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第53話 理央の変化と、隼人への想い

(“気になる存在”——隼人と理央の間で揺れる心)


① 理央の変化


高校に入学して数ヶ月が経ったころ、結花は理央の様子が少しずつ変わっていることに気づいた。


(最初は無気力で、あんまり話さなかったのに……。)


最近の理央は、結花が話しかけると、以前よりも素直に答えるようになっていた。


「ねえ理央、音楽の授業、楽しくなってきた?」


「……まあ。」


「おおっ、“まあ”ってことはちょっと楽しいってこと?」


「……そういうわけじゃねえけど。」


結花がニヤリと笑うと、理央は小さくため息をついた。


「お前、相変わらずしつこいよな。」


「えへへ、そう?」


ぶっきらぼうではあるけれど、最近の理央はどこか柔らかくなった気がする。


(もしかして、少しは学校に馴染めてきたのかな……?)


そう思うと、結花はなんだか嬉しくなった。


② 久しぶりに会う隼人


ある週末、結花は久しぶりに教会を訪れた。

隼人は大学に進学し、以前のように頻繁には会えなくなっていた。


「隼人さん、久しぶり!」


結花が明るく声をかけると、隼人は少し驚いたように目を見開き、ふっと微笑んだ。


「結花ちゃん、高校生活はどう?」


「すっごく楽しいよ! 歌の授業も、本格的になってきたし!」


「そっか、よかった。」


穏やかに微笑む隼人の姿を見たとき、結花はふと気づいた。


(あれ……なんか……前より “遠く” なった気がする。)


昔はもっと近くに感じていたのに、今はどこか”大人”になっていて、手の届かない存在に思えた。


「隼人さん、大学どう?」


「うん、忙しいけど、楽しいよ。」


「そっか……。」


少しだけ寂しくなった。

でも、その寂しさは”友達としての寂しさ”なのか、それとも——。


(もしかして、これって……恋?)


初めて、その気持ちを**“恋”だと認めた瞬間だった。**


③ 理央の素顔を知る


その数日後、放課後の音楽室で結花は偶然、理央が一人でピアノを弾いているのを見つけた。


(え、理央がピアノ……?)


音楽室の隅で、理央は真剣な表情で鍵盤を押さえていた。

指の動きはたどたどしいけれど、どこか感情のこもった音だった。


「理央……弾けるの?」


不意に声をかけると、理央は少し驚いたように振り返った。


「……いや、全然。でも、たまにこうやって触る。」


「へえ……なんか意外。」


「なんだよ、それ。」


結花はふっと笑った。


「理央って、いつも無気力っぽいのに、こういうときはすごく真剣だね。」


「……うるせえよ。」


照れくさそうに視線をそらす理央を見て、結花は少し心が温まるのを感じた。


(理央って、本当は音楽が好きなのかも……。)


この日から、結花の中で理央への”興味”が少しずつ膨らんでいった。


④ 隼人と理央——二人の違いに気づく


その後も、結花は隼人と理央、二人の間で揺れる気持ちを抱えるようになった。


隼人は、穏やかで優しくて、何も言わなくても安心できる存在。

理央は、不器用だけど、一緒にいると新しい一面を見つけたくなる存在。


(わたし、どっちのことが気になってるんだろう……。)


最近、理央といる時間が増えたせいか、学校では理央のことを意識することが多くなっていた。

でも、教会へ行けば、隼人の優しい声を聞くだけでホッとする。


(この気持ちは、どっちが本当なんだろう?)


そんな疑問を抱えながら、結花は次第に自分の気持ちの答えを見つけようとするようになっていく。



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