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思惑  作者: 山本正純
第三章 愛情
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運命 後編

 「新庄さん」

 甲斐遼太郎と坂井好美は新庄治の顔を見る。

「それは黒幕が俺だということか」

「黒幕は存在しないかもしれません。二時間前東京で高見明日奈さんを逮捕されました。取調室で高見明日奈さんが『黒幕が存在している』と証言をするかもしれない」

 

 新庄は机を叩く。

「まさかここまで掴んでいたとは思っていませんでした。警察官として罪を認めます」

「罪を認めますか」

 

 それから新庄は供述を始めた。

「今年の七月十九日スサノオホテルで相生すみれと見覚えのない男がキスをしていたことは話しましたよね。それからその男が誰なのかを調べました」


 木原は新庄に確認をする。

「その過程で三池佐清さんに出会った」

「彼に辿りついた俺は三池さんを殺害しようと思った。あんな老いぼれと妻が付き合う事が許せなかったからね。彼を殺しに行こうと思い上京した前日彼は交通事故で亡くなった。彼を殺害するために用意した拳銃は隅田川に捨てましたよ。彼が死ねば殺人のための拳銃は必要ない。無駄なものだから」


 木原はこの事実を聞き驚いた。

「それが事実なら僕の考えていた真相が間違っているようです。僕は三池さん殺害を断念したあなたが島根県に拳銃を持ち帰り高見明日奈さんに渡したと考えていました。それが事実だとしたら流星会の幹部が拳銃を回収して上京した高見明日奈さんに売ったと考えた方が自然です」

神津は木原の話を補足する。

「彼女が所持していた拳銃からあなたの指紋が検出されたぜ」


新庄は肩を落とした。

「あの日隅田川に捨てた拳銃が流星会幹部の手に渡り、それを明日菜さんに売った。運命としか言えない」


 木原は推理を続ける。

「そこであなたは生き別れの息子と名乗り彼の遺品であるパソコンを引き取った。三池佐清さんとしてあのチャットに参加するためにね」

「そこでこの計画を知った俺はチャット参加者にNPO法人ハートクイーンを紹介して保険金はここに寄付しようと提案しました。ただそれだけです。これのどこが犯罪なのでしょう。拳銃の流出も不可抗力。犯罪とは言えません」

 木原は新庄の肩を持つ。

「確かにそれは犯罪ではないでしょう。しかしあなたは警察官としてこの計画を未然に防がなかった。計画を潰す機会はいくらでもあったはず。それなのにあなたは計画を黙認した。あなたは警察官失格ですよ」


 新庄は泣き崩れた。そして何度も同じ言葉を呟く。

「警察官として間違っていた」

 その様子を見ながら木原と神津は会議室を出て行く。

「後は島根県警の仕事です。我々はこの事件には一切口出ししません」


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