客人
木原は三人の男女の写真を見せる。
「この三人が明日奈さんと会っている所を見たことがありますか」
「ないな。この連中が明日奈を殺したということかい」
「いいえ。少なくともこの男と日野夏美さんは三か月前この家を訪ねたそうです」
「それでも知らないな。昼間に訪問したなら気が付きませんよ。昼間は仕事だからな。知っているのはお袋くらいだけど、認知症だから訪問客なんて覚えていないだろうよ」
木原はさらに質問する。
「では先ほど訪問した甲斐さんは何をしに来たのでしょう」
「あの人は指定市町村事務受託法人の甲斐遼太郎さん。お袋の認定調査に来た人だ」
「認定調査とは」
「要介護認定だ。最近になって坂井さんの提案に乗る気になって。グループホームのサービスを利用するためには要介護認定というのを受けないといけないから認定調査を依頼した」
「限界だったということでしょうか」
「明日奈が自殺したのは一人で介護を頑張ろうと思ったからだろうと考えたからな」
突然ドアが開き腰の曲がったおばあさんがリビングに現れた。
「四郎。お客さんかね」
「はい。そうです」
それを聞きやよいは笑顔になった。
「今日も客人が多い。お茶を淹れてやろう」
忍は慌てやよいの右手を握る。
「お母さん。ここは私が淹れますからゆっくり休んでください。甲斐さんにたくさん質問されて疲れたでしょう」
やよいは寝室へ戻っていった。その後ろ姿を見て木原と神津はひそひそ話を始めた。
「もしかしたら訪れたのかもしれないな」
「三か月前にあの三人が」
次回 誘拐犯が動き出す。




