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思惑  作者: 山本正純
第三章 愛情
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雷雨 2

 坂井はナイフを落とした。

「警視庁の刑事がこの事件を捜査していると知った時愕然としました。警視庁の刑事は優秀だというイメージがありましたから。あなたたちがルポライターだったら完全犯罪だったのに」


 新庄は坂井の話に割って入る。

「坂井さん。忘れましたか。完全犯罪だという言葉を使えば犯罪になってしまう。これは人助けではありませんか」


 犯罪を人助けという言葉で片付けた新庄に神津は怒った。

「ふざけるな。何が人助けだ。お前は警察官だろう。どんな理由でも犯罪は正当化してはいけない」

神津の怒りが爆発する中木原は坂井に確認をする。

「あなたたちの目的は高見七海さんの保護ですよね。なぜ彼女を保護しなければならなかったのでしょう」

 坂井は泣きながら供述を始める。

「それは隣の新庄さんに聞いて。この誘拐事件の主犯は彼だから。それと早くした方がいいよ。すぐに警察が来るから」

「そうですね」

 新庄は拳銃を取り出し、銃口を坂井の方に向ける。

「やめろ」

神津の言葉に新庄は耳を貸さない。木原は冷静に真相を話し続ける。


「やっぱり持っていましたか。所轄署から拳銃が盗まれたと聞いた時に確信しました。あなたが坂井さんをここで殺すつもりだとね」


 木原の推理に新庄は頷く。

「許せなかった。明日奈さんが自殺したらあっさりと要介護認定を受けることを認めた高見家とそれをそそのかした坂井が」

「でもそれが民生委員の仕事でしょう」


 新庄は頷く。

「そうだ。だが許せない。寝る間を惜しんで介護をしていた明日奈さんの自殺を台無しにしたお前らが。もう少し早ければ彼女は自殺することはなかった。彼女が自殺したのはお前らの責任だ」

 

 神津はこの供述を聞き怒鳴る。

「ふざけるな。お前は自殺を止められなかった責任を逃避しただけだ」

木原は神津の言葉を補足する。

「あなたは警察官失格です。警察官の使う拳銃は殺人をするための凶器じゃない」

「だから何だ。警察官失格なんて言葉に意味はない。この事件が解決したら辞職するつもりだからな」


 木原は新庄に確認する。

「我々は彼女が自殺したあの時あなたはここにいたと思っています」

 雨がポツポツと降り注ぐ。

「そうだ。九月二十三日。俺はこの日御碕にやってきた。凶悪犯が逃げ込んだというタレこみは高見明日奈さんが俺に会うための口実だということはすぐに分かった。彼女を見つけた時彼女はこの崖に飛び込んだ。周りに不審な人がいなかったから自殺だと分かった。彼女が自殺した動機は高見四郎のせいだと確信した。介護を妻に押し付けたあの悪魔のせいだと」

 

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