第6話 七歳半から八歳のデルク
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第6話 七歳半から八歳のデルク
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僕に家庭教師がついた。四三歳の男爵夫人(未亡人)だ。もっと若い人が家庭教師になると思っていたんだけど、それは僕の幻影だったようだ。
家庭教師のレベナック男爵夫人は、夫を五年前の戦争で亡くしたと聞く。今は息子がレベナック男爵家を継いでいるそうだ。
どうでもいいけど、前男爵の奥さんでも、男爵夫人と呼ばれるらしい。前とか元はつけないのだとか。
「レベナック男爵夫人。できました」
「もうできたのですね。……素晴らしいですわ、全部正解です。デルクさんは算術に関してとても優秀で、わたくしが教えるまでもないようですわね」
今僕がやった問題は、小学校レベルの算数だからね。これが高校レベルの数学になると、さすがにそうもいかないよ。
まぁ、算術はいいけど、他のものはそうもいかない。中でも社交の授業は僕にとって厳しいものだ。
優雅な所作、社交マナー、会話の中の意味をくみ取るなど、社交の授業は極めて難しい。こんなことを七歳の子供に教えるなんて、社交界というのは魑魅魍魎の世界だと思うよ、本当に。
ただ、そんな中でダンスだけは僕に合っていたようだ。リズミカルにステップを踏む僕のリズム感は優秀なようだ。
僕は頭から煙を出しながら、社交マナーの授業を終えた。もうクタクタだけど、体力作りの三セット目をやらないと、ポイントがもらえない。
そんなある日、フィーデリア嬢が遊びにきた。
今日はスピカ姉様がいないので、僕と二人っきりのお茶会なんだけど、レベナック男爵夫人が僕たちをガン見している。
「あ、あの、フィーデリア嬢」
「何?」
彼女の声はとてもそっけないものに聞こえる。僕の気のせいだと思いたいよ。
「今日は暖かいね」
季節は冬だけど、今日は日差しがあって暖かく感じる。
「ええ、そうね」
「………」
会話が続かない!
僕には無理だよ!
フィーデリア嬢が帰ると、レベナック男爵夫人からの駄目出しの嵐だった。あれが駄目、これが駄目、もっと女性のことを考えて話を盛り上げるとか、僕には絶対に無理なことばかり言うんだ。
それに相手が可愛いだけじゃなく、転生者だと思うと緊張するんだよ。
そんな感じで僕の七歳後半は過ぎていった。
八歳になったぼくだけど、相変わらずUレアは出てこない。
クエストは毎日欠かさずポイントを稼いでいる。おかげで年間三六〇ガチャポイントが追加で手に入っている。
勉強のほうは魔法の訓練が始まった。これもレベナック男爵夫人が教えてくれる。
「アーヌ デ ハイネック ザバ トレテリナ ウンドロス」
水球を飛ばすと、的に当たった。ただし、直径一〇センチメートルほどの丸太は破壊できず、傷をつけただけだ。
あまり威力はないが、人間なら打撲程度は与えられるか?
まあ、水属性はあまり攻撃に向かない属性らしいし、こんなものだ。
「デルクさんの魔法は可もなく不可もなくですね」
お、おぅぃぇ……。なんとも微妙な判定ですよ。いいんだ、僕は平穏無事な人生を送るから、荒事は他の方に任せます。
「上手くいけば宮廷魔法使いになれるかもしれませんが、鍛錬を怠らないことです」
今は宮廷魔法使いになれないギリギリのところってことですね。
宮廷魔法使いのことは、僕なりに調べた。この世界に魔法があるのは言うまでもないが、一応魔物もいる。魔物は口から火を吐いたり、翼もないのに飛べたり、アンデットのようなもののことをいう。
そういった魔物を討伐したり、戦争に出たりするのが宮廷魔法使いだ。もちろん、魔法の研究もしているけど、僕は戦いに向いてないと思うので、宮廷魔法使いにはならないと決めた。
そんなわけで、文官を目指します!
安全で安定した収入があれば、何も言うことはないのである!
魔法はそこそこ、社交もそこそこ、他の座学をがんばった。元々本を読むのは好きだし、勉強は苦にならない。
コミュニケーション能力に乏しい僕にとって、社交はハイレベル過ぎるから、平社員でいいのです。
そんなこんなで八歳は毎日が忙しくて、過ぎていくのが早く感じた。
そして八歳の三カ月目でやっと二回目のUレアが出た!
二回目のUレアの派手なエフェクトを見た時は、思わず涙して跪き、神に祈りを捧げたのを覚えているよ。
UR:エリクサー×一
どんな病気でも怪我でも毒でも呪いでも完全に癒すことができる伝説の薬です!
これは僕の御守りにすると決めた。
エリクサーの存在は貴族なら誰もが知っているけど、それを作ることは誰にもできない。いや、過去に大賢者と言われた人物が作ったらしいけど、その人以外に作った実績はないらしい。
そんな伝説の薬があると思うと、安心できる。即死じゃなければ、なんとかできる安心感は心に余裕を与えてくれるよ。




