現在「7」
3人は並んでニコラスの前に立った。
「ボクの名前は、アーサー、こっちは、双子のルーク。そして、友達のジャクソン。」
見上げる6つの目。
青い瞳はニコラスに何かを懇願するような目で、琥珀色の瞳の少年は双子を擁護するかのようにキッとニコラスを見ていた。
「ボク達の苗字は、アグウッド。」
その名前にニコラスは息を飲む。
「母さんは、エヴァンローズ・アグウッド。」
ニコラスは後に凭れた。
大学時代の彼女の姿が思い出された。
儚いような笑顔を見せるアスランの愛しの君だ。
「母さんを裏切って、捨てた男のことを教えてよ。おじさん。」
双子の察するにアーサーから齎された言葉にニコラスはギョッとした。
「えっ?」
「エヴァ小母さんは、とてもいい人だ。その人を苦しめた男にアーサーやルークは復讐したいって言ってる。ボクだって、その男を許せないんだ。おじさん、アスラン・アイザックって奴のこと、全部教えてよ。」
小学生低学年と思われる彼等の言葉とは思えない。
ニコラスは言葉を失った。
「おじさんが初恋を未だに大事にしてて、奥さんに内緒にしていることは分かてるよ。」
ぐさりと刺さる棘。
「こんな風に脅したりはしたくないんだけど、あの男は弁護士だし。」
「大人の協力者が必要だったんだ。」
ニコラスは大きく息を吸うと、
「お前さん達は、アスランとエヴァちゃんの子供なのか?」
頷く子供達。
ニコラスは大きくため息を吐く。
「エヴァちゃんは、田舎に帰って結婚して・・で、お前さん達が産まれたんじゃないのか?・・・って、ここまでアスランに似ていて他の男となんて思えないか。」
ぶつぶつと自分を納得させることを言っている彼の袖をひっぱる。
「あのさ、ボク達は、あの男に母さんに対する謝罪と、慰謝料、で養育費を支払ってもらいたいんだ。」
「アイツにリサって、イヤな感じの奥さんがいるのは知っているけどさ、そこら辺しっかり貰っておこうと思ってさ。」
ニコラスの呟きが止まる。
「ちょ、ちょっと待て。誰が奥さんだって?」
3人の子供達は顔を見合す。
そして、ニコラスを見上げた。
「リサって女。アイツが母さんより、ボク達より選んだ女でしょ?」
「くっさい女。化粧も濃くて、いちいち母さんに嫌味言うの。」
口々に出るリサの悪口にニコラスは噴出す。
ニコラスは、アスランが何も言わないなら何も言わずを貫いてきたが、彼が誰を愛しているのは知っていたし、リサが何やら裏でコソコソしているなと思ったが、エヴァの子供達がこれほどまでにアスランを悪だとしている現実にどんな手を使ったのか興味を覚えた。
幼馴染であるトーマスは早くからリサを見限っていたから彼女の行動は知らないだろう。
ジョンはあからさまにリサとは関ろうとしてなかったし、アスランは女心に恐ろしいほど鈍感だったと思う。
そんな中で自分はエヴァとアスランが上手く行くといいなと思っていた。
思っていたが、アスランの話では、彼女の方が自分を見限ったのだと言う話だったはずだ。
「アスランの子供かぁ・・・アイツ、喜ぶだろうなぁ。」
ぼそりと零した言葉に子供達が声をあげる。
「あの男は、ボク達を堕胎させるためにお金を払うような人なんじゃないの?」
堕胎という言葉をこんな年端も行かない子供から聞かされてニコラスはギョッとした。
何かが大きく違っていることは確かだとニコラスは子供達と視線を合わせた。




