第68話 過去と今
(“思い出と現在”——再会がもたらす変化)
① 理央との再会を思い返す
イベントが無事に終わり、結花は教会の片付けを手伝っていた。
しかし——
(……理央。)
彼の顔が、ふと頭をよぎる。
「結花、どうしたの?」
美紅が、不思議そうに結花を見つめていた。
「え?」
「なんか、ぼーっとしてたよ。」
「……ううん、大丈夫!」
結花は慌てて笑ってごまかした。
でも、本当は心の中がざわついていた。
(もう関わることはないって思ってたのに。)
(まさか、こんな形で再会するなんて……。)
② それぞれの時間の流れ
その夜、結花は自宅のベッドで目を閉じた。
(理央は、今も俳優として頑張ってる。)
テレビをつければ、彼の姿が映る。
スクリーンの中で、堂々と演技をしている理央。
(本当に、夢を叶えたんだね。)
結花は、そっとスマホを開いた。
理央の名前を検索すると、“次回作の主演映画決定” という記事が目に入った。
(すごい……。)
誇らしい気持ちがある。
でも——
(……わたしは、もう理央の隣にはいないんだ。)
その事実に、少しだけ胸が痛んだ。
(でも、後悔はしてない。)
結花は理央と別れたことを、“正しい選択だった” と思っている。
だからこそ、今の自分がある。
それなのに——
(……なんで、こんなに胸がざわつくんだろう。)
再会したことで、忘れかけていた”何か”が呼び覚まされたような気がした。
③ 結花の気持ちの変化
翌日。
結花は、いつも通り学校に向かった。
授業の後、音楽室で練習していると、奏介が顔を出した。
「お、今日も頑張ってるな。」
「奏介さん!」
「昨日のイベント、お疲れさん。」
「ありがとうございます! すごく楽しかったです。」
奏介はニコッと笑いながら、椅子に腰掛ける。
「で? なんか考え事してるっぽいけど。」
「……え?」
「なんとなく、そんな感じしたからさ。」
結花は少し驚いた。
(奏介さん、ほんとによく人を見てるな……。)
「……実は、昨日、“ある人” と再会したんです。」
「“ある人”?」
「……元カレ。」
その言葉に、奏介は少し目を丸くした。
「へぇ、それはまた……すごい偶然だな。」
「はい。ほんとに、びっくりしました。」
「そっか……で、それで、結花ちゃんはどう思ったんだ?」
「……それが、自分でもよく分からなくて。」
結花は、ゆっくりと続けた。
「理央とは、お互いの道を進むために別れたんです。だから、今さら後悔はしてないんですけど……。」
「でも?」
「なんか、“再会したことで、また気持ちが揺らぎそう” っていうか……。」
「……なるほどな。」
奏介は腕を組み、少し考え込んだ。
「結花ちゃんさ、自分に嘘つくの、あんまり得意じゃないでしょ?」
「え?」
「無理に ‘もう気にしない’ って思おうとするより、一回ちゃんと向き合ってみたら?」
結花は、ドキッとした。
(……向き合う。)
(わたしは、理央に対してどう思ってるんだろう。)
その答えを出すために、もう少し時間が必要な気がした。
④ “今の理央” と “今の自分”
その夜。
結花は、再びスマホを手に取り、理央の名前を検索した。
画面に映るのは、“俳優・樫村理央” の姿。
昔は、恋人として隣にいた人。
でも今は——
(遠い存在に見える。)
だけど、昨日の理央は、どこか懐かしくて、昔と変わらない雰囲気を持っていた。
(わたしは、理央とどうなりたいんだろう。)
もう一度関わるべきなのか、それとも、“再会はただの偶然” として流すべきなのか。
結花は、答えを出せずにいた——。




