最終戦争開始
金曜日、俺は全ての準備を終わらせていた。
最終兵器も設置完了。
プレイヤもかなり沢山集める事ができたし、参加できないプレイヤの艦船や兵器も、全て使わせてもらえるよう配置した。
作戦も、いくつかある。
最後の手段といわれる策も準備した。
物資は、最前線へほとんど移動させた。
移動要塞リングに。
ちなみにリングは、マップ間移動可能な拠点だ。
移動速度は遅いが、拠点を移動できるのはおいしい。
まあ、全体マップで直ぐに見つかってしまうから、秘密基地ってわけにはいかないけれど。
サイファ「真、悪いな。残ってもらう事になって」
実は作戦上、真には本拠地待機してもらう事になっていた。
真でれら「まあ、勝てるならそれもいいでしょ」
サイファ「だな。負ければ真も忙しくなるだろうし(笑)」
真でれら「出番が無いことを祈るよ」
サイファ「もしもの時は、携帯で起こすかもしれんから、携帯は離すなよ」
真でれら「ああ、でもこの会戦、金曜の夜からって事は、日曜までやる事を想定してるよな」
サイファ「だな。完璧に終わらせたいんでしょ」
真でれら「お前は大丈夫なのか?」
サイファ「さっきまで寝てたよ。10時間ほど。終わるまで気合いだぜ」
真でれら「飯は?」
サイファ「買い込んである。万全だよ。全て」
そうだ。
全て万全にした。
なんと言っても10億だからな。
寝るなんてできない。
48時間耐久だ。
そしてその戦いは、もうまもなくだ。
時計は10時まで後2分のところ。
俺はもう一度、各PCを確認。
そして、チェックが終わると同時に、10時になった。
まあ、10時になったからと言って、いきなり動きが有るわけではない。
静かだ。
俺はもう一度皆に確認を入れる。
サイファ「基本は守りだ。敵が来てもとにかく突破させないこと。少しずつ下がって、前線を下げてもいい。とにかく隙があるまで守る」
俺の言葉に、皆各々の返事を返してくる。
日頃は見かけない仲間達の名前が見えた。
ちなみに今話してるのは、ゲーム内の通信を使ってる。
通信用チャットを皆に公開しようかなやんだが、おそらく大勢力に寝返る人がいるだろうと考えて、それはしなかった。
達也「ちょっと面倒だけど、リスクは回避だよな」
俺は自身に納得させ、ジークの動きをただただ待った。
10分ほどしてからか。
紫苑さんから通信が入った。
俺は回線を開く。
紫苑「激突ぅ!」
どうやら先に紫苑軍領に侵攻したようだ。
サイファ「こっちはまだ」
俺は簡単にそう返した。
とたんに、前線からの通信が入った。
これはチャットの方だ。
グリード「きたきたー!」
俺は紫苑さんに
サイファ「こっちも来た!ではまた!」
と通信を送って、回線を切った。
ジークはどうやら両方同時に攻撃してきたようだ。
戦力が分散される分不利なはずだが、それでもやるって事は、何か策があるのだろう。
俺はとにかく慎重に状況を見ていた。
とりあえず今は後方で補給活動をしているだけだから、自身は楽だが、最前線のグリードやキラ、カニさんやモモさんは苦労しているだろう。
状況は逐一入ってきてはいるが、はっきりとはわからない。
LOVEキラ「じれったいな。本気で来てない気がするな」
グリード「確かに、二手に分かれて両方はきついもんな」
今日子「とりあえず、こっちは押さえれば良いと思ってるのかも」
状況が自分で見れないのはやはり辛い。
俺はキラに状況を通信で送ってもらう事にする。
サイファ「キラ、ちょっと状況送って」
LOVEキラ「おけ」
俺は自分の目で確認する。
確かに、破壊を目的に攻撃しているようには感じなかった。
俺は再び、紫苑さんへの通信を試みた。
直ぐに回線を開いてくれた。
サイファ「ジークは本気で来てる?」
紫苑「旗艦おる」
俺は驚いた。
旗艦がおるって、本艦隊が出てるのか。
それは本気を表す。
サイファ「だったら、こっちは攻勢だ!」
紫苑「(^0^)」
俺は作戦を変更する事にした。
こっちに来てる艦隊が少ないなら、一気にまずはそれをたたく。
大で小をたたくのは基本だ。
サイファ「ココは俺が受け持つから、全艦でジーク軍艦隊をたたけ」
LOVEキラ「だな。削れる時に削るぜ」
グリード「でも油断すんなよ。少なくてもジーク軍だからな」
今日子「拠点はどうする?」
サイファ「物資の補給拠点っぽい所だけは落とそう。惑星なら今日子さんよろしく」
今日子「はいなw」
俺と最低限の守りをするための艦隊以外は、全てジーク軍への本格的攻撃を開始した。
俺達の攻撃は、直ぐに目の前のジーク軍を蹴散らすと、敵領域に侵攻してゆく。
かなり順調だ。
敵艦隊を次々と破壊してゆく。
でも・・・
不安が襲ってきた。
なんだろう。
あまり勝ちすぎると、おかしいと思うのは、当然だ。
なんせこんな時には今まで何かが有ったのだ。
そしてやはりというか、その動きが見えた。
LOVEキラ「今機影が右の方に見えなかった?」
今日子「何かいたよね」
グリード「追うか?」
スピードスター「早すぎる♪」
スーパーモモ「今の艦隊、すっごい早かったよ。追いつけないんじゃ?」
どうやら、こちらに向かって、超高速の艦隊が進んできてるようだった。
サイファ「数は?大したことなければ、俺が受け持つよ。」
LOVEキラ「どうだった?」
グリード「わからん」
どっちにしてももたもたしていられない。
戦況は、瞬時の判断で変わるのだ。
サイファ「いや、俺が受け持つ。こっちの領内だし、最悪逃げ回るから(笑)」
LOVEキラ「了解」
キラの返事の直後、正面に先ほどの艦隊と思われる機影が見えた。
そして直ぐ、全てがこちらに見えるところまで近づいてくる。
艦隊は、七転八倒艦隊だった。
その規模は大きい。
達也「おいおい、大艦隊じゃねぇかよ」
俺は右まわりで敵から離れようとする。
接近が速く回避はできそうになかった。
達也「ココで使わないとダメなのかよ」
俺は鳳凰を発動して突破を計った。
相手はあっさりと突破を許してくれた。
なんだ?
敵艦船を調べる。
あの後ろにも攻撃できる艦船ではない。
どうしたんだ?
とりあえず俺は敵艦隊を突破し、逃げた。
敵艦隊は、左に旋回し、こちらの後ろを追ってきた。
もしかして・・・
敵はこちらの後ろにとりつき、ずっと追いかけるつもりだ。
スピードは向こうが上だった。
スピード特化の艦隊ようだ。
数で負けている以上、ここから戦闘にはいけない。
とにかく逃げた。
自軍領域だからなんとか逃げ続けた。
キラ達からチャットによる通信が入ってきてはいたが、こたえる余裕がない。
とりあえず、キラの方は順調そうだから、俺は一言だけ返した。
サイファ「逃げまくり。後で」
とりあえずわかってくれたようで、しばらくこちらに返事を求める通信はなかった。
しかしきつい。
とにかくおにごっこ状態。
小回りのきく子供が、遊びなれた公園で大人とおにごっこして逃げている感じだ。
でも、逃げ続ければ、おそらく燃費はこちらが上だ。
そのうち向こうは撤退せざるを得ないだろう。
俺は必死に逃げ続けた。
そんなおにごっこの最中、モニタの上に表示が有った。
「紫苑軍壊滅」
俺は一瞬信じられなかった。