第24話 一一歳の変事
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第24話 一一歳の変事
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夏季休暇が終わると、二年生は魔物の討伐をする授業が始まった。フィーデリアもその授業に出て魔物討伐を行い、毎日忙しくしている。
僕は政務科なので、魔物と戦う授業はない。おかげで下校時間がフィーデリアと合わなくなっている。
学園からの帰りは、いつもフィーデリアの魔動車だったが、今は歩いて帰っている。姉のスピカたちと帰ることも考えたけど、それほど遠くないので歩いて帰ることにしたんだ。
その途中にある市場に寄り道し、買い食いをする。この世界に転生してから買い食いなんてしたことがなかったので、懐かしく思う。
そんなことをしていると、季節は冬に変ろうとしている。冬といっても寒風が吹き荒れるようなものではなく、肌寒く感じる程度だ。
そんな初冬に皇帝が退位し、新皇帝が即位した。そういった噂はあったけど、まさかこんなに早く戴冠式が行われるとは思っていなかった。
父も兄たちも戴冠式の前は本当に忙しそうにしていた。夏が終わり一旦落ちついた泊り込みも、また多くなったほどだ。
そんなある日、父が倒れた。そこで兄姉たちが一堂に会した。
長兄で当主のパテリアス、次兄で騎士をしているトレイウス、三兄で宮廷魔法使いをしているクライス、四兄で町医者をしているトラバース、長姉でアルシャマー子爵家に嫁いだニシレン、次姉でアールバーン男爵家に嫁いだルミナスだ。
「過労だ。数日安静にして寝ていれば、すぐに起きられるだろう」
町医者のトラバース兄上が診察したところ、過労だった。大事にいたらず、よかったよ。
「最近は心労が多かったからな……」
「「本当に……」」
パテリアス兄上、トレイウス兄上、クライス兄上が僕を見た。え、何? 僕、何もしてないよ?
「この際だから、デルクに聞いておきたいわ」
「なんですか、ニシレン姉上?」
「私たちはどうなるの?」
いやいやいや、僕に聞かれても?
「えーっと、その意味は?」
「恐れ多くも皇帝陛下を殴ったのでしょ、あの子? それなのに、ゲルミナス家は未だに無事だし、あの子の婚約者のデルク、そしてその家族である私たちはどうなるの?」
ニシレン姉上の目が血走っている。
「本当に大丈夫なのよね?」
ルミナス姉上も真顔だ。
一応、何もないとは聞いているけど、本当に何もないかはさすがに分からない。不安なのは、仕方ないか。
「僕もよく分かりませんけど、今のところは大丈夫のようです」
「そんなことが聞きたいんじゃ―――」
「ニシレン、そこまでだ。デルクに聞いても分からないというのは当然だ。デルクは皇帝陛下どころか重臣の方々にお会いしたこともないのだ」
「でも、兄さん……」
「皆が不安に思っているのは分かる。だが、それをデルクに聞いてもせんなきことだ」
この話はここまでと、パテリアス兄上が話を変えた。
せっかく全員集まったので、皆で食事をすることに。母たちも、いつもはいない子供たちがいて嬉しいみたいで、食事は終始和やかな雰囲気だった。
「せっかく皆が集まったので言っておくが、当家はバグラーの地を拝領した。その代官としてトレイウスを置くことにした。来年早々に、トレイウスにはバグラーへいってもらう」
領地経営のノウハウなどないが、領地を放置はできない。しかも今までは国から家禄をもらっていたが、これからは家禄はなくなり、領地から上がってくる税収が収入になる。もちろん、俸禄(役職手当)はもらえるけど。
そんなわけで、領地を統治する人が必要になる。そこで次兄のトレイウス兄上に白羽の矢が立ったわけだね。
バグラーという土地は、皇都ダレンバーグから魔導列車で半日ほどのところにあり、ちゃんと駅もあることから結構発展している土地と聞いている。
いつかはいってみたいね。
今日もフィーデリアとは別々の帰宅だ。最近は慣れた一人の下校。今日も市場で買い食いをする。
今日は美味しそうなリンゴがあったから、購入してみた。服でゴシゴシ磨き、齧りつく。
シャリッという小気味よい音が耳に心地よい。やや強い酸味だけど、甘味もちゃんとあって美味しい。
リンゴを齧りながら歩いていく。母のウィスナーラに見られたら、行儀が悪いと叱られそうだ。たまにはこういった背徳感を覚えるのも悪くないものだ。
「あんちゃん、いいものがあるぜ。買っていきなよ」
失礼ながら、小汚いオジサンが声をかけてきた。小物を敷物の上に並べている。
「どれどれ……」
分析で見てみたけど、どれも二束三文のものだ。大したものはない。
「ごめんね、オジサン。興味を惹くものはないや」
「そんなこと言わず、なんか買っていってくれよ。うちには子供が五人もいて、腹を空かせて待っているんだ」
「ごめんなさい。僕には必要ないものばかりなんで」
その場を立ち去ろうとしたんだけど、いつの間にか周囲に人がいて身動きが取れない。
「ちょっとすみませ……」
その時、首に痛みを感じ、僕はよく分からないうちに意識を手放していた。




