お出かけ
莉愛「おはよ!」
電話に出ると莉愛から明るい挨拶が聞こえる。
ただの電話なのに俺の心臓はバクバクする。
莉愛「今日楽しみだね!」
渚「どこ行くか知ってる?」
いきなり遊びに誘われたので俺は何も聞かされていない。
莉愛「アウトレット行くらしいよ?」
渚「いっぱい店あるとこ?」
莉愛「そう!」
俺は家族とも仲良くないし友達も少なかったから、お出かけは慣れていない。
渚「楽しみだなあ」
莉愛「みんな渚と行くの楽しみにしてる!」
それが本当だったら俺は涙が出るぐらい嬉しい。
莉愛「一緒に服とか選ぼっか!」
渚「いいの?」
彼女が選んだ服なら間違いはないだろう。
いつも一緒にいる皆んなはオシャレだし、俺も多少はそうでありたい。
莉愛「私好みにしてあげる!」
莉愛好みか。女の子に選んでもらえるならいいね。
彼女にもっと好いてもらえるなら願ったり叶ったりだし。
時刻は8時半。少し早いけど駅に向かう。
天気は快晴。少し暑いので夏服で良かったと思う。
実はこの服は紗枝に選んでもらった。
紗枝とは英語の授業で出会って以来、LINEをしたり一緒に出かけたりもした。
友達のこととかファッションのこととか色々相談に乗ってくれて、この前も一緒に買い物に付き合ってくれた。
駅に行くともう電車の発車時刻。
早足で電車に乗り込むと、満里奈を見つけた。
満里奈「渚」
こちらに近づいてくる。みんなの注目の的だ。
渚「お、おはよ」
大学の時とは違う雰囲気。
化粧も、服装も、バッグも何もかも違う。
セレブみたいな雰囲気。
満里奈「なんか変な人に付き纏われてさ」
「その小さい子は彼氏?」
満里奈が嫌そうに目線を後ろへ向けると、その方向からチャラい人が歩いてくる。
渚「あ・・・いや」
俺は体が震えて上手く声が出せなかった。
正直言って怖い。
満里奈「興味ないんで近づかないで」
「えーいいじゃんw」
俺と満里奈の間に入って、彼女に再び話しかける。
渚「嫌がってますよ?」
「うるせえチビ」
俺を怖い顔で睨みつける。
おそらく小さい俺のことなんか小蝿ぐらいにしか思っていないのだろう。
渚「・・・満里奈に近づかないで」
大切な友達に嫌な思いをさせるのは許せない。
昔ならこんなことを思うことはできなかったし、行動に移すこともできなかったと思う。
しかし、次の瞬間拳を振り上げる男。
渚「危なっ!」
「ゴンッ!」
ギリギリ交わしたけど、その場に滑って転倒する。
「あああああ!!!!!」
男が放った拳は電車の窓に当たったようで、その痛みから絶叫する。
拳からはかなりの血が出ているな。
ボクシングをやってる俺は、素手で殴ることがどれだけ痛いか知っている。
そもそもグローブで殴っても痛いし。
満里奈「大丈夫?」
しゃがんで手を差し伸べてくれる満里奈。
お尻は痛いが怪我はない。正直恥ずかしさが勝っているけど。
渚「ありが・・・」
胸の谷間が目に入り一瞬ドキッとした。
慌てて彼女から目線を逸らす。
満里奈「怪我はない?」
手を握って、立たせてくれた。
こんな時に何を考えてるんだ俺は。
「大丈夫ですか?」
誰かが車掌さんを呼んでくれたようで、こちらに駆け寄ってくる。
同時に次の駅について、俺らは電車から降りる。
渚「僕はなんともないんで」
満里奈「私も」
「そうですか」
面倒ごとを起こしたくなかった俺らは、その場から離れた。
そして男は救急車に運ばれて行ったようだ。
満里奈「ありがと」
渚「え?何もできなかったよ・・・」
正直言って悔しい。暴力をするのはダメなのは分かっている。俺はボクシングもやってるし。
しかし、彼女のために何もできていなかったのが悔しい。
満里奈「かっこよかったよ?」
こちらを見ながら微笑む満里奈。美しい。
俺の心はドキッとして、体が熱くなる。
電車から降りて、皆んなと合流するまでの記憶はない。
満里奈「ていうことがあったの!」
大「すげえな!」
和樹「やるじゃん渚」
迎えにきた大の車の中で満里奈がさっきのことを話す。
莉愛「かっこいい!」
渚「もう!恥ずかしいから!」
咲「私の彼氏はそんな度胸ないな」
なんか朝から色々あったけど、ドライブが始まった。
高速道路に乗って、みんなで談笑しながら進む。
大「サービスエリア寄る?」
莉愛「私トイレ行きたい」
和樹「俺も」
大「オッケー」
やっぱり楽しい。大好きな皆んなと一緒にいれるだけで嬉しいし。
そしてサービスエリアに着くと、色々なお店があった。
男女それぞれトイレに行ったあと、20分ほど小腹を満たすために買い物をする。
俺は焼き芋のスイーツを買ったよ。
渚「ん?」
スマホを見ると、ラインが数件来ている。




