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世間知らずの白髪の少女と古代魔法都市(白髪の王女と星屑の子供たち)「ママは、元・破壊神。」(挿絵あり)

作者: 希望の王

この物語は、世間知らずの白髪の少女と古代魔法都市(絶望と再生の物語)「あなたが見ている世界。それは、本当に本当の世界ですか?」完全版(挿絵80枚以上)の後日談です。

【後日談:星屑の子供たち】


挿絵(By みてみん)

アストレア王国女王あやの


アストレア王国の王城は、春の陽光に包まれ、穏やかな空気に満ちていた。玉座に座る女王あやのの表情も、かつての苦難を乗り越えた今、静かな落ち着きをたたえている。彼女の傍らには、常に夫の温かい眼差しがあり、庭では子供たちの無邪気な笑い声が響いていた。


あやのは、かつて絶望の淵で、数えきれないほどの男たちの子供を孕んだ。奴隷娼婦としての日々の中で、彼女の体は、憎悪と欲望の濁流に何度も晒された。宿った命は、彼女にとって望まれたものではなく、むしろ忌むべき過去の証だった。


世界が再構築され、アストレア王国が建国されてからも、その記憶はあやのの心を深く蝕んでいた。子供たちの存在は、彼女にとって拭い去れない影であり、目を背けたい過去そのものだった。


最初に、A子が王城に現れたのは、建国から数年後のことだった。十歳ほどの、あやのによく似た白い髪を持つ少女は、怯えたように目を伏せていた。彼女は、各地を放浪する中で、自分の生い立ちを知り、わずかな手がかりを頼りに王城へと辿り着いたのだ。


あやのは、A子を見た瞬間、激しい嫌悪感に襲われた。自分の意に反して宿った命。汚辱の記憶が鮮やかに蘇り、全身を凍てついた感情が駆け巡った。夫の優しい手が彼女の肩に置かれたが、その凍てついた感覚はなかなか消えなかった。


「私は……、あなたを知らない」


あやのの声は、 自分自身にも冷たいものだった。A子は、その言葉に深く傷ついたように顔を歪めた。


しかし、夫は優しくA子の手を握り、あやのに言った。「あやの、この子は何も悪くない。君が苦しんだ過去の象徴として見るのは、あまりにも酷ではないか」


夫の言葉は、あやのの心にわずかな亀裂を生じさせた。A子の綺麗な瞳が、あやのの魂をじっと見つめている。


その後も、B子、C子と、あやのの知らない子供たちが、次々と王城を訪れるようになった。彼らは皆、どこかあやのの面影を残しており、それぞれが過酷な生い立ちを背負っていた。


あやのは、彼らを見るたびに、複雑な感情に苛まれた。憎しみ、嫌悪感、そしてほんのわずかな罪悪感。彼らは、彼女の望まぬ過去から生まれた存在だが、同時に、 この世界で生きる権利を持つひとつの存在だった。


ある日、庭で一人寂しそうに遊ぶC子を見つけたあやのは、意を決して声をかけた。「あなたは……、何か欲しいものはないの?」


C子は、 予想外の声かけにビックリしたように顔を上げた。その小さな顔に浮かんだのは、警戒心と、ほんの少しの希望だった。「あの……、絵本が読みたいです」


あやのは、言葉もなくC子の手を握り、書庫へと連れて行った。 たくさんの絵本の中から、C子が選んだのは、 色の付いた動物が描かれたものだった。あやのは、久しぶりに絵本を開き、 優しい声で読み聞かせた。C子は、目を輝かせ、あやのの声に注意深く耳を傾けていた。


その時、あやのの胸に、これまで感じたことのない柔らかい感覚が湧き上がった。この小さな命は、彼女の苦痛の記憶と結びついているかもしれないが、同時に、 綺麗な好奇心と希望に満ちた存在でもあるのだと。


それから、あやのは少しずつ、子供たちと向き合うようになった。彼らの話に耳を傾け、一緒に遊び、時には温かい食事を共にした。アルファベット順に現れた子供たちは、それぞれ異なる個性を持っていた。活発なD子、 洞察力のある E子、 お絵描きが好きなF子、 動物思いの優しいG子……。


彼らと触れ合ううちに、あやのは徐々に感じ始めてるようになった。「生まれは関係ない。その子はその子だ」と。彼女の過去は消えないが、子供たちは、その過去の影を引きずって生きるべきではない。彼らには、 きれいな未来を生きる権利がある。


夫の絶え間のない優しさとサポートも、あやのの心を癒していった。「彼らは、君の一部だ。苦しかった過去から生まれた、かけがえのない命だ」と、夫は何度も優しく語りかけた。


王城の庭は、いつしかたくさんの子供たちの笑い声で満ち溢れるようになった。あやのは、彼らと一緒に色とりどりの花を植えたり、ボールで遊んだり、 夕方には星空を眺めながら物語を語ったりした。かつて冷たい影に覆われていた彼女の表情にも、 徐々に温かいものが宿るようになった。


もちろん、過去の傷が完全に癒えたわけではない。夜中に悪夢にうなされることもあった。しかし、そんな時、近くには夫の温もりがあり、子供たちの寝息が聞こえてきた。その温かさと静けさが、あやのの魂を再び穏やかな眠りへと誘った。


時折、あやのは子供たちに、彼らの父親たちのことを聞かれることがあった。その時、彼女は言葉に詰まり、険しい表情を浮かべた。しかし、夫はいつも近くで優しくフォローしてくれた。「君が話せる時が来たら、話してあげればいい。今は、彼らが君の愛情を必要としている」と。


あやのは、子供たち一人ひとりの目を見つめ、 優しい声で言った。「あなたたちは、私の大切な子供たちよ。過去に何があったとしても、それはあなたたちには関係ない。私は、あなたたちが幸せにこの世界生きていけるように、 一生をかけて守り抜く」


その言葉に、子供たちは安心したように満面の笑顔で笑った。彼らの笑顔は、あやのの凍てついた心を柔らかな光で満たし、過去の傷跡を徐々に癒していった。


Z子が王城に現れたのは、それからさらに数年後のことだった。 すでに大人 に成長した彼女は、静かに、しかし強い意志を持って、あやのの前に立った。「私は、あなたの娘です」


たくさんの子供たちとの出会いの交流を通して、あやのの心にはすでに揺るぎない母の愛情が育っていた。Z子を見た瞬間、過去の凍てついた感情は消え去り、温かい包容力 が彼女の胸を満たした。


「いらっしゃい、私の娘」


あやのは、 優しい声でZ子を迎え入れ、 温かい抱擁 を交わした。 たくさんの星屑のように散らばっていた命が、 今、一つの温かい光となって、あやのの傍らに集ったのだ。


アストレア王国の王城には、女王あやのと夫、そしてアルファベットのAからZまで、 たくさんの子供たちの笑い声が、いつまでも響き渡っていた。過去の凍てついた記憶は、 温かい家族の愛によって徐々に溶かされていき、女王のあやのには、 満たされた幸福感が住み着いていた。彼女は、過去の苦難を乗り越え、 今 、たくさんの星屑のような子供たちと共に、 温かい未来を歩んでいた。

ここまでお読みいただき本当にありがとうございました。


それでは、ゆっくりお休みくださいませ。


    親愛なる貴方様へ。

      希望の王より。

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