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蕎麦 前編
二人は女性の意見を賛成した。歩きながら神津は女性に質問する。
「あなたの名前は」
「坂井好美。それと実名で書かないでくださいね。ルポライターさん」
坂井は二人をルポライターだと思った。それくらいの勘違いくらいはいいだろうと判断して二人は訂正しなかった。
二人は坂井好美と蕎麦を食べた。蕎麦は凄く美味しかった。木原が美味しいですねと感想を述べると坂井は大粒の涙をこぼす。
「高見明日奈さんとこの蕎麦屋で相談に乗りました。解決策を提案してあの問題から彼女を解放したと思っていたのに、彼女は自殺してしまった。何も出来なかった」
彼女の嘆く声を聞き二人は浅野公安調査庁長官のことを思い出す。彼女も何も出来なかった。何か出来たかもしれないが時間がそれを許さなかった。坂井も同じではないだろうか。時間があれば自殺を阻止できたかもしれないという後悔。
だが時間のせいにしてはいけないと思う。自殺をすれば周りにいる人たちに後悔を与えることになる。その後悔は暗い心の闇となるだろう。




