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冬の空

作者: 連夜

にゃんすけは死にました。死顔は生きている時そのままの、ちょっと困ったような、額に小さなシワを寄せてお口をへの字に可愛らしく曲げた表情で

冗談みたいに漫画のようにあっけなく、それは残された人に特に深い感傷を与えるいわゆるありふれた死ではなく

おかしいようですが全ての人の心がふと軽くなるような

気持ちの良い喪失であり、にゃんすけがいなくなった世界はまるで晴れた綺麗な冬空に

ただ綺麗な黄色い葉が舞うだけで

女子学生がカフェで一人で過ごす端正な午後があるだけでした。


にゃんすけの死がこんなにも人の心に安寧をもたらすかわりに、時折思いだされる彼女の笑顔は心に悲痛を起こしました。

まるで彼女の不幸が自身の安らぎで、彼女の喜びがこちらの苦しみであるかのように

にゃんすけが思い出で笑うと胸が痛く涙が滲むのです。

それでもその痛みは、爽快な感情の中に生じるほんの少しのアクセントにすぎず

空はさらにますます透き通り美しく、子供の時に見えた雲の裏の宮殿の様子さえ伝わってくるようです。

結局私はにゃんすけを愛していた訳ではなく、煩く思い憎んでさえいたのだ、

そう考えるのはあまりにも簡単で、行ってしまった者に対して不躾のような気がするので

にゃんすけは、キリストみたいにこの世の全ての苦悩を背負って遠くに運び去ってくれたのだと考えます。

いずれこの世界に再び影が落ちる時、天はまたにゃんすけを遣わす事でしょう。


私は香る空気に胸をはずませ、希望に充ちた完璧な明日に歩を踏み出します―

空はどこまでも広がっていたのでした。

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