第86話「みんなで振袖を見に行く計画」
① 結花の張り切りモード
振袖を選びに行く約束をした翌日——。
「さて、美紅の振袖選び大作戦を始めるよ!」
結花はカフェのテーブルに何枚ものパンフレットを広げながら張り切っていた。
「こんなに集めたの……?」
美紅が驚いた顔でパンフレットの山を見つめる。
「当たり前でしょ! 一生に一度の成人式なんだから、最高に可愛い振袖を選ばなきゃ!」
「まあ、確かに。」
隼人が微笑みながら隣のパンフレットを手に取る。
「どんなのがいいんだ?」
「えっと……あんまり派手すぎるのはちょっと……。」
美紅が少し悩みながら言うと、結花がすぐに反応する。
「じゃあ、上品で古典的な感じはどう?」
「古典的な……。」
「赤とか似合いそうじゃない?」
「赤……。」
美紅は、自分が赤い振袖を着ている姿を想像してみる。
(……なんだか、しっくりくるかも。)
少しずつ、振袖を選ぶことに対する気持ちが前向きになってきた。
② 朔のぼやき
「にしてもさ……。」
結花の隣でパンフレットを眺めていた朔がぼそっと呟いた。
「俺たちがついていく意味あるのか?」
「あるに決まってるでしょ!」
結花が即座に反論する。
「こういうのは、客観的な意見が大事なんだから!」
「客観的な意見って……。」
「女の子同士だけで選ぶと、どうしても好みが偏っちゃうの! 男性の視点も必要なの!」
「……へぇ。」
朔は少しめんどくさそうにしながらも、それ以上は何も言わなかった。
幸次も特に口を挟まず、静かにパンフレットをめくっていた。
③ 美紅の気持ちの変化
「……でも、なんか、嬉しいかも。」
美紅がふと呟く。
「え?」
「こうやって、みんなで振袖を選ぶことになるなんて、思ってなかったから。」
少し照れくさそうに微笑む美紅に、結花が優しく笑った。
「当然でしょ! 美紅だけが何も決めてないなんて、ありえないんだから!」
「……うん。」
(家族がいなくても、こうして一緒に考えてくれる人がいる。)
それが、美紅にとって何よりも嬉しかった。
④ 当日に向けて
「じゃあ、当日は10時に振袖レンタルのお店集合ね!」
「了解。」
「ちゃんと時間通りに来るんだよ、お兄ちゃん!」
「分かってるよ。」
「幸次さんも、来てくれますか?」
「……ああ。」
美紅が尋ねると、幸次は軽く頷いた。
その反応に、美紅はどこかホッとする。
(みんなと一緒なら、きっと大丈夫。)
少しずつ、自分の中で不安が消えていくのを感じながら、美紅はそっと手を握りしめた。




