薔薇は散る
紫苑軍との同盟期間であった3ヶ月が過ぎた。
こちらとしては再び同盟を継続したかったが、同盟は拒否された。
ただ、口約束ではあるが、できるだけ敵対するのはジーク軍であることで同意した。
全体マップは、既に4軍のみになっていた。
正確には、拠点1つだけの軍が2つと、在野の放浪軍が沢山存在するのだろうが、全体マップでは確認できない。
マップの45%はジーク軍、35%は紫苑軍。15%が我が軍で、5%がダイユウサク軍といったところだ。
ダイユウサク軍は、マップの隅にその領域を持っていて、今までに戦場で艦隊を見たことがない軍だ。
何故この軍がここまで残ってきたのか、俺には不思議だったが、きっと守りが堅いのだろう。
それよりも、2大勢力と対抗する策が必要だ。
だがそれはまだ無いから、とりあえず時間が必要といったところか。
しかし放っておいたら、2大軍はどんどん国力を充実させ、物資や金が増え、ますます手に負えなくなる。
我が軍は黙っているわけにはいかなかったから、常にジーク軍と小競り合いを繰り返していた。
だが、それはなかなか良い戦略だった。
何故ならこちらの秘密兵器だったアレ、「鳳凰の川上り」と名付けたアレが、かなり敵の戦力を削ってくれる。
領域は変わらなかったが、戦力差が開く事は無く、むしろ戦力は徐々に詰まってきていた。
今日も俺はジーク領域内をかきまわしていた。
サイファ「チマチマやってるけど、これ効果的だよね」
真でれら「いいね。これを繰り返せば、もしかしたら我が軍の逆転があるかもな」
LOVEキラ「再び夢みれるね」
拠点を攻撃せず、素通りして今日も撤退だ。
俺達は撤退の準備と、鳳凰発動準備をした。
その時、左から中規模の艦隊が現れた。
サイファ「今日は逃がさないってか?」
真でれら「結構な規模だな」
LOVEキラ「おいおい、ジークの本艦隊だぞ」
薔薇の貴公子「マジだ。やられにきた?」
現れた艦隊は、ジーク本人の艦隊。
俺は何かいやな感じがした。
真でれら「問題ないでしょ。鳳凰で突破できないわけないよ」
俺は嫌な感じがしたが、真の言葉で自信を取り戻した。
サイファ「おけ。俺が突破口を開くから、後ろついてきて」
LOVEキラ「うい」
真でれら「おけ!」
薔薇の貴公子「らじゃ」
俺はまっすぐジーク艦隊に向かった。
後にキラ、真、薔薇さんが続いた。
鳳凰を発動した。
我が艦隊は、ジーク艦隊真ん中に食い込んでゆく。
LOVEキラ「うは!いいね」
我が艦隊が敵を分断し、キラが追い打ちをかける。
なかなか良い感じだ。
こっちの5,6倍ある艦隊に対して、出来すぎな感じ。
改めてうまくいくと、また逆に不安がでてきた。
何故ジーク本人がでてきたんだ?
鳳凰の強さは、もうわかってるはずだけど。
腑に落ちないまま、サイファ艦隊はジーク艦隊を抜けた。
その時だった。
少しずつジーク艦隊からの攻撃が強くなる。
サイファ「え?」
俺は鳳凰を発動したままにした。
LOVEキラ「なんでこれだけの攻撃できる?」
普通攻撃は、後方へ行う事が困難だ。
それは後ろにエンジンがあり、武装が前方による為だ。
それなのに、後方に行った途端、攻撃が一気に強くなった。
俺は敵艦船の形状を慌ててモニタに映した。
達也「なんじゃこりゃ!」
俺は慌てて指示を出す。
サイファ「守り固めて全速前進!」
俺の指示に、返事は無かったが皆従う。
それにしても。
敵艦船の形状は、今までに見たことが無い形状だった。
エンジンが前方についており、後方に武装がしてある。
もちろん前方にもそれなりに有ったが、明らかに後方特化。
達也「新兵器開発してるのは、俺達だけじゃないってか」
きっとジークが開発した、新兵器。
後ろへの強力な攻撃を可能とするなんて、おそらくは鳳凰よりも使用条件は厳しいだろう。
鳳凰なんて、せいぜい5分の無敵状態。それが終われば雑魚艦隊になってしまうのだ。
対してジークのこの兵器。
後ろをとる事で、小が大を食う事が可能なのに、それができなくなれば、数がものをいう。
達也「こんなの作成できるようにするなよな」
俺は少しクライアントに腹が立った。
しかし、それでもそんな事は言っていられない。
少なくともバックよりは前進の方が圧倒的に早いのだ。
とりあえず、薔薇さんまでがジーク艦隊を抜けた。
ダメージはでかかったが、なんとか突破できた。
俺は息を吐いた。
だが、安心するのはまだ早かった。
ジーク艦隊の半分が、薔薇さんの背後にとりついてきた。
達也「なんだよ!」
俺は改めてモニタに映し出す。
映し出された艦船は、後ろと前が逆になったような艦船。
達也「これもかよ」
俺はとにかく逃げなければと思った。
サイファ「とにかくみんな全速前進!」
サイファ「俺がギリギリまで押さえる」
みんな余裕がないようで、返事はなかった。
一気に薔薇さんの艦隊が削られた。
達也「あ」
後方への必殺技。
あの10.2度の奇跡。
この技は結局調整される事はなかった。
何故なら陣形調整だけで、簡単に防ぐ事ができたから。
今では皆知っている事。
でも、後ろからの、後ろへの攻撃では想定しているわけもなかった。
薔薇さんの旗艦が破壊された。