第13話 一〇歳のクリスマス
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第13話 一〇歳のクリスマス
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一一月に入り、日に日に寒くなっていく。
あの日から、フィーデリア嬢から……その侍女によってフィーデリア嬢の心の声の代弁告白を聞いた日から、彼女は毎朝僕を迎えにくるようになった。
僕はフィーデリア嬢の専用魔動車の中で、彼女の横に座っている。腕を組んで。
そう、フィーデリア嬢はあの日から、とても近いんだ。密着するくらいに。
「フィーデリア嬢」
「………」
「あの、フィーデリア嬢?」
「フィーデリア。そう呼んで」
そうだった、そう呼べと言われていたんだ。
「そうだったね……フィーデリア」
「はい」
「最近、寒くなったね」
「うん、寒い」
「暖かくして寝るんだよ」
「暖めて」
「それは……」
「暖めて」
どうしたらいいんだよ!? 助けてよ、サビーネエモーン!?
「お嬢様。はしたないですよ。そんなこと言うと、嫌われますからね」
「っ!? それは駄目!」
「でしたら、あまり無茶は言わないようにしましょうね」
「……分かった」
さすがはサビーネさんだ、彼女の御し方をしっかり把握しているよ!
学園内ではさすがにひっついてこないけど、昼食を一緒に摂るようになった。学食もあるけど、お弁当だ。
「あーん」
「……あ、あーん」
恥ずかしいけど、あーんと口を開ける。フィーデリアが一口大の卵焼きを口に入れてくれる。学生たちに遠巻きに見られている。恥ずかしい。
恥ずかしさは我慢するとして、この卵焼きは美味しい。甘さ控えめの出汁が聞いた、上品な味だ。
「今日の卵焼きはどう?」
「うん、美味しい。昨日より断然美味しくなっているよ」
どうも卵焼きはフィーデリアが作ってくれているようで、毎回味の感想を聞いてくる。そして翌日には味の改良が行われる。最初は甘ったるい卵焼きだったけど、何度も改良が行われて、今日のような美味しい卵焼きになった。
「この卵焼きはフィーデリアが作っているの?」
「うん。料理は得意じゃない。でも、一つくらいは手作りのものを食べてほしい」
「得意じゃないのに、がんばってくれたんだね。ありがとう」
すると、フィーデリアは頭を差し出してくる。彼女は撫でられるのが好きなようで、僕が頭を撫でると、フィーデリアの顔が赤くなった。
恥ずかしいなら人前で撫でられにこなくてもいいのですよ? とは言えない僕。
来月のクリスマスに、フィーデリアに何かプレゼントを、と考えている。
昨年はお返ししたけど、クリスマスのプレゼントはしていないからね。
そこでSレアから一つのアイテムを具現化する。それはネックレスだけど、Sレアだけあるので、なんと魔力がプラス一五ポイントになる効果があるものだ。
魔力増加のアイテムは滅多にないらしいので、フィーデリアにピッタリだと思う。
ジュエリーに興味がなかったので、デザインの良し悪しは分からないが、ダイヤモンドがついていて、洗練された美しさがあると、僕は思っている。フィーデリアが気に入ってくれたらいいな。
魔法陣をこういったアイテムに定着させたら魔道具になると、古代魔法大全集に記載がある。
本来なら僕が魔法陣を定着させて魔道具にしたいところだけど、まだそこまでの腕はない。
クリスマスが迫る。学園は一二月一日から一月一四日まで休みなので、すでに長期休暇に入っている。
一応、学園の長期休暇は、七月から八月の二カ月間を夏季休暇、今回の一二月一日から一月一四日が冬季休暇になっている。
一年生の学園生活は可もなく不可もなくといったところかな。ダドリー・エセヒロー君が痛めつけられた噂が広がり、僕に嫌がらせをする子はいなくなったとも言う。
「フィーデリア、これを受け取ってくれるかな」
「プレゼント!?」
「以前、この日にプレゼントをもらったから、僕も贈ろうと思ったんだ」
「嬉しい……これ、デルクに」
「今年もくれるんだね、ありがとう」
「うん」
二人でプレゼントを開ける。
今回僕がもらったプレゼントは、ランニングウエアとシューズだった。
嬉しいといえば、嬉しい。だけど、筋トレや体力作りから離れてほしい。
「綺麗……」
「フィーデリアに似合えばいいけど」
「似合う。似合わなくても似合わせる」
すごい食いつきだ。
「喜んでくれたようで、僕も嬉しいよ」
「うん。とっても嬉しい」
まさかこの僕がクリスマスのバカップルのごときことをしているとは……。転生してよかったーっ!
年越しに向けて家族は忙しそうだ。
僕はいつものごとく、朝一でランニングをし、魔法陣形成を行う。
魔法陣の形成は五分を切れそうで切れない、もどかしいところだ。
そして年を越した。
今年もゲルミナス子爵家へ新年の挨拶にいき、フィーデリアと楽しくお喋りをした。
僕の舅になる予定のゲルミナス子爵は、僕を大変歓迎してくれる。子供が女性ばかりなので、男の子供がほしかったようだ。
前世の僕と同じくらいの年齢のゲルミナス子爵とは、何かと話が合う。それも僕を気に入ってくれる要因のようだ。
何はともあれ、舅になる方と良好な関係が築けているようで、よかったよ。




