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異世界から帰ってきたら終末を迎えていた ~終末は異世界アイテムでのんびり過ごす~  作者: 十本スイ


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 日門が自身の魔法について話したあとは、また目的地であるイケメンと美女好きの主がいる屋敷へと向かって歩き出した。その都度、ゾンビに遭遇する度に日門が軽く処理しながら。


「あ、そういやバイクは良かったのか、理九?」


 ふと理九が乗っていたバイクのことを思い出し尋ねてみたが、理九は軽く肩を竦めると「別にいいさ」と告げた。


 どうやら元々捨てられていたもので、たまたまキーとメットが傍に落ちていたから拝借したのだそうだ。

 普通なら窃盗に当たるが、こんな世の中だ。誰に咎められることもないだろう。持ち主だってゾンビになってしまった可能性の方が大きいし。


「けれど本当に魔法って凄いんですね。さっきからゾンビたちを一撃ですし」

「ん? おいおい、魔法なんて使ってねえぞ?」

「ふぇ? じゃ、じゃあさっきからどうやって倒してるんですか?」

「んなもんただ殴って蹴ったりしてるだけだぜ」

「そ、そうだったんですか!?」

「……魔法じゃなくてただの物理攻撃で、ゾンビを一撃で粉砕してるのかい? それはどういう原理なのさ?」


 理九も気になったようで質問をしてきた。


「向こうの世界はいわゆるRPGみたいにレベルってのがあってな。それを上げれば自ずと身体能力とかも上がる。そんで、俺もレベルを上げまくって強くなったわけ。こっちに帰ってくる時、俺を召喚した神が褒美として鍛えたレベルそのままに帰還させてくれたんだよ」

「か、神様!? ほ、本当にいるんですね……!?」

「し、信じられないけど……今までの話から事実なんだろうなぁ」


 小色は素直に驚き、理九はお腹がいっぱいとでも言いたいほどに遠い目をしている。


「まあ、あんだけ頑張ったんだし、これくらいの特典はなぁ。それにそのお蔭で、こうして身を守れるし。まあこんな世界になっちまってるなんて一ミリも思ってなかったけど」


 向こうの世界でも高位レベル者は、肉体的・精神的にも強化される。それこそ今の日門なら、地球の武道の達人でさえ片手で軽く圧倒することができるはずだ。


「それに俺は武器を扱うのは苦手でな。向こうでも徒手空拳で戦ってたし」

「なるほど。どこか武術っぽい動きだったけど、それも経験からだったんだね。昔から何か空手とか習ってたり?」

「身体を動かすのは好きだったけど、別に武道をやってたわけでもスポーツをやってたわけでもねえな。ただ、実家が田舎の山奥でな。ガキの頃から山を駆けずり回って遊んでた」


 そのお蔭もあってか、異世界でも身体の動かし方については褒められた。何でも基礎的な土台は形作られていたから、あとは戦闘用に動きを変えていくだけだったのだ。


「その、日門さんは勇者として召喚されたというわけではないんですよね?」

「おう、さっきも言ったな。勇者ってのは元々向こうにいたんだよ。俺はあくまでも勇者のサポート役として召喚されただけ」


 異世界において勇者と聖女は特別な存在だ。その時代にそれぞれ一人しか存在せず、その身には絶大な力を有しており、世界を救う使命を帯びて誕生するという。

 そして勇者が誕生したということは、それに対する悪災もまた生まれるということ。平和な時代に勇者や聖女は生まれないからだ。


 また歴代の勇者のパーティには、強力な力を有する仲間もいた。その仲間の一人は、決まって異世界人だったとのこと。異世界人は神の加護を持ち、特別な力を所持し、勇者を導く存在として語り継がれていた。

 故に神は日門を召喚し、勇者を導いてもらいたいと願ったのである。


「導くって、つまり何をするんだい?」

「勇者ってのは世界を脅かす害悪……悪災と表裏一体なんだ」

「は? それはどういうことさ?」

「勇者が光なら、悪災は闇。コインの裏と表だ。勇者がもし力に溺れ、その心を悪に傾けちまうと、そのまま悪災になっちまう」

「え……ちょっと待ってくれ。つまり何だ……悪災っていうのは……元々勇者だったのかい?」


 理九の言葉に対し、小色もギョッとした様子で日門を見つめてくる。


「……ああそうだ。古代の勇者だった……成れの果て。それが悪災の正体だった」


 正直それが分かったのは、勇者たちとともに異世界で過ごしてずいぶん経った後だった。

 世界の平和を望み、人々の希望の象徴。そんな存在が、いわゆるラスボスだったのである。当然その真実を知った時は驚いた。勇者も聖女も、他の仲間も絶句したものだ。


 その古代の勇者は、世界を脅かしていた存在を命からがら封印することができたらしい。これで平和をもたらせたと勇者は喜んだのも束の間、時の聖女だった者が何者かに暗殺された。

 時を同じくして、勇者もまた何者かに暗殺されかける。その正体を調べてみれば、勇者が信を置いていた国の王だったことが判明した。


「え、ど、どうして王様が勇者や聖女にそんな酷いことを……?」


 小色は分からないようだったが……。


「……! 平和な時代に、勇者と聖女が邪魔になったんじゃないかな?」

「お兄ちゃん? それ、どういうこと?」

「強過ぎる力は、また別の争いを生んでしまうってことさ」


 その言葉に、小色も思い至ったように目を見開く。

 そうだ。結構ありふれた話である。


 混沌の時代において、人類は救いを求める。自分たちでは解決できない問題が発生した時、その超常的な力を持つ存在に、味方として期待を託す。

 しかしいざ平和になった時、超人は普通の人類にとっては恐怖の対象でしかない。もしその存在が悪に傾けば? 欲に溺れれば? 敵に回ったら人類最後の日を迎えることになるかもしれない。


 そんな不安が彼らを凶行へと誘う。味方として油断している間に処理してしまおうと。

 そうすれば自分たちの求める平和な世界を脅かす存在は消える。真の安寧が手に入るのだと。


「でも……そんな酷いです。勇者や聖女たちは世界のために、みんなのために戦ったのに……」


 その通りだ。だからこそ勇者も許せなかった。いや、あるいは自分だけが裏切られただけなら、まだ耐えられたかもしれない。


「…………聖女は、勇者の恋人だった」




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