流罪
流罪 島流しのこと
相生すみれが殺されたことを知ったアリスは浅野と公安調査庁長官室で話す。
「本当にこれでよかったのでしょうか」
「後は我々が調べた証拠を警察に提出してこの事件を集団自殺事件として処理すればいいだけ。そしてこの事件の裏にあった真実を公表すれば彼らの復讐は完成するでしょう」
「これで連続殺人事件だった場合は大失態ですよ」
浅野はボールペンを回しながら答える。
「その場合は公安調査庁の汚点になるのよ。警察上層部は嫌でも集団自殺事件で処理するでしょうね。彼らだって対立はしたくないでしょう。でもそれを好ましく思わない警察官たちもいるのよね」
アリスは首を傾げる。
「あなたのお兄さんを逮捕した警視庁捜査一課三係よ。彼らなら真実を追うでしょうね。集団自殺事件という一つの可能性でしかない真相に彼らは納得しないはずよ」
二人は考え込む。そして一分後アリスは一つの考えを思いついた。
「その警視庁捜査一課三係を利用すればいいのではないですか。それであの真相が現実になるような証拠を彼らに探させる」
「それならあの二人を島根に飛ばしましょうか。この事件の発端は島根県にあるのだから」
遠藤アリスはつぶやいた。
「まさかこういう形で島流しが成立するとは思いませんでしたよ。本当は隠岐がよかったが」
アリスは悔しんだ。島根県は島流しが多かった。出雲国や石見国は少ないが、隠岐国はかなりの人物が島流しで訪れた。代表は後醍醐天皇だろう。兄を逮捕した刑事を隠岐に島流ししたかったのだろう。
「相変わらずの歴史好きね。まあこれは島流しよね。戦力を分散させることが目的だから」
遠藤アリスは歴女です。
時間軸は第二部 共通 に繋がります。




