現在「14」
目の前に居るのは銀髪の男二人。
一人は硬直していて、身動きも出来ず、目も見開いたままだ。
そして朗らかに笑っている夫人。
この部屋全員が眩しいほどの容姿をしていた。
ルークとアーサーはアスランと言う男を目の前にして、改めて自分達が彼に似ているのだと分かってため息を吐いた。
「エヴァの・・・子供。」
やっと漏らした言葉。
双子はその言葉にカチンときた。
「そうです。そして、ボク達は貴方の遺伝子も持っているはずだ。」
「もし、疑うなら、色んな検査をしてみたらいい。」
睨みつけられてアスランは真っ青な顔になっていた。
「突然現れた息子に驚いているの?」
「そりゃ驚くよね、お父さんは、ボク達を殺したと、もうこの世には居ないはずだって思っていたんでしょ?」
迎えに座る3人の目がギョッとした。
「ボク達知ってるんだ。お父さんが、ボク達を邪魔だって思ってたこと。」
「お腹に居たボク達を殺すためのお金を母さんに渡していたこと。」
衝撃的な子供の言葉。
祖父母は険しい顔で息子を睨んだ。
「ア、アスラン!この子達の言ったことの説明をしろ!」
「そうよ!私達に内緒で孫の命を奪おうとしたなんてっ!嘘よね?」
揺さぶられる体。
アスランは我に返った。
「君達は、俺の子供?エヴァと田舎の男との間に生まれた子供じゃない?」
コレほどまで瓜二つな子供を前にアスランは必死に考えをまとめようとしていた。
「どういうこと!」
アスランはリサからエヴァの妊娠、そして結婚を聞いていた。
彼女は自分以外の男と結婚して妊娠したのだと。
だから、少しでも彼女の助けになればと祝い金を渡した。
「幸せになってくれってメッセージも託した。」
「また、リサ!」
夫人は夫を睨んだ。
「待て、待て。俺を睨むな。アスラン。お前・・・エヴァに対して、精一杯のことをしたのか?かっこ悪くても彼女を追いかけて彼女に逢いに行こうとは思わなかったのか?」
父親の言葉にアスランは言葉もない。
逢いに行こうと思えば逢いに行くことはできた。
それをしなかった自分。
彼女の気持ちを直に確かめなかったのも自分だ。
「母さんは、リサって人を心から信頼してる。それは、苛められて苦しかった時に唯一手を差し伸べてくれた人だから。」
「でもボク達は実際の彼女を見て思った。彼女は信頼できないって。」
双子の言い切り。
アスランは頭を抱えていた。
「どういうことだ?何故・・・何故・・・。」
双子は母親がアスランに連絡を試みたが、取り次いでも貰えなかったことを語った。
「何回かチャレンジして、母さんは諦めた。」
「父さんは、どれだけ母さんにチャレンジしたの?」
ショックが強すぎたのか、アスランは言葉も出なかった。
「・・・アスラン?」
尋ねる母親。
彼はゆっくりと頭を上げた。
「リサを呼ぶ。できれば、その場にエヴァも居て欲しい。来てくれるだろうか。」
双子を見る真剣な眼。
その青さに双子はドキッとした。
「ルークとアーサーと言ったね。俺は君達のことを自分の子供だとは思って居なかった。もし、自分の子供だと分かっていたら責任は取る。金を渡して、子供を堕胎しろなんて、そんなこと脅されたってしない。これだけは信じてくれ。」
立ち上がるアスラン。
その体から放たれるオーラに子供達は息を飲んだ。
「やっぱり、リサって人が原因なの?」
恐る恐る聞いてみたルークにアスランは言った。
「彼女は原因の一つに過ぎない。根本的に悪いのは俺だ。君達にもすまないと思っている。・・・心から。」
彼の大きな手が双子の頭を撫でる。
この手を母親は待っている。
全ての清算をする時がやって来る。
そんな予感がしていた。
都合上小切手は現金に・・・。