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素直な心で  作者: 櫻塚森
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「リサ」1

私が初めてアスラン・アイザックに会ったのは、高校生になった時だった。


イギリスの社交界において、アイザック伯爵ほど有名な貴族は居ない。

弁護士事務所を経営していることとか、有名な学園の理事長を代々している家系であることとか。それ以上に容姿端麗な所とかは有名だった。


私は子爵家の令嬢だ。

父親は不動産関係の仕事をしていて、顧問弁護士にアイザック法律事務所の弁護士を雇っている。

その関係もあって小さい頃から、彼等家族のことは実際に会ったことはなくてもよく聞かされていた。兎に角優秀で容姿も端麗であると。

しかし、噂など信じてなかったし、私はホーク家ではお姫様だった。

自分が一番。だから、どんなに優秀な男でも私以上に素晴らしい人間はいないって母からは言われていた。“なんて可愛らしくて、頭の良い子なのかしら。”そういわれて育った。


お金に困った生活はしたことがなかったし、それなりに頭も良かった。

容姿だって、捨てたもんじゃない。(母のは、欲目にしたとしても。)

中学の時から彼氏だっていたし、私が強請れば年上の彼氏なんかは何でも買ってくれた。

親の前では、深窓の姫君を演じていたから、私を敬い傅く者とのデートやセックスはストレス発散になったけど、年上の彼氏は、私がまだ中学生だと知ると顔を引きつらせて去っていった。

楽しければいいじゃない、どうして年に拘るの?

綺麗だ、可愛いって言ってもてはやしたくせに。

よく妊娠しなかったものだと今なら思う。


幼馴染のトーマスは、私を我侭なお嬢様というけれど、人の上に立つ人間なのだから仕方ないことなのに、生意気だと思う。

けど、彼ってば、きっと私のことが好きなのね、何だかんだ言って世話を焼いてくれる。

っと言っても、元使用人の息子なんだから、言うことを聞くのは当り前。

少々シャクなのは私よりも頭がいいことかしら。

早い内から弁護士になることを目標に上げていて、中学の頃から弁が立ち、生意気にも私に意見してくるようになった。

「また、無駄使いしたんだって?それに男遊び。頭いいくせにサボってると、高校になんか通えないぞ。」

私への小言がお父様を通じて成されていることだって分かっていた。

お父様は直接私に文句が言えないからトーマスに言わせている。

「お父様ね、お母様からまた一言言ってもらわなくっちゃ。」

まぁ、お父様は、お母様の家の婿養子になったこともあって逆らえないの。

お母様はよく言っている。

いくらお金に目が眩んだとは言え、お父様のような成金を婿に迎えるんじゃなかったって、お父様は気品ってものがないんだもの。

社交界に連れて行くのも億劫だって仰ってたわ。

だから、私は私に相応しい人を探すの。


「親父さんはお前を愛しているから、苦言を呈してくれるんだ。」

「苦言?女系家族で立場がないから、自分で言えないのよ。それより、トーマス。あんた、好きな子できたんですって?」

私の言葉に彼が怯む。

だいたい生意気なのよ。元使用人の息子の分際で私より幸せになるつもり?

「彼女に余計なことをするなよ。」

鼻で笑ってしまったわ。

「余計なこと?私はただ、貴方を好きだっていう女の本心を暴いているだけ。家を辞めて、貴方のご両親が経営しているレストランが軌道に乗ってるから、彼女は貴方に近付いているの。それに、トーマスってば、いつも首席でしょ?下心があるのよ。」

苦々しい顔をするトーマス。

「お前と一緒にするな。」

「私と彼女達が一緒?冗談じゃないわ。あの子達と私じゃ育ちも教養も全て違うもの。」

貴族制度の重要性がすっかり意味のない現代においても、女王陛下がいるこの国で私達貴族は特別なの。

「同じ教育を受けられるだけでも神に感謝しなきゃならない人達でしょ?私は何も望まなくても、手に入る地位にいるの。お父様の命令だからって、余計なことを言わないで頂戴。」

弁の立つトーマスも結局は自分の出生にコンプレックスを持ってるから私に意見したくてたまらないのよ。

軽々しく私に声をかけることも本来なら許されない。

それを許しているのは、トーマスが悔しいことに容姿が整っているからに過ぎない。

背が高くて女にモテル男だから。

一緒に居たら、周りの女生徒達は羨ましがるんですもの。


高校に入ってそのトーマスが一緒にいる男に私は目を奪われた。

いい男って言うのは私の側にいるべきだと思ってるから、彼を見逃していたことに腹が立った。

「誰?あれ・・・。」

一緒に居た男の袖を掴み尋ねる。

この男も私にとっては只の飾りだ。

頭がよくて、綺麗な私をお姫様扱いしてくれる成金の息子。

「あー、アイザック伯爵家の長男だよ。あの見た目で、女にモテモテ。でも、硬派でさ、目に入れても痛くない幼馴染の彼女がいるって噂。」

彼女?

そんなの関係ないって思った。

だって、彼を見て思ったもの。

彼こそ私の運命の人だと。



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