君たちへ
君たちは、だいたい忙しい。
進んでいるか、立ち止まっているか、迷っているか。
どれにしても、世界は君たちに「物語」を要求してくる。
輝け、とか。
成長しろ、とか。
意味を持て、とか。
でもね、最初に言っておく。
主人公である義務なんて、どこにもない。
誰かは全力で走る。
好きなことに身を投げて、疲れて、泣いて、それでも前を見る。
外から見れば、きらきらしている。
中にいれば、息が切れている。
誰かは夜を選ぶ。
正されない時間に身を置いて、
自分の速度で歩く。
進んでいないように見えて、ちゃんと生き延びている。
どちらも、主人公だ。
どちらも、間違っていない。
物語は、
派手な山場だけでできていない。
朝が嫌いな日も、
冬に惨めになる夜も、
うるさい夏に救われる瞬間も、
全部、ページだ。
君たちは比べてしまうだろう。
あの子の世界は眩しい、と。
自分の世界は静かすぎる、と。
でも距離が違うだけで、価値は違わない。
燃える物語が必要な人もいる。
消えない物語が必要な人もいる。
選んだ型が違うだけだ。
もし今、
少しだけ全力で生きてみているなら、
それでいい。
全部じゃなくていい。
戻れる場所を残したままでいい。
主人公は、
最後まで強い人のことじゃない。
最後まで生きている人のことだ。
派手じゃなくていい。
美しくなくていい。
意味が追いつかなくてもいい。
今日もページは進む。
書き直しもできる。
余白も残せる。
主人公の君たちへ。
物語は、
君たちの速度で続いていく。




