第14話 一〇歳の転生話
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第14話 一〇歳の転生話
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一〇歳も大半が過ぎた三月になると、魔法陣形成は安定して五分を切れるようになった。
そしたら達成条件が、四分になった。刻んでくるね、神様も。
学園生活のほうは可もなく不可もなく、成績も上の下の維持を心がけている。
そんなある日、滅多にいかない校舎の三階へと足を踏み入れた。なんとなく三階に何かあると、そんな気がしたからだ。僕にそんな野生の勘のようなものがあるとは思えないけど、なぜか気になった。
そして、僕はある部屋の前で立ち止まる。
「ここは……?」
扉は両開きで、ドアノブに鎖が巻かれている。明らかに怪しい。
「校舎の中にこんな部屋があるなんて?」
ここは貴族が通う学園だ。そんな貴族が通う学園にこんな怪しい部屋があるとはね。
中から何か感じるということはない。ただ、このようにあからさまに立ち入りを拒む部屋というのは、気になるじゃないか。
「その扉に触るでないぞ」
「っ!?」
振り返ると、老教師がいた。ただ、教師用のローブを羽織っているので、教師なのだろう。
どこかで見たような気はするが、思い出せない。二年生の教師ではないし、昨年授業を受けた記憶もない。
なのに、なんで二年生の学舎にいるのかな?
あと、この先生は腰が少し曲がっているので、それなりの年齢だ。そんな老教師の足音に気づかなかったことに、驚いた。
「先生、ここはなぜ閉ざされているのですか?」
「極秘、じゃな」
「え、極秘!?」
何、その心躍るフレーズは!?
そんなこと聞くと、どうしても知りたくなるのが人の性だ。
「分かったら、二度と近づいてはならぬぞ」
「……はい」
そんなこと言われたら、もっと興味が出るじゃん!
階段を下りていく。老教師の気配はない。だが、今戻るとまた老教師に見つかりそうだ。
ここは、あの有名なフレーズを使うとするか。
「謎解きはモーニングの後で!」
お楽しみは後にとっておくべきだな。
いつかあの扉を開けてやるよ、お爺ちゃん。なんてね。
冗談です! 僕は平穏無事がモットーなので、教師が駄目ということは駄目なのです! イエス、マスター! と敬礼するのですよ。
「ねえ、フィーデリア」
「何?」
「魔法を使う時に、魔力って意識している?」
「意識しているわよ。そのほうが魔法を発動しやすいから」
「じゃあ、魔力を自在に動かせる?」
「そうね、結構上手く動かせると思うわ」
「僕に魔力の動かし方を教えてくれない?」
「いいわよ。でも、辛いわよ」
「構わない。やって」
「それじゃあ、私の魔力をデルクの体に流すから、鳩尾を出して」
僕は服を捲し上げて鳩尾を出した。フィーデリアはその鳩尾に右の掌を当てる。ちょっとひやっとして気持ちいい。
フィーデリアはスリスリと僕の腹部の辺りを撫でている。場所を決めているのかな。
……な、長いな。何か問題があるのだろうか?
「あ、あの、フィーデリア?」
「っ!? ……ゴホンッ。魔力を流すわ」
「あ、うん」
鳩尾の辺りが温かく……熱っ!? あっつ!? うぎゃっ!? 痛い! 熱い! ウガガガガガッ!?
一〇分後、僕は息も絶え絶えの状態で、床に転がっている。なぜかその横でフィーデリアも横になっている。
「はぁはぁ……いつつ……今のは……」
「私の魔力を流し込んで、デルクの魔力を無理やり動かしたの。これで、デルクの魔力は動きやすくなったはずよ」
落ちついてから魔法陣を形成してみる。
「っ!?」
劇的だった。四分どころか、軽く一分を切ってみせたのだ。
あれほど苦労していたのに、すごくスムーズに魔法陣が形成できてしまった。
フィーデリア、すげー!
「魔法陣。デルク、魔法陣をどこで?」
「え、あ……」
下手な言いわけでは、フィーデリアを誤魔化せないだろう。だから僕は正直に話すことにした。
アイテムボックスから古代魔法大全集を取り出し、彼女に差し出す。
「これはっ!?」
「僕は転生者なんだ」
「っ!?」
「神様に三つの恩恵をもらい、この世界に転生したんだ」
「……すごい!」
「え?」
「デルクも転生者なんだね! 私もなの!」
知ってます。
「一緒ね!」
「あ、うん。一緒、だね」
フィーデリアは目を輝かせながら古代魔法大全集を開いた。
「へー。日本語で書かれているんだね」
「読めるの?」
「私、元日本人だから」
「僕と一緒だね」
フィーデリアの日本は僕と少し違うらしい。僕の世界では中京が首都だったけど、フィーデリアの世界では京都が首都だった。
僕たちは前世の話に花を咲かせた。




