目的
「その可能性はあるな。それと気になることがある」
神津はボイスレコーダーを再生する。
「これは平山小五郎の声か」
四郎は頷く。木原の脳裏に疑問が浮かぶ。
「だとしたら不自然です。誘拐犯は変声器を使って身元が特定できないようにする。しかし誘拐犯は変声器を使用しなかった。なぜでしょう」
木原が考え込んでいる頃神津は四郎に聞き返す。
「所でUSBメモリーはどこにある」
「たしか引き出しの中に」
四郎は箪笥の引き出しを開ける。そこにはUSBメモリーが入っていた。
「この勾玉のキーホルダー。間違いない。誘拐犯が欲しいのはこれだ」
木原はパソコンを立ち上げるよう忍に指示を出す。パソコンが起動すると四郎はUSBメモリーを接続した。ファイルを開いてみたがパスワードが設定してあるようで閲覧は不可能だった。
「USBメモリーに誘拐犯を特定する手がかりがあると思ったのにパスワードが設定されているとは」
神津の言葉に木原は腑に落ちないような表情をする。
「USBメモリーが欲しいなら空き巣に入ればいい。態々誘拐事件までする必要はありません。誘拐犯が身近な人間ならいくらでも盗む機会はあったはずですよね」
「なぜ誘拐犯はそこまでしてUSBメモリーが欲しいのか。そもそも誘拐犯の目的が分からない。最初の電話の時挑戦的なセリフを言ったのも気になる。この誘拐事件何か裏がある」




