第23話 一一歳の夏季休暇後
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第23話 一一歳の夏季休暇後
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僕は満足いく夏季休暇を過ごしたけど、城勤めの人たちはかなり大変だったようだ。
父や兄は滅多に職場に泊り込まないのだけど、この二カ月は何度も泊り込んでいる。
あと、学園のほうも大変だったらしい。再開に向けて、今回のようなことが起きないように再発防止をしなければいけない。それを国が承認するまでに喧々諤々やりあったらしい。
そして予定通りの九月に、学園が再開されることになった。それに先立って保護者への説明会が開かれた。
そんなわけで、僕とフィーデリアは、久しぶりに学園に登校した。
あのダンジョンフローを起こした校舎は、騎士団が厳重に管理している。貴族の子女が多く亡くなったため、当面は騎士団が管理することになったみたいだね。
そんなわけで、僕たち二年生の校舎は別の建物に変ることになった。以前より小さめの校舎に入るのだが、どうも見られているような……。
ま、見られているよね、フィーデリアが城を破壊し、皇帝に謝罪をさせた魔王様だもん。
教室は別々なので、フィーデリアと別れる。
生徒たちは僕を遠目に見ている。元々友達がいるわけじゃないし、今までと変わらぬボッチだ。
なんか教師までよそよそしい。
あれ、なんか目から水が……。
いつもと《《大して》》変わらない学園生活を終え、フィーデリアと魔動車で帰る。
途中でお茶をして、屋敷に到着。
着替えたらモデリングで剣を作る。僕は剣の良し悪しは分からないけど、丈夫でよく斬れる剣をイメージしているから、いいもののはずだ。
その剣に魔法陣を設置する。この魔法陣は斬った際に炎で追加攻撃を加えるものになる。
「ふむ……いい感じだ」
解析で見ても、極めて魔剣に近い性能とある。
庭で試し切りをしてみたんだけど、丸太の切り口から炎が立ち上り炭化した。
「おおお、これはすごいな」
魔剣ガルバスもすごいけど、この剣もすごい。
てか、僕程度の腕で直径二〇センチメートルはある丸太をスパッと切れた。それだけでもこの剣の斬れ味が分かるものだ。
この剣はフレイムソードと名づけよう。
この剣はいくらで売れるかな? フィーデリアのゲルミナス家に婿養子に入っても、手に職があればお小遣いに困らないと思う。
二カ月間、集中して物作りをしてきたおかげだよね。
それからの僕は古代魔法大全集の魔法陣を覚えることに時間を使った。魔法陣は数が多すぎるので、覚えるのが大変だ。でも、魔法陣を覚えてしまえば、僕は詠唱することなく瞬時に魔法が発動できるわけで、なかなか楽しい時間だった。
今日はフィーデリアと夜景を見にきた。二人だけでディナーをいただき、夜景の見える丘の上で過ごす。
なんと贅沢な時間だろうか。
「綺麗な夜景ね」
「一〇〇万ドルの夜景だね」
「ちょっとショボイ一〇〇万ドルね。ウフフフ」
たしかにそこまで光ってはいない。でも、そういうのは言わないようにね。
僕はフィーデリアの腰に腕を回し、彼女を抱き寄せた。
「これから末永く、よろしくお願いします」
「それ、私の言葉なんですけど?」
「そうだっけ?」
「そうよ。ウフフフ」
「ま、どっちでもいいや。とにかく、よろしくね」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
その夜は、二人で楽しく過ごした。
まさかこの僕がこんなリア充展開とか、前世からは考えられないよ。
デルクとフィーデリアが夜景を楽しんでいる頃、再建中の城では皇族と主要な家臣たちが集まっていた。
「余は退位しようと思う」
「「「………」」」
とても四二歳には見えない白髪の皇帝が、そう切り出した。偉丈夫で威厳のあった姿は、今では見る影もない。
「お待ちください、陛下」
「退位するのは早急かと」
家臣たちが退位を止める。
「余は疲れた。我が子に後を任せ、隠居する」
皇帝の意志は固い。そう皇族も家臣も感じ、説得は早々に諦める。
本当はもっと早く退位したかったが、崩れた城の修復にある程度の目途が立つまではとがんばってきた。
「では、次代様は?」
皇帝には四人の皇子と三人の皇女がいる。第三皇子のグラディックは廃嫡されているため、六人の中から次の皇帝を選ぶことになる。
過去には多くの女帝もいるが、基本的に皇子が皇帝になることが多い。
で、まだ九歳の四男ゲルリックは若すぎるため、長男で皇太子のアストリックか、次男のトリアリックの二人から選ぶことになる。
家臣たちが二人の皇子のどちらがいいと議論を行った。
長男で皇太子のアストリックは、二三歳で宮廷魔法使いたちを束ねている。性格は直情的だが、魔物討伐や戦争などに出て実績を残しているのは大きい。
次男のトリアリックは二〇歳で財務を担っているが、アストリックほどの派手な実績はない。
やはり皇太子のアストリックを推す声が大きい。
「皇太子を次の皇帝とする」
皇帝が言い切った以上、これに異議を申し立てる者はいない。
「グライデン皇国皇帝を継ぐ栄誉に与り、感謝申し上げます」
「城がこの状態であるゆえ、戴冠式は簡素にするがいい」
「はっ」
「また、フィーデリア・ゲルミナスとデルク・ナグラーには決して干渉するでない」
「……はい」
皇帝が公式に謝罪をするという珍事が起った。その相手がフィーデリアとデルクである。
アストリックは二人に思うところがある。自分が皇帝になったら、二人も、その家も滅ぼそう。そう考えていた。
だが、父の皇帝から干渉するなと言われたので、今は我慢することにしたのだった。




