紛失
二人が日御岬に向かうことを決めた丁度その時警視庁でデスクワークをしていた合田の携帯が鳴った。
「大野か。相生すみれの自宅の家宅捜索はどうなった」
『それが妙です。実は公安調査庁長官秘書の遠藤アリスが見たという写真がないです。窓は外側から壊されていて、室内は荒らされたような形跡がありますが、金目の物は盗られていません』
「つまり遠藤アリスが見た写真には犯人にとって不都合なことが隠されている。だから犯人は写真を盗んだ」
『それは分かりやすいと思います。まるであの写真には何か秘密がありますよとアピールしているようです。あの写真をピンポイントで狙ったとしたら空き巣のようなことはしませんよ。私が犯人だったら放火します。だって放火すれば証拠が全て燃えるでしょう』
合田は違和感を覚えた。受話器からノイズの音が聞こえることだ。そして合田はある指示を出す。
「その家は何者かに盗聴されている。これは可能性の話だ。盗聴器は昨日の晩の時点で仕掛けられていたとしたら、遠藤アリスの命が危ない」
合田の推理に大野は適切な指示を出した。
『それならここからはメールにしましょう』
消えた写真。あの写真に謎解きの手掛かりがあるのか。




