探偵
何をしているのだろうと遠藤アリスは思った。彼女は今高崎探偵事務所の前にいる。公安調査庁長官が探偵事務所に出入りしたことが公になればスキャンダルになる。それなら顔バレしていない秘書に依頼を任せればいい。この考えは正解であろうがこれが正しい秘書の使い方なのだろうか。
そんなことを考えつつアリスは探偵事務所の呼び鈴を鳴らす。すると中からスキンヘッドでサングラスを掛けた男が出て来た。
「ようこそ。高崎探偵事務所へ。所長の高崎一です。依頼は何でしょうか。まさか浮気調査ですか」
「いいえ。私はこういう者です」
アリスは名刺を渡す。高崎は名刺を読み、顔を青くした。
「公安調査庁長官の秘書が探偵事務所に。まさか大事件の捜査協力ですか」
「いいえ。探偵らしい人探しです」
アリスは二枚の写真をテーブルに並べる。
「この男女を探してください。名前と住所が分かればいいです」
高崎は疑問をぶつける。
「なぜ公安調査庁長官が人探しなんかを依頼するのですか。警察官や公安調査官に任せればいいのではないでしょうか」
アリスはいきさつを説明した。この説明で高崎は納得した。
「まだ事件には発展していないし私の隣人であるこの女性を合わせた三人がテロをしようとしている確証もない。確証がないと彼らは動きませんから。だから探偵に依頼したのです」
「分かりました。ではこの紙に連絡先と名前を書いてください」
必要事項を書いた時アリスの携帯が鳴った。相手は浅野公安調査庁長官だ。




