第66話 音楽でつながる世界
(“支える歌” をより多くの人へ——結花の挑戦と、再び現代へ)
① 結花の活動が広がる
伊吹奏介との出会いをきっかけに、結花の音楽活動の幅はさらに広がっていった。
奏介が企画する地域イベントに参加したり、福祉施設での演奏会に呼ばれたり——。
結花はさまざまな場所で歌う機会を得るようになった。
(最初は、こんなに広がるなんて思ってなかったな。)
結花が届ける歌は、プロとしてのステージではなく、“日常の中で誰かの心に寄り添う歌” だった。
幼稚園の子どもたちが一緒に手を叩いて歌う。
福祉施設のお年寄りが懐かしそうに微笑む。
地域のイベントでは、家族連れがゆったりと耳を傾ける。
(歌って……すごいな。)
(こんなにも人と人をつなげることができるんだ。)
結花の中で、“音楽” に対する考え方が、より深まっていった。
② 結花の葛藤と、隼人の言葉
活動の幅が広がる一方で、結花はふと考えることがあった。
(このまま、この道を続けていって……いいのかな。)
(私は、プロの歌手じゃない。ただの学生だし、特別な資格があるわけでもない。)
(“好きだから” っていう理由だけで、こんな風に歌い続けてもいいのかな……。)
そんな迷いが生まれ始めたころ、結花は教会で隼人と話す機会を得た。
「……隼人さん。」
「うん?」
「私、このままでいいのかな……って、最近思うんです。」
隼人は静かに微笑んだ。
「どうして?」
「私、ただの大学生だし……何か特別な才能があるわけじゃないし……。」
「でも、結花ちゃんは歌い続けてるよね?」
「……はい。」
「それは、“誰かのためになってる” って、ちゃんと実感があるからじゃない?」
結花は、はっとした。
(……そうか。)
(私は、“歌うことで誰かが笑顔になったり、元気になったりする” って、ちゃんと実感してる。)
「だから、大丈夫。結花ちゃんはもう、“自分にしかできないこと” をちゃんとやってるよ。」
隼人の言葉が、結花の心をそっと包み込む。
③ そして、現代へ——
結花の音楽活動は、その後も続いていった。
幼稚園、福祉施設、地域イベント——彼女が歌う場所は少しずつ増えていった。
そして、現在——。
結花は、隼人のいる桜山教会で行われるイベントの準備を手伝っていた。
(今までいろんな場所で歌ってきたけど……やっぱり、ここは落ち着くな。)
教会の大きなホールには、懐かしい顔ぶれが揃っていた。
「結花ー!」
「お、お兄ちゃん!」
朔が、軽く手を振りながらこちらに歩いてくる。
「珍しいな。お前が真面目に準備なんかしてるなんて。」
「うるさいな!」
その後ろには、美紅や幸次の姿もあった。
「結花ちゃん、今日のイベント楽しみだね。」
「……うん!」
結花は、大きく頷いた。
(私は、“私の歌” を届ける。)
(これからもずっと——。)




