第73話 京都紅葉旅行編 第二話
「嵐山の紅葉狩り」
① 渡月橋と紅葉の絶景
「着いたー!」
結花の元気な声が響く。
5人は無事に京都に到着し、最初の目的地である嵐山へやって来た。
渡月橋の周りには、鮮やかな紅葉が広がっている。
赤、黄色、橙のグラデーションが川面に映え、秋の京都らしい風情を感じさせた。
「うわぁ……すごい。」
美紅が思わず息をのむ。
「写真、撮ろう!」
結花がはしゃぎ、美紅も「撮ろう撮ろう!」と笑顔で応じる。
隼人はスマホを構えながら「せっかくだから5人で撮ろうか」と提案する。
「いいね! じゃあ朔、お兄ちゃんが真ん中ね!」
「なんで俺が真ん中?」
「だって、身長的にバランスいいし!」
「……まぁいいけど。」
こうして5人は並んで記念写真を撮る。
カメラに収まる景色も素晴らしいが、結花や美紅の無邪気な笑顔もまた、秋の風景に負けないくらい輝いていた。
② 竹林の小径を歩く
次に向かったのは、竹林の小径。
背の高い竹が風に揺れ、さらさらと心地よい音を奏でている。
「京都って、やっぱりいいな。」
幸次がしみじみと言うと、隼人も頷く。
「静かで落ち着くね。」
「うん……なんか、時間がゆっくり流れてる感じがする。」
美紅がそう呟くと、朔は彼女の横顔をちらりと見た。
(……こうやって、自然の中にいる時の美紅って、すごく穏やかだよな。)
「ねえ、ちょっと寄り道しない?」
結花が突然、横道へ進む。
「おい、勝手に行くな!」
「いいじゃん! ちょっと見たいものあるの!」
仕方なく、5人で結花の後を追う。
「……何を見に来たんだ?」
「ここ!」
そこには、小さな茶屋があった。
「この辺、わらび餅が有名らしいよ!」
「おっ、それはいいな。」
隼人がすぐに賛成し、5人は茶屋へ入った。
③ わらび餅と静かな時間
茶屋の中は、落ち着いた和の雰囲気が広がっていた。
店の奥では、おばあさんが丁寧に手作りのわらび餅を切り分けている。
「わらび餅と抹茶のセット、5つお願いします!」
結花が元気よく注文し、5人は畳の席に座る。
やがて運ばれてきたわらび餅は、ぷるぷると透き通るような輝きを放っていた。
「うまそう……。」
朔は竹の楊枝でひとつ掬い、口に運ぶ。
「……これ、めちゃくちゃ美味いな。」
「うん! 柔らかくて、きな粉と黒蜜のバランスが最高!」
結花が感動しながら頬張る。
「隼人さん、すごく幸せそうですね。」
美紅がクスッと笑うと、隼人は「甘いものは別腹だから」と穏やかに微笑んだ。
「……美紅、黒蜜かけすぎじゃね?」
朔がふと気づくと、美紅のわらび餅の上には、たっぷりの黒蜜がかかっていた。
「え? これくらい普通じゃない?」
「いや、完全に甘党の食い方だろ。」
「そう?」
美紅はきょとんとした表情を浮かべたが、朔は思わず小さく笑ってしまう。
(なんか、こういう何気ないやり取りも……悪くないよな。)
④ 朔が気づいたこと
わらび餅を食べ終え、5人は再び竹林を歩き始める。
「次は錦市場で食べ歩きだね!」
結花が元気よく言い、美紅も「楽しみ!」と笑う。
そんな彼女たちの姿を見ながら、朔はふと考える。
(俺……美紅のこと、やっぱり好きなんだろうな。)
今さらすぎる気づきだけど、それを認めた瞬間、妙に落ち着いた。
(でも、誰にも気づかれなくていい。気づかれたくない。)
周りの3人も、いつも通りだ。
誰も、朔の気持ちには気づいていない。
それが、むしろ朔にとっては救いだった。
「おい、早く行くぞ。」
「はーい!」
そう言って、朔は前を歩く美紅と結花の背中を見つめながら、そっと小さく息をついた。




