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第47話 隼人、理央の存在に揺れる

(「俺は、結花のことをどう思っているんだ?」——静かに広がる違和感)


① 教会の静寂と、隼人の迷い


理央が去った後の教会は、静かだった。

隼人は受付の椅子に腰を下ろし、そっと息を吐く。


(結花は、俺にとって……ただの友人のはずだ。)


しかし、先ほどの会話が頭の中を巡り、心の奥に妙なざわつきが残っていた。


——「俺は結花を手放したくなかった。でも、彼女は俺を置いていったんだ。」


(……手放したくなかった?)


その言葉が、ずっと引っかかっている。

理央は、まるで結花と深い関係だったことを匂わせるような言い方をした。


(結花と、彼は……どういう関係だったんだ?)


知りたいような、知りたくないような——そんな感情が入り混じる。


静かに目を閉じる。

いつもなら心が落ち着くこの教会の空間が、今日に限っては落ち着かなかった。


② 朔の鋭い指摘


「……何かあった?」


不意にかけられた声に、隼人はゆっくりと目を開けた。


そこには、コーヒーを片手にした陽川朔が立っていた。


「……別に何も。」


「ふーん?」


朔は隼人の隣に腰を下ろし、軽くカップを傾ける。


「嘘だな。」


「……。」


「さっきの俳優——樫村理央、だっけ? なんで急に教会に来たんだ?」


「……結花に会いに来たらしい。」


隼人が静かに答えると、朔の目がわずかに細まった。


「そっか。」


コーヒーを一口飲みながら、朔はさりげなく隼人の表情を窺う。


「で、お前はどう思った?」


「……どうって。」


「いや、普通に気になるだろ? 知らない男が ‘結花に会いたい’ って来たらさ。」


「……まあ、少し驚いた。」


隼人は正直に答える。


「けど、結花が話したがらないなら、それが答えなんだろう。」


そう言いながらも、胸の奥にわずかな違和感が残っていることに気づいていた。


③ 隼人の揺れる気持ち


「ふーん……。」


朔は軽く頷き、カップを置く。


「で、お前は結花のこと、どう思ってんの?」


「……?」


隼人はゆっくりと朔の方を見た。


「ただの友人だよ。」


「へぇ?」


朔は口角を少しだけ上げる。


「でもさ、 ‘ただの友人’ なら、さっきの俳優が来たとき、そんなに気にならなくね?」


「……。」


「ちょっと考えてみたら?」


朔はそう言って、椅子の背もたれに体を預けた。


「もし、アイツ(理央)が ‘やり直したい’ って言ってきたら……お前、どうする?」


「——っ。」


隼人の胸が、わずかに締めつけられる。


(……どうする?)


それを考えたことがなかった。

結花が誰かと付き合うかもしれない未来を、これまで意識したことがなかった。


「……俺は、ただの友人だ。」


言葉にしてみる。

けれど、自分で言いながら、その言葉がどこかしっくりこない。


「そっか。」


朔はそれ以上は何も言わず、ただ微笑んだ。


「まあ、お前が ‘ただの友人’ でいるうちに、アイツに持っていかれないといいけどな。」


軽い口調でそう言い残し、朔は席を立った。


隼人は、一人取り残されたまま、初めて芽生えた“焦り”を静かに噛み締めていた。



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