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無双なんて望んでないのに、なぜか怖がられている!? 【いつの間にか魔王よりもヤバい旦那と言われていた件について】  作者: 大野半兵衛


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第12話 一〇歳のある日のデルク(赤面)

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 第12話 一〇歳のある日のデルク(赤面)

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 魔法陣が霧散する。

 いいところまでいくのだけど、まだ完全ではない。


「あともう少しなんだけどな~。それが難しい」


 魔法の才能があるフィーデリア嬢だったら、チョチョイノチョイとできてしまうんだろうな。ま、僕は凡人として努力をし、そして少しだけ使えるようになればそれでいいんだ。

 こういう努力って楽しいから好きなんだよね。

 前世でもゲームのレベル上げは嫌いじゃなかった。むしろ、レベル上げは好きなほうだ。


 ああ、そうそう。

 ダドリー・エセヒロー君の怪我のことが分かったよ。どうやらダドリー君は、フィーデリア嬢にぶっ飛ばされたらしい。

 なんでもフィーデリア嬢に言い寄って、コテンパンにされたようだ。その際に、どうも僕の悪口を言ったらしい。それで、謝ってこいと命じられたんだとか。何をしているのかね、あの公子様は。

 しかし、フィーデリア嬢が僕に謝れと言ってくれたのか。嫌われているとばかり思っていたんだけどなぁ……。僕のことを気にしてくれているのが、少しだけ嬉しい。

 ……あれ? 僕はフィーデリア嬢との結婚に否定的ではなかったのか? あれれ? どうして嬉しいんだろうか?


「おかしいな……」


 よく分からないが、もやもやする。





 昔の夢を見た。僕がまだ前世で社畜をしていた時の夢だ。

 別に辛くはない。それが当たり前だと思っていたからだ。僕が社畜だと知ったのは、三〇歳になる手前のことだった。会社に労基署から監査が入り、発覚したのだ。

 その後、会社は未払いの時間外労働手当を払うことになり、僕は一時的にお金持ちになった。

 僕は他の社員も同じくらい働いていると思っていたんだけど、どうも一部の人だけが社畜として働いていたようだ。でも、僕はそれで構わなかった。

 人つき合いが得意ではなかったし、特別優秀なわけじゃないから、こつこつやることが性に合っていたんだと思う。

 楽しくもないが、辛くもなかった社畜の僕だった。だからだろう、今も黙々と何かをするのが性に合っている。

 そんな僕の努力が実ったのが、今日という日だ。魔法陣を形成できたのである!


「おおお! これが魔法陣!?」


 純粋な魔力で魔法陣を空中に描く。今は一〇分くらいかかってやっと簡単な魔法陣を形成できるくらいだけど、魔法陣を形成したという事実が大事なのだ。

 この調子で、魔法陣を形成しまくるぞ!


 古代には呪文ではなく、魔法陣で魔法を使っていた。その技術を僕は身につける!




 季節は秋に入り、僕は毎日忙しくしている。朝は一〇キロメートルランニング、それが終わったら学園、放課後は魔法陣形成の訓練。

 魔法陣成形のクエストは、五分以内に形成することがクエストのクリア条件になった。つまり、最初の一回のみガチャポイントを得られたが、それ以降は得られていないのだ。神様、シビアッす!?

 でも、もう少しで五分を切れる。

 魔法陣の形成に五分もかけると、詠唱なら何度も魔法を発動させられる。そう思わないではいないが、これは楽しいからやっている。クエストだということもあるけど、何よりも楽しいのだ。


「デルク様。フィーデリア様がお越しになりましてございます」

「うん。今日は天気もいいし、庭でお茶にするよ。庭に通してくれるかな」

「畏まりました」


 古代魔法大全集を閉じ、無限アイテムボックスに収納する。大事な古代魔法大全集が盗まれると、僕の楽しみが減ってしまうからね。

 盗まれても日本語で書かれているので、読める人は滅多にいないと思うけど。フィーデリア嬢は読める可能性がある。これが読めると、僕が日本語を読んでいることが分かってしまうので、誰の目にもとまらないようにしないとね。

 あと、名前を書いておいた。子供かよ!? と思ったけど、今の僕は一〇歳の子供ですからね。


 フィーデリア嬢は今日も美少女だ。彼女が転生者でなければ、と何度思ったことか。僕には勿体ない美少女なんだよ。


「フィーデリア嬢、ようこそ」

「昨日ぶり」


 昨日、学園の廊下で会った。学園がある日は、なかなか会えないので、休みの日にはどちらかの屋敷でこうやってデート未満の親交を深めている。


「今日はアステーネンのカステーラを取り寄せたよ、お口に合えばいいのだけど」

「これ、好き」

「それはよかった。生クリームとイーチゴのソースを添えてあるよ」


 フィーデリア嬢の目が見開かれた。

 もしかして生クリームとイーチゴソースは嫌いだった? 

 この世界のカステーラは、前世のカステラとほぼ同じものだけど、やや甘さに欠けるところがある。だから、生クリームとイーチゴソースを添えようと思ったんだけど、嫌いだったかな?


「失礼ながら、発言をお許しください」


 フィーデリア嬢の専属侍女のサビーネさんが前に出た。なんだろう?


「どうぞ」

「イーチゴソースはお嬢様の大好物にございます。お嬢様が口下手ですから、僭越ながらわたくしめがデルク様に感謝申し上げる次第です」


 お、おう……そうなの? てか、フィーデリア嬢って口下手なの? えーっと、もしかして僕と喋らないのは、口下手だから? ええ?


「サビーネ、黙れ」


 お、おう……ドスが利いた低い声だ。

 だけど、サビーネさんはさらに一歩前に出た。


「お嬢様。この際ですから、はっきり申しあげます。お嬢様はデルク様のことを好いておいでなのに、それを態度にも口にも出せないヘタレです。いい加減、お嬢様のお心のうちをデルク様に告白されてはいかがでしょうか?」


 えーっと……僕、好かれているの?

 フィーデリア嬢を見ると、顔を真っ赤にしてプルプル震えている。


「あ、あの……フィーデリア嬢」

「はい、なんでしょうか、デルク様」


 え、なんでサビーネさんが返事をするのかな?


「ヘタレのお嬢様の心の声を代弁しております」

「そ、そう、ですか?」

「はい。そうです!」


 フィーデリア嬢は火が出るんじゃないかと思うほど、顔が真っ赤だ。

 僕はなんと言えばいいのだろうか?


「デルク様。一つお願いがございます」

「な、なんでしょうか?」

「お嬢様のことを、よろしくお願い申しあげます」


 ゴクリッと喉が鳴った。僕はここでなんと答えればいいのか?


「僕も口下手です……ですが、もし、フィーデリア嬢が誰かに襲われたら、フィーデリア嬢が逃げられるように盾になります」

「盾……ですか?」

「残念ながら、僕は戦えませんから、フィーデリア嬢が逃げるだけの時間を少しでもかせぐようにします」

「まあ! お嬢様のために命をかけるというのですね! お嬢様、聞きましたか! お嬢様のために体を張られると仰っていますよ!」

「うぅぅぅっ」


 フィーデリア嬢が涙を流しているんですが!?



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