出世
再び見た東京の空は赤かった。もう夕暮れ時だ。木原と神津は荷物をコインロッカーに預けて警視庁に戻る。その先で喜田は二人を待っていた。
「おかえりなさい。千間刑事部長が御呼びです」
二人は喜田参事官に着いていく。刑事部長室で千間刑事部長が待っているのだ。
「いいか。あの事件は島根県警の仕事だ。これ以上島根県警の事件に首を突っ込むな」
一昨日と言っていることが違うと二人は思った。そこに合田が遅れて来た。
「千間刑事部長。浅野公安調査庁長官から依頼された特命捜査はどうなりますか」
「中止だろう。公安調査庁からの依頼なんて認めない」
五分間説教は続いた。刑事部長室から解放されると喜田参事官を含めた四人は捜査一課に戻る。歩きながら喜田は慰める。
「千間刑事部長は都道府県警察が互いに調和するような警察組織を創りたいそうです。理想を実現するためには各都道府県とのトラブルの種を無くす必要があります。そして最終的には警察庁に異動するというのが彼の描く出世コースです。理想を邪魔する連中は誰であっても許さないでしょう」
「全ては出世のためか」
神津がそう呟くと木原はあることを思い出した。
「そうでした。合田警部。私たちが調べた事実は後ほど報告します」
木原は北条の元に走って行った。
千間刑事部長は手のひらを返しました。




