第45話 結花、理央の活躍を目にする
(かつての恋人が眩しく映るとき——過去と現在の交差)
① いつも通りの時間のはずだった
秋の午後。
教会のホールに、5人の笑い声が響いていた。
この日は、久しぶりにみんなの予定が合い、ゆったりとした時間を過ごしていた。
「これ、美紅が持ってきた新作の紅茶?」
結花がカップを手に取り、香りを確かめる。
「うん、最近気に入ってるの。香ばしくて美味しいよ。」
美紅が微笑みながら答えると、結花は嬉しそうに頷いた。
「お、いいね。俺ももらおう。」
朔もカップを手に取ると、隼人と幸次も静かにそれに倣った。
のんびりとした、穏やかな時間——。
そんな中、教会の奥にあるテレビがつけっぱなしになっていた。
ちょうどバラエティ番組が流れており、賑やかな雰囲気が広がっている。
「さあ、今をときめく若手俳優・樫村理央さんにお越しいただいています!」
——その瞬間。
結花の手が、ピクリと止まった。
画面の中央に映し出されたのは、結花のかつての恋人・樫村理央だった。
② 結花の動揺
「へえ、こいつ最近よく見るな。」
朔がテレビを見ながら何気なく言う。
「……確かに。」
隼人も静かに画面を見つめる。
理央は、共演者たちと楽しそうに話しながら、堂々とした態度で番組を盛り上げていた。
かつて高校時代、一匹狼だった彼の姿は、もうどこにもなかった。
「結花、同じ高校だったよね?」
美紅がふと尋ねる。
「え?」
一瞬、心臓が跳ねた。
(やばい……。)
結花は冷静を装いながら、何でもないふりをする。
「う、うん……同級生だった。」
「え! そうなの!? すごい!」
結花の言葉に、美紅と朔が驚いたように反応する。
「なんだ、初耳だな。」
隼人も少し意外そうに結花を見た。
「まあね。そんなに親しいわけじゃなかったけど。」
(本当は、付き合ってた。でも、それは言わない方がいい——。)
結花は、努めて軽く流すように言った。
しかし、幸次だけが、静かに彼女の表情を見ていた。
③ スマホに届いた非通知の着信
「けど、すごいよな。こんなに有名になるなんて。」
朔が感心したように言うと、美紅もうなずいた。
「確かに……結花もびっくりしたんじゃない?」
「まあ……そうだね。」
結花は曖昧に微笑みながら、そっと画面から目をそらした。
そのとき——。
スマホが震えた。
結花は何気なく画面を見る。
(……え?)
画面には、**「非通知」**の文字。
嫌な予感がした。
「……ちょっと、ごめん。」
結花は静かに席を立ち、教会の外へと向かった。
震える指で、通話ボタンを押す。
「……もしもし。」
『……久しぶり、結花。』
聞き覚えのある低い声が耳に届いた。
結花の心臓が、ぎゅっと縮こまる。
それは、紛れもなく——樫村理央の声だった。




