第75話 京都紅葉旅行編 第四話
「夜の清水寺」
① ライトアップされた紅葉の中へ
「うわぁ……。」
清水寺の入り口に立ち、5人は思わず息をのんだ。
紅葉が幻想的な光に包まれ、夜の闇に浮かび上がるように輝いている。
燃えるような赤と黄金色の葉が風に揺れ、静かな美しさを醸し出していた。
「やっぱり、清水寺のライトアップはすごいね。」
隼人が感心しながらカメラを構える。
「ねぇねぇ、ここでも写真撮ろう!」
結花が楽しそうに言い、美紅も「いいね!」と賛成する。
「じゃあ、また5人で撮るか。」
隼人がスマホのセルフタイマーをセットし、みんなで並ぶ。
「よし、笑ってー!」
カシャッ。
静かに輝く紅葉と、5人の笑顔が映る写真が、一枚増えた。
② 願い事をしよう
「せっかくだから、願い事しなきゃ!」
結花が手を合わせて目を閉じる。
「みんなが幸せでありますように……っと!」
「相変わらず雑だな。」
朔がツッコミを入れると、結花は「いいの!」と笑う。
「美紅は何を願った?」
「え? んー……。」
美紅は少し考えてから、穏やかに微笑んだ。
「みんなが、ずっと楽しくいられますように。」
「……そっか。」
美紅の言葉を聞いて、朔はそっと手をポケットに突っ込む。
(俺の気持ちは、伝えなくていい。)
彼女がこうやって笑っていられるなら、それでいい。
それに、誰かが気づく必要もない。
そう、俺だけが知っていれば、それでいい。
③ 朔の静かな決意
ライトアップされた紅葉を見上げながら、朔はそっとため息をついた。
(美紅の願いって、ほんと彼女らしいよな。)
“みんながずっと楽しくいられますように”——その言葉には、彼女の優しさが詰まっていた。
(……だからこそ、俺の気持ちは邪魔なんだよな。)
今の関係が心地いい。
美紅は、いつもみんなの中心にいて、変わらず笑っている。
もし俺が気持ちを伝えたら——。
(それが、壊れるかもしれない。)
だから、このままでいい。
ずっと隠して、誰にも知られずにいれば、それでいい。
「おい、そろそろ行くぞ。」
幸次が声をかけ、5人は清水の舞台へと向かう。
“清水の舞台から飛び降りる”——そんなことわざがあるけど、俺は飛び降りたりしない。
(俺は、俺の場所にいるだけでいい。)
夜風が、静かに紅葉を揺らした。
④ 旅はまだ続く
「次はホテルか!」
結花が元気に言い、美紅も「温泉が楽しみだね!」と笑う。
「……そうだな。」
朔はいつもの調子でそう返しながら、そっと一人だけ違うことを考えていた。
(もう決めたんだ。)
誰にも言わず、ただ、静かにこの想いをしまい込むことを。




