さんが女神でもおかしくないか。
だからって…
「そんな事出来るのか?」
「冥府の女王だぞ?それくらいは出来る。」
まじか。
「それに、アイツは引きこもるのが得意だからな。最早趣味だな。」
お前の嫁さん大丈夫か?
「まぁ、そう焦らずとも、ここにそう長い間はいられん。
無理矢理精神をこちらに呼び戻しただけだからな。
限界が来る前に自然と人間の身体へと戻るだろう。」
まじか!よかった…!
とりあえず一安心だな。
落ち着いてきた。
でも、そーすると…
「なんで呼んだんだ?非常事態か?」
そうだよ。そんな無茶してまで呼んだなら、なんか用事あったんじゃねーの?
残念ながら人違いだがな!
「うむ。会いたかっただけだ。」
「心底くだらねぇ理由だな!!」
「何を言うか!愛しい妻に十何年も会っていなかったのだぞ!!
こちらに一時的とはいえ、呼び戻すのにお主の成長と安定を待つのがどれだけ辛かったかお主にわかるか!!」
「わかるわけねーだろ!」
俺の精神?身体とかに負担が掛からないように考慮してくれた事は感謝するけどな!
だからってそんな理由で呼び出されたらたまったもんじゃねーっての!
「お主がいない冥界のなんと寂しい事か…!
華がなく、空気は荒み、じめじめと陰鬱な空気にまみれ、仕事は山積み……」
どんだけ嫁さん大好きなんだよ!?
「そもそも、人違いだって言ってんだろ!」
「お主はまだそんなことを…。いいか。
まず一つ。銀髪の女神は一族探してもお主だけだ。
二つ。冥府の女王の身体に、こちらが呼んだとはいえ、別人が入れる訳がないだろう。
どれだけ悪行に利用出来ると思っている。」
ぐっ…!そう言われると、前者は知らないが、後者は可能性高いな。
コイツ、嫁さんにベタ惚れだし。
「ま…マジか…。」
「そう言ってる。ついでに言うと、その諦めの悪さと強情さもそのままだ。
ツレない所もな。」
お前の嫁さん、どんなだよ。
「だが、それがイイ!!」
お前も大概だな。
クールなハーデスイメージをお持ちの方、崩壊させてすみません。