第29話 一一歳の冬季休暇
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第29話 一一歳の冬季休暇
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朝のランニングを終えると、魔法陣形成の訓練をする。
朝日を反射し煌めく湖面を見つつの魔法陣形成は捗った。
そう、僕は今、皇帝からもらったアルフィール湖畔の土地にやってきている。
広さはおよそ三〇〇ヘクタールで、湖畔には宮殿のような屋敷が建っている。あと、村もその敷地内になるんですけど、どういうことなんですかね?
「しかし、こんな大きな屋敷と広大な土地とは思わなかったなぁ」
「デルク、朝食よ」
「ほーい」
もちろん、フィーデリアも一緒だ。屋敷のデッキから僕に手を振るフィーデリアに、手を振り返す。
冬なのでさすがに湖では泳ぐことはできない。フィーデリアの水着姿が見られないのは残念だ。
もっとも貴族令嬢であるフィーデリアが、水着姿になって人前で肌を晒すということはないと思うけど……。
朝食を用意してくれたのは、ゲルミナス家からきてくれている三人の侍女だ。もちろん、フィーデリアつきのサビーネさんもいる。フィーデリアを御し得るのは、サビーネさんだけだからね。
あと、敷地内にある小さな村から、何人かがお手伝いにきてくれる。彼らは常日頃、この屋敷の管理をしてくれているそうだ。おかげで、屋敷内の掃除が行き届いており、不快な思いをすることなく快適に過ごせている。
食後はフィーデリアと敷地内を散策する。広大な土地なので、敷地内の散策だけで時間が過ぎていく。
ちょっとした丘の上から見下ろすアルフィール湖は蒼かった。
屋敷から少し離れたところに村があり、いくつかの建物の煙突から煙が出ている。長閑な景色だ。
「美しい景色ね」
「うん、目の保養になる景色だ」
フィーデリアの肩を抱きながら、丘の上で腰を下ろしていい眺めを見つめる。
気温は一五度くらいか。風がなければ暖かいと感じるくらいの日差しで、時折風が駆け抜け、フィーデリアの金色の髪が揺れる。
僕とフィーデリアが散策を終え屋敷に帰ると、村人たちが待っていた。とにかく話を聞くことにした。
「あの……税はどれほど納めればよろしいでしょうか?」
いきなりだね。そもそも僕は領主ではないと思っているから、税なんて取ろうと思ったことはないだよ。
僕は困惑した顔でフィーデリアを見る。
「デルク。ここは私に任せてもらっていいかしら?」
「あ、うん。任せるよ」
この屋敷はフィーデリアが交渉(脅迫?)してもらったものなので、彼女に任せたほうがいいだろう。
「税は不要よ。その代わり、この屋敷の維持管理と、デルクかその許可を得た者が屋敷を使う時に労働力を提供してもらうわ」
「そ、それだけで、いいのですか?」
「ええ、構わないわ。ね、デルク」
「うん。それでいいよ」
税なんて言われても困るし、この屋敷の維持管理をしてくれたらそれで十分だ。そもそも、これだけの屋敷を維持管理するのはかなりの労力になると思うから、そっちのほうが高くつくかも?
「管理方法は村に任せるわ。ただし、ちゃんと管理してね」
「は、はい。それは勿論でございます」
アルフィールの屋敷で数日過ごしたある日、僕はふと気づいてしまった。
「僕はなんで今も魔法陣形成をやっているのだろうか?」
クエストはもう出ていない。なら、魔法陣形成をする必要はないのでは?
「いや、魔法陣って楽しいよね」
楽しいに理由など不要。
楽しいは正義だ。
楽しいのだから、魔法陣をもっと自由自在に扱えるようにしたいじゃないか。そしたらもっと楽しいと思うんだ。
今はまだ古代魔法大全集にある魔法陣しか扱えない。でも、独自の魔法陣を構築できたら、と思うとワクワクする。
「そうだな、楽しいことが大事じゃないか」
そんなことを思っていると、新しいクエストが出た。
新魔法陣創作というクエストは、オリジナルの魔法陣を作ったらガチャポイントがもらえるというものだ。
達成報酬はなんと、三〇〇ガチャポイントだ。
破格の報酬ということは、それだけ難易度が高いということだろう。
ただでさえ楽しいからやる気満々だったけど、ガチャポイントまでもらえるんだから、やる気の上限突破だよ。
そんなわけで魔法陣創作をするために、既存の魔法陣を自分なりに分析することに冬季休暇を使った。
「むっず……。やっぱり魔法陣の内容を把握するのは、難しいな」
でも、複数の魔法陣に共通する記号? 言語? を発見した。
僕はこの記号なのか言語なのかを、自分なりに魔法言語と名づけた。
そういった共通の部分を見つけていくことが、魔法陣創作の一歩だと思って地道に進める。
あっという間に年末になり、僕とフィーデリアは皇都に帰ることになった。
魔法言語の分析はまだ序の口で、魔法陣を創作できるほどの知識はない。
村人たちに見送られ、僕たちはアルフィール湖畔の屋敷を出た。
次は夏季休暇のバカンスでこよう。その時にはフィーデリアの水着姿が見られるといいなー。
「アルフィール湖、綺麗だったし、空気は美味しいし、いいところだったね」
「ええ、そうね。でも、私はデルクと一緒にいられるだけで幸せだったわ」
「それは僕もだよ、フィーデリア」
「お嬢様、デルク様、周囲の目がございますので、少しお控えください」
「サビーネ、うるさい」
バカップルと言いたければ、言えばいい。僕はフィーデリアが好きで、彼女も僕を好いてくれているのだから、それが一番大事なんだよ。




