過去「4」
伯爵家の車に送ってもらって寮に帰った。
降り立つ前に運転手がアスランの姿に気付く。
エヴァは首を伸ばして彼を確認すると到着するなり慌てて降りた。
(本物だわ。)
寮の前にアスランがいたことに驚いていた。
「エヴァ、グレッグ・ノバクと付き合ってるって言うのは本当か?」
彼の勢いに退く。
「アスランには関係ないでしょ?・・・交際を申し込まれてはいるけど。」
彼は怒りを込めた目で彼女を見ていた。
「俺は…。」
「もうすぐリサとアメリカでしょ?」
何故と言う顔を見せた彼にエヴァは苦笑する。
「リサ?彼女は関係ない、」
「嘘なんか言わなくていいの。彼女から何もかも聞いているから。とにかく、私が誰とどうなろうとアスランには関係ないわ。」
アスランの傷付いたような顔を見て彼女は硬直した。
彼は彼女の腕を掴み言った。
「俺は君のことが好きなんだ。今までだってこれからだって、俺は!」
アスランはエヴァを抱きしめた。
「嘘・・・。」
「嘘じゃない。」
あの時抱きしめられて、彼女の思考は停止した。
彼に引っ張られるように向かった先は、彼が仲間達とシェアしているマンションだった。
「おかえり・・・って、誰?」
戸惑うエヴァも彼らも無視してアスランは部屋に入っていく。
「あ、あのお友達が・・・、一緒に居たのは彼女かしら?」
悪くなった雰囲気を良くしようと話をする彼女にアスランは噛み付くようなキスをした。
彼の行動が分からなかった。
けれど、彼が何回も好きだ、愛してると言ってくれたことに心が騒いだ。
初めて結ばれた日から2回目も相手が彼だったことに正直エヴァは驚いていた。
リサはどうするの?
信じていいの?
彼女を抱きしめるように眠る彼の力が緩んだ隙をついてその腕の中から逃れた。
落ちた服を拾い身につける。
恐る恐るドアを開けるとソコには数人の男達。
慌ててドアを閉めようとするエヴァに彼らの1人が声をかけた。
「ああ、隠れなくて良いよ。何、帰るの?」
またゆっくりとドアを開ける。
「アスランは、ノックアウト?」
「そりゃ、そうだろ徹夜に次ぐ徹夜で、止めが夫人の言葉。そりゃキれるって。」
どははっと笑う、そんな間を抜けて帰ろうとするエヴァ。
「俺、ニコラス。よろしくね、エヴァちゃん。」
「私は、ニコラスの彼女のスーよ。」
名前を知られててギョッとする。
「んな、驚かなくても・・・。ああ、おれトーマス。」
「アスランの姫に会えて嬉しいよ、でもさ、帰らない方がいいと思うけど・・・。」
エヴァは頭を振った。
「もうすぐ、留学なのでしょう?準備に忙しいとリサが言ってました。か、彼女が来てしまったら、大変だから、帰ります。」
皆の表情が戸惑っていることなど今の彼女には分からなかった。
引き止める声がしたが、エヴァは足早に出て行く。
「おい、アスランは?」
「だめだ、死んでる。」
皆が一様にため息を吐いた。
「・・・リサのヤツ・・・何かしつこくね?エヴァちゃんに何か余計なことしてんじゃないのか?」
「トーマス、お前さ、幼馴染だろ?何とかしろよ。」
「俺はもう、知らん。あいつは手に負えん。俺、彼女できそうだしあいつに関わりたくない。」
漏れた本音。
「っていうか、あと3日で出発なのに、アスランとエヴァちゃんは大丈夫なのか?」
心配する親友達の声はアスランにも、エヴァにも聞こえてなかった。