第54話 理央の告白と、結花の決意
(“隼人を諦めるため” の選択——理央との恋が始まる)
① 理央の告白
高校1年の冬。
放課後の帰り道、結花は理央と二人で並んで歩いていた。
いつも通りの何気ない帰り道だったが、その日はどこか違った。
「……なあ、結花。」
不意に、理央が足を止めた。
「ん?」
「俺と、付き合わねえか?」
(……え?)
結花は、一瞬言葉を失った。
「えっと……どういうこと?」
「そのまんまの意味だよ。」
理央は少しだけ照れくさそうに目をそらしながら、低い声で続けた。
「お前といると、なんか……楽なんだ。」
「……楽?」
「俺、今まで誰かと一緒にいるのがめんどくせぇって思ってた。でも、お前といると、そう思わねえんだよ。」
真剣な目を向けられ、結花は胸の奥がざわつくのを感じた。
(理央が……わたしのことを……?)
② 隼人への想いと、理央との間で揺れる心
家に帰った後も、心は落ち着かなかった。
(理央と付き合う……?)
今までそんなこと考えたことがなかった。
でも、頭に浮かぶのは、隼人の顔——。
(……わたし、本当は隼人さんのことが好きなんじゃないの?)
だけど、隼人はもう大学生で、大人っぽくなっていて——
“もう手の届かない存在” に思えてしまう。
(きっと、隼人さんはわたしのこと、そんな風に見てない。)
そして、理央の言葉が思い出される。
「お前といると、楽なんだよ。」
(わたしも、理央と一緒にいるのは楽しい……。)
それは、今まで隼人には感じなかった感覚だった。
(もしかしたら、理央と付き合えば、隼人さんのことを諦められるかもしれない——。)
③ 結花の決意
翌日、結花は理央を呼び出した。
校舎裏の静かな場所で、二人は向かい合う。
「昨日のことだけど……。」
結花は、一度深く息を吸い込んでから、ゆっくりと言葉を紡いだ。
「……わたしも、理央と一緒にいるの、楽しいよ。」
「……じゃあ。」
「だから……付き合ってみようかなって思う。」
理央の目が、一瞬だけ大きく見開かれた。
「……マジで?」
「うん。でも、そんなにちゃんと ‘好き’ ってわけじゃないかもしれないから……。」
「……。」
「でも、これから好きになれるかもしれないって思うから。」
結花がそう言うと、理央は少し困ったような顔をしながら、それでも嬉しそうに笑った。
「……まあ、お前らしいっちゃ、お前らしいな。」
「えへへ、ごめんね。」
「……まあ、いいよ。これから、ちゃんと好きにさせる。」
そう言って、理央は照れくさそうに視線をそらした。
その横顔を見て、結花は少しだけ胸が温かくなるのを感じた。
(……これで、隼人さんのことを忘れられるかな。)
④ 付き合い始めた二人
こうして、結花と理央の”恋人としての時間”が始まった。
最初は特に何も変わらなかった。
学校ではいつも通り、理央は無愛想で、結花はそれを茶化しながら笑う。
だけど、時々ふとした瞬間に、理央が結花の手を引いたり、
「寒いなら手、貸せよ」と言ったりするのが、なんだか少しだけ特別に感じた。
(理央って、意外と優しいんだよな……。)
結花は少しずつ、“恋人としての理央”を知っていくことになる——。




