第78話 京都紅葉旅行編 第七話
「旅の終わりと新たな日常へ」
① 旅館の朝
朝、旅館の窓から差し込む柔らかな陽射しが、畳の部屋を優しく照らしていた。
「……朝か。」
朔は目を覚まし、静かに天井を見つめる。
昨日の夜、自分の中で決めたこと。
この気持ちは、誰にも言わない。
それでいいんだ。
隣の布団を見ると、隼人と幸次はすでに起きており、支度を始めていた。
「おはよう、朔。」
隼人が穏やかに声をかける。
「……ああ、おはよう。」
「そろそろ朝飯、行くか。」
幸次が軽く伸びをしながら言い、3人はのんびりと部屋を出た。
② 朝食といつもの空気
旅館の食堂に行くと、すでに結花と美紅が座っていた。
「おはよー!」
結花が元気よく手を振る。
「おはよう、美紅ももう起きてたんだな。」
隼人が笑うと、美紅は「朝からご飯が豪華だから、楽しみで早く目が覚めちゃった」と微笑んだ。
「確かに、すごいな……。」
テーブルには、炊き立てのご飯、湯豆腐、焼き魚、京漬物、出汁巻き卵、味噌汁が並んでいる。
「うまそう……。」
朔がつぶやくと、結花が「いっぱい食べなきゃね!」と得意げに笑った。
「ほら、いただきまーす!」
「いただきます。」
5人は笑顔で箸を取り、穏やかな朝食を楽しんだ。
③ 旅の終わりの会話
「いやー、今回の旅行、楽しかったね!」
結花が満足そうに言うと、美紅も「本当に素敵な旅だった」と笑顔で頷いた。
「また来たいな。」
「うん、今度は春に来ようよ。桜の京都も綺麗だと思う!」
「いいな、それ。」
幸次が頷き、隼人も「春の京都も風情があっていいだろうね」と同意する。
「じゃあ、また5人で来よう!」
結花がそう言うと、全員が笑顔で頷いた。
「……よし、それじゃそろそろ出発するか。」
朔が席を立ち、みんなも支度を始めた。
④ 朔の静かな決意
車に乗り込み、京都を出発する。
「なんか、帰るの寂しいなぁ……。」
結花が後部座席でぼやくと、幸次が「あっという間だったな」と呟く。
「でも、また来ればいいんだよ。」
美紅の言葉に、隼人が「そうだな」と微笑む。
そんな何気ない会話を聞きながら、朔はハンドルを握り、静かに思った。
(この旅で、俺はちゃんと決めた。)
(俺の気持ちは、俺だけのものにする。)
美紅が隣で窓の外を眺めている。
彼女の中には、きっと幸次の存在がある。
それなら、俺は——
(何も変えない。)
そのままの関係でいい。
それが、一番いいんだ。
「おい、次のサービスエリアで休憩するぞ。」
「はーい!」
賑やかな車内。
いつもと同じ雰囲気のまま、5人の京都旅行は終わりを迎えた。
⑤ 東京へ、そして新たな日常へ
東京に戻った夜、朔は部屋のベッドに倒れ込んだ。
(……疲れたな。)
だけど、どこか心は軽かった。
(俺はこのままでいい。)
誰にも気づかれないまま、
この想いは静かに心の奥にしまっておく。
それで、いい。
そう自分に言い聞かせながら、朔は目を閉じた——。




